シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

光塩女子学院中等科

2024年10月掲載

光塩女子学院中等科の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.光塩女子学院は比較的文章を書く機会が多い学校

インタビュー3/3

御校では特に国語に力を入れている印象があります。先生方が考える光塩女子学院の国語の授業の特徴について教えてください。

大津先生 本校では文章を書く機会がとても多いと思います。事あるごとに文章を書かせます。夏休みの読書感想文もありますし、高校2年生では文系の生徒が夏目漱石コンクールに向けて文章を書くなどしています。

また国語科という科の中だけではなく、冬休みに行われる弁論大会の原稿を書くといった学年での宿題もあります。これは国語科の教員だけが読むのではなく、担任が分担して読んで弁論大会に出場する候補となる生徒を選んでいきます。このように書くことが多いのが本校の特徴のひとつであると思っています。

髙橋先生 感想文にしても弁論大会にしても、よいものを教員が選び、他の生徒に見える形で共有していきます。夏休みの感想文は各学年で一番良かったものを冊子にして全校生徒に配りますし、弁論大会では学年ごとに2人ずつ選出された代表者が全校生徒の前で発表します。書くことも大事にしていますが、それを通じて自分の考えを深め、さらに良い文章に触れる機会を多く持っているのも本校の特徴であるように思います。

また、授業の中で書かせることもあります。教員によって頻度は異なりますが、たとえば単元のまとめの段階で書いてみるといったこともあります。

光塩女子学院中等科 教室

光塩女子学院中等科 教室

書くことによって思考を深めていく訓練となる

国語科だけでなくて書く機会が多いというのは学校の方針なのでしょうか?

髙橋先生 これについては以前からある伝統が今も引き継がれているのだと思います。書かないといけない、という現状を目の前にして思考を深めていくという習慣はずっと続いていますし、自分が生徒だった時も「書きなさい」と言われたら考えないといけませんでした。

また、書くことによってハードルがだんだん下がっていき、さらに書くようになるといった循環もあるのではないかと思います。自分の中の書きたいテーマを書く機会やそれを発表できる場があるのはすごく楽しいことなのではないでしょうか。

大津先生 自分の書きたいテーマを持っている生徒は、毎年必ず何人かいます。たとえば、弁論大会に優勝したくてずっとこのテーマを温めてきたといった生徒もいますね。

生徒の思考が伸びているのを感じるのはたとえばどんな時ですか?

大津先生 たとえば、ある生徒が6年間同じテーマで身近な環境について書き続けていたのですが、高3になると書く内容が環境問題といったテーマに話が広がっていきました。最初は植物が好きだったので身近な庭の出来事から始まり、毎年植物についてずっと書き続けた6年間の生徒を見ているとすごく成長したのを感じましたね。もちろん最初から書く力はあったと思うのですが、どんどん視野が広がっていったのかな、と思いながらと書かれた文章を読んだ記憶があります。

髙橋先生 夏休みの読書感想文は、毎年同じ条件で書くのですが、その中で年々思考が深まっているなとか、使う語彙が増えてきたなとか、構成力が上がったなと感じることは往々にしてあります。

たまたま私が去年と今年は持ち上がりで同じ生徒たちを教えていたこともあって、1年間での成長がはっきり見えましたね。自分が納得できるものに仕上げて出したいという生徒も多いので、その子のベストの状態を見られるのが夏休みの読書感想文と感じることもあります。

光塩女子学院中等科 図書室

光塩女子学院中等科 図書室

1月には弁論大会を実施

弁論大会はいつ行われるのですか?

大津先生 毎年1月ですね。各学年で2名選ばれて話すのですが、担任が良いと思った生徒の作文を5つぐらいに絞り、総合の時間に弁論大会の予選を行います。その学年の生徒全員の前で選ばれた生徒が発表し、生徒間の投票で選ばれた各学年2人、計10人が大会本選に出場する流れとなっています。

その10人の中で順位を決めていきますが、必ずしも上級生が1位になるわけではなく、下級生が1位を取ったこともあります。文章の内容はもとより、共感を得る話し方はとても大事です。

髙橋先生 生徒も発表すること自体が嫌ではないみたいですね。プレッシャーには感じているものの、名誉なことだという捉え方をしているのかなと感じます。

多読によっていろんなタイプの文章に触れる機会を与える

ほかに行っている取り組みは何かありますか?

大津先生 多読ですね。中3からテキストを使用して、授業では扱わない文章(主に評論)を読んでいきます。主に大学入試に向けた自学用のテキストを読み、読んだものをテストに出しています。今使っているテキストの文章は比較的短めの問題付きの30編ぐらい入ったもので、それと別に小説文も読んでいます。小説のテキストは問題が少なくて文章が大半の教材ですが、高1で使用しています。

髙橋先生 授業だと精読になりがちなので、一つの文章を深く読むことはできるものの、たくさん読む、いろんなタイプの文章に触れるといった経験はなかなか難しくなってしまいます。ですから半強制的にはなりますが、多読によって足りない部分を補うようにしている感じですね。

今は読書離れが進み、生徒も本を読む機会は減っていると思うのですが、本を読ませるのに苦労することはないですか?

