シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

獨協埼玉中学校

2024年09月掲載

獨協埼玉中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自ら考え、判断し、行動することのできる若者を育てる教育体制

インタビュー3/3

学校の授業を中心としたお話をお聞きしたいのですが、獨協埼玉中学校の社会科における授業の特徴としてはどんなものがありますか?

今井先生 中1では地理、中2で歴史、中3で公民と年ごとに学習分野は変わっていくので、地理、歴史、公民それぞれの中から興味・関心のある対象を見つけていってもらいたいと思っていますので、「特定の分野だけやればいい」といったメッセージは送らないようにしています。

また2022年から高校に上がった段階で、地理総合、歴史総合といった総合科目が新たに設置されましたので、自分の興味対象として、高2からどの探究科目を選択していくかの判断材料にしていってほしいと思っています。

獨協埼玉中学校 教室

獨協埼玉中学校 教室

中学の段階ではタブレットよりも紙を使った授業に力を入れている

普段の授業ではタブレットなどを活用されていたりしますか?

今井先生 生徒はChromebookを持っていて、地理であれはGIS(地理情報システム)を使ったり、歴史の授業であればスライドを作ったりするなど、どの学校でもされているようなことは普通に行っています。ただし、中学生の段階ではそれほど多くは使っておらず、まずは紙ベースの資史料をしっかり読んでしっかり書けるという部分を大事にしています。それはどの教科で言えることです。

田口先生 タブレットは、導入した当初は教員側の勉強もあって積極的に使うようにしていた部分はあるのですが、最近の中学の状況を各教科で聞いてみると、デジタルに頼るばかりではなく、紙の教材とデジタル教示の良い面をそれぞれ分けて使っているような印象を受けます。

最近の生徒はプレゼン力に長けている子が多い

アクティブラーニングのような授業もやっていますか?

今井先生 アクティブラーニング型の授業は取り入れています。中学生ではグループワークをする授業も増えていて、今の生徒たちにとってグループワークはかなり手慣れており、昔の生徒よりも人前で発表することにかなり慣れている印象を受けます。

社会科でも人前でプレゼンする機会はあるのですか?

今井先生 ありますよ。たとえば、中1の地理の授業では「旅行計画を立てる」といった探究活動をしていまして、予算が2人で3泊4日15万円というお題が教員から設定され、共通のレンタカー会社のサイトなどを見ながらプランを立てていくわけです。移動手段は何を使うのか?食べ物は何を食べるのか?といったことも明記させていきます。さらに地理の視点でいくと、この土地は電車の本数が少ないとか、船が就航しているとか、交通事情がどうかといった点がわかってきますし、食事については名物料理が何か、その土地の名産品が何か、といったことにも目を向けていき、それをまとめて発表するといった具合です。

また歴史であれば、テスト範囲の中で興味・関心を引いた出来事や人物でも何でもいいので、調べたものを発表させています。

獨協埼玉中学校 校舎内

獨協埼玉中学校 校舎内

できるだけレポートは手書きさせる

公民の授業の特徴としては何かありますか?

田口先生 最近は新聞を取っている家庭が本当に少なくなっていますので、新聞との関係性を意識的につなげて、記事を選択し報告させるといったことを定期的に行っています。本校の場合、紙媒体には中学だけでなく高校でもかなりこだわっていると思います。

また、これは意見が分かれるのですがレポートもなるべく手で書くことを求めています。デジタルは推敲したりする上では便利なツールでもあるのですが、一方で安易な使い方も危惧されるものなので、紙にこだわる意見も一部ではあります。

グローバルに活躍できる生徒に育ってほしい

学校の理念として偏よった人間に育てないということが入試問題に反映されているとのことでしたが、入学してきた生徒には社会科の先生としてどのように育ってほしいと思っていますか?

