シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

横浜共立学園中学校

2024年10月掲載

横浜共立学園中学校【理科】

2024年 横浜共立学園中学校入試問題より

生物と環境のひとまとまりを生態系という。近年、生態系がくずれてきている。

(問)大気中の二酸化炭素のう度を減らす手段の一つが植林である。植林するすべての幼木が下表の通りだったとすると、ある家庭で1年間にはい出される二酸化炭素5000kgを1年間で吸収するには、何本の幼木を植林すればよいか。下表の数値の中から必要なものを使って計算し、値が最も近いものを下の(ア)〜(エ)から選びなさい。ただし、葉以外の部分では二酸化炭素を吸収していないものとする。

植林する幼木1本の重さ 100kg
植林する幼木1本の葉が1年間に吸収する二酸化炭素の重さ 550kg
植林する幼木1本の葉が1年間に放出する二酸化炭素の重さ 170kg
植林する幼木1本の葉以外の部分が1年間に放出する二酸化炭素の重さ 370kg

(ア)10本 (イ)50本 (ウ)500本 (エ)5000本

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この横浜共立学園中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(ウ)

解説

植物は、主に葉の部分で光合成を行っており、光合成を行うときには二酸化炭素を大気中から吸収します。また、植物は、全身で呼吸を行っており、呼吸を行うときには二酸化炭素を放出します。植物がおかれている環境やさまざまな条件によって、二酸化炭素を吸収する量と放出する量は常に変動していますが、この問題では、1年間あたりの吸収量と放出量が表に示されているので、表の値をもとに筋道を立てて計算します。

  • 幼木1本が1年間に放出する二酸化炭素の重さは、葉の部分から放出する170kgと、葉以外の部分から放出する370kgを合計した、170+370=540(kg)です。
  • 幼木1本が1年間に吸収する二酸化炭素の重さは、550kgです。

これらのことから、幼木1本あたりで1年間に、550-540=10(kg)の二酸化炭素を大気中から減らせることがわかります。したがって、1年間に5000kgの二酸化炭素を大気中から減らすためには、5000÷10=500(本)の幼木を植林する必要があるのです。

日能研がこの問題を選んだ理由

近年、世界各地で深刻な自然災害が起きることが増えています。また、北極や南極の氷がとけたり海水が膨張したりすることで海面が上昇して土地が水没する、砂漠化が進むなど、さまざまな被害が報告されています。これらの被害は、いずれも大気中の温室効果ガスが増えることによって引き起こされる、地球の温暖化の影響だということも、広く知られるようになりました。人間の活動による二酸化炭素の排出量の増加が、深刻な被害をもたらしていることは、子どもたちも度々耳にしている話題です。

しかし、地球規模の大きなスケールで語られることも多いだけに、どこか少し遠い話のように感じられたり、実際のところ、その深刻さの度合いがピンとこなかったり……ということもあるでしょう。

この問題では、「ある家庭で1年間に排出される二酸化炭素」を吸収するには、何本の幼木を植林する必要があるのかを実際に計算します。問題に取り組むことで、子どもたちは具体的な量をイメージすることができ、実感を伴った「自分事」として課題を見ることにつながるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。