大津先生 やはり苦労はしています。そこで中1、中2では読書ノートを書いてもらっています。他にも教科書に関連書籍が紹介されているので、誰か読んでくれる子がいたらいいなという気持ちで本の紹介はしています。

あと、今年度はジャパンナレッジスクールを生徒全員がデバイスで使用できるようになっていて、ジャパンナレッジスクールでは新書を100冊以上読むことができます。現在の中1にはジャパンナレッジを使って新書を読んでもらい、内容と感想を書いてもらって、2学期の最初の授業で共有しています。

髙橋先生 文系の生徒が高2年で取る授業に「文学国語」というものがあり、その中で主に夏目漱石の「硝子戸の中」と樋口一葉の「たけくらべ」をしっかり1年間かけて深く読んでいきます。名作なので、文章の持つ力に生徒が感化されて、今まであまり文学的な文章を読んだことがなくても、「文学って面白いんだ」「楽しみがあるんだ」と気づいていく子を見ることも結構ありますね。

光塩女子学院中等科 図書室

光塩女子学院中等科 図書室

何かきっかけがあれば本を読む機会はぐっと増える

先生が考える、本を読まない子に本を読ませる方法としてはどんなものがあると思いますか?

大津先生 何かきっかけがあると急に本を読み始めるかもしれません。私が本を読むようになったきっかけは歴史が好きだったことが大きいです。中学の時に歴史のゲームにはまり、そこに出てくる戦国武将の本を読んだのがほぼ最初でした。武将の本を何冊か読んで、小説を読む楽しみが分かってきたんですね。授業自体は真面目に受けていましたので、教材としての小説や説明文などは読んでいたのですが、教科書では文章は読んでいたものの、それまで本自体ほとんど読んでいませんでした。高校の時に漢文で習った孟嘗君などをテーマとした本を読むようになり、きっかけは覚えていませんが純文学を読むようになりました。

やはり自分の興味がある本からだったらスタートしやすいかもしれないです。国語に限らず社会や理科の授業でも本の紹介はあると思うので、紹介された本が心に残っているとふと手に取ることがあるのではないでしょうか。授業もひとつのきっかけになることがあるかもしれません。

髙橋先生 本が物理的に身近にあることはとても大事なのかなと思います。すぐに手に取れるところにあることや、友達が読んでいることも大きなきっかけになるかと思います。先生や親が薦めるよりも、同じ立場の人が読んでいるのがポイントですね。

最後に、光塩女子学院中等科を目指す受験生へメッセージをお願いします。

大津先生 豊かな心で小学校生活を送ってきてほしいというのが一番です。心に響くような文章を受験では出題したいと思っていますし、中学校に入ってからも授業の内外含めて読む機会を設けたいと思っていますので、そこで豊かな心をはぐくんでもらえるといいなと思います。

髙橋先生 繰り返しになってしまいますが、心豊かに成長してほしいなと思います。勉強ができるか否かということに関してはあとから追いつけますが、心の成長に関してはその年齢の時にしかできないことがあると思います。別に勉強につながらないとしても、いろいろなことに出会い、豊かな体験を小学校時代にしてきてほしいと思いますし、入学してからもそんな風に過ごしてもらえたら嬉しいです。

光塩女子学院中等科 掲示物

光塩女子学院中等科 掲示物

インタビュー3/3

光塩女子学院中等科
光塩女子学院中等科1931(昭和6)年、スペインを発祥とするカトリック・メルセス宣教修道女会によって、かけがえのない自分に目覚めた女性を育てることを目的として、光塩高等女学校が設立される。47年に現在の校名に改称、高等科・中等科・初等科を設置。55年、幼稚園を設立した。2001年(平成13)に高校募集停止。
人間はすべて「世の光、地の塩」であるという真理が校名に刻まれているように、かけがえのない「自分」の存在に目覚め、惜しみなく己を他人のために開くことのできる人間に成長することを願う。年に数回個人面談があり、フランクに日頃思っていることを話し合う機会を設けており、教師と生徒、生徒同士、教職員同士の相互の「信頼感」に支えられた温かく密なコミュニケーションの雰囲気がある。生徒の真に主体的で、調和のとれた人格の発達を目指している。
白とレンガ模様を基調とした校舎は、施設拡充を積極的にはかったもの。地下には聖堂、体育館がある。校内は清楚で落ち着いた雰囲気。
1学年5~6名の教師が担当する共同担任制を採用している。一人ひとりの学力を伸ばすことを大切に考え、中学の英・数や、高校の英・数・理などでは習熟度別授業を実施。高2からは授業の5割を選択科目とし、生徒がそれぞれ自分の進路にあわせた時間割を組めるようにしている。小テストがこまめに行われ、漢字とスペリングは月2回、中1・中2の計算小テストは月2~3回ある。英語の教科書は『NEW TREASURE』を使用。4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく学び、国際的にも十分通用する英語力の習得を目指す。自分で考え、分析する力の養成も重視し、国語や社会では「書く」機会を多く作り、中等科の国語、高2の教養演習ではクリティカル・シンキングも取り入れている。難関大学への実績も好調で、理数系進学者は4割。
高3まで、週1時間、倫理の時間を設けている。クリスマスやミサなど、宗教的な行事のほかに文化祭、林間学校、中・高が合同で行う体育祭、弁論大会などの学校行事があり、すべて学年単位で取り組み、学年ごとの結束が強い。創立当初から奉仕の精神を大切にし、ボランティア活動も盛んで、11月の親睦会はバザーとしての意味あいも強い。クラブ活動は体育系7、文化系11あり、中高合同で活動し、学業と両立できるように、通常の1週間の活動日は2日以内だが、約9割の生徒が参加している。