今井先生 私は現在高3の担任をしているのですが、大学入試がかなり多様化しているのを感じています。たとえば、東京理科大だと理系なのにグローバル方式といって英語を重視する入試が行われていますし、中央大学の看板学部とされる法学部では、チャレンジ入試という形で特定の法曹分野に進む生徒を対象とした入試も行われています。立教大学では観光学部で観光学やツーリズムの方に関心がある生徒を呼び込みたいという意図が見えますし、グローバル的な多様な視点がすごく求められている時代だと思います。

今は日本だけでなく国際感覚のある人材はどこの国でも求められていると思うので、国際的な感覚を持ちつつ、社会科だったら政治学とか経済学とかいろんな分野がありますから、多面的な視点を持たせてあげることが大事ではないかと考えています。

ちなみに本校にはネイティブ教員も4名ほどいますし、英語については高1では必修で生徒5,6名に対し、1名の外国人大学生・大学院生がつくグローバルスタディーズプログラムも行っていますので、外国人の方とコミュニケーションを取ることに抵抗がない子は比較的多いです。

田口先生 私的には、生徒一人一人持ち味が違うので、思考錯誤する中でいろんなことに気がついてほしいということだけですね。高校時代は特に自分の人生を選択する時期だと思いますので、学びたいなら大学に行ってしっかりと自分の得意な部分を一層開花させるべく真剣に学んでほしいです。

獨協埼玉中学校 図書館

獨協埼玉中学校 図書館

目指すべきゴールは学びたいことが学べる場所へ進むこと

論文のようなものを書く機会はありますか?

今井先生 高3年次の獨協コースの生徒に関しては論文があります。

田口先生 どうしても今は自分の目指す進路の実現がゴールと設定されてしまっています。ですからただ大学に入っておしまいというのではなく、本当に自分が満足できて学びたいことがしっかり学べるところに行ってほしいというのが目指すべきゴールであり学びの集大成ではないかと思います。

ちなみに今はどのくらいの生徒が獨協コースに行かれているのですか?

今井先生 25人くらいですね。実際に進学する生徒は他の文系コースも合わせると、生徒全体の1割5分から2割程度です。

問題意識が持てる大人になる機会を親が作ってあげることが大事

公民は地理や歴史と比べると勉強する時間が短い上に範囲があいまいであるため、受験生も勉強するのが難しいと思うのですが、どのように公民分野は勉強していくとよいでしょうか?

田口先生 我々が問題を作成するうえで、いろいろな資料を集める際に当然新聞も集めます。しかし、全国紙だけだと問題がわからないことも多いため、地方紙も集めるんですね。東京にずっといると見えない問題が、地方紙ではたくさん危機感を持って語られています。

そういった日本の地方のリアルな状況を見聞きする機会を子供の時に持たないと、問題意識を持たない大人になってしまう危険性があります。ですから、もし機会があれば親子さんと一緒に少し東京から離れて旅をしてみるのもよいかもしれません。地方都市なんて大きな都市でも10分も車を走らせればもう過疎地なわけですから。
そんなようなことを思いながらいつも問題を作っています。

あと、お子さんは親御さんにいろいろと聞いてほしいと思います。親から子供に聞くと子供は逃げてしまうので、親御さんはいつも「子供から聞いてくれたらいいのに」と思っているに違いありません。

最後に、これから獨協埼玉中学校を目指す受験生に対するメッセージをお願いします。

今井先生 埼玉入試は1月の初旬から始まるわけですが、埼玉の私学は大学進学を目指し出口に意識を置いている学校が多いです。本校もそういった側面を持ちつつ、そうではない部分も往々にして持っているので、教育や学校の姿勢に共感していただいける方には、ぜひ選んでいただけたらと思っています。

特に高校では入口でコース制がないところが一番の特徴と思っていますので、そういった部分に共感してもらえる方にお越しいただきたいです。

獨協埼玉中学校 校舎

獨協埼玉中学校 校舎

インタビュー3/3

獨協埼玉中学校
獨協埼玉中学校1881(明治14)年にドイツを主としたヨーロッパ文化を学ぶことを目的とした獨逸学協会としてスタートし、以後120年間のうちに獨協大学、獨協医科大学、姫路獨協大学、獨協中学・高校を有する総合学園に発展。獨協埼玉高校は1980(昭和55)年に開校。2001(平成13)年に待望の中学校が開校した。
都内と違い、まだまだ多くの自然が残る環境のなか、約8万m2の広大な校地をもつ。300mトラック、サッカー・ラグビー場、図書館棟、和室棟などがある。中学開校に伴い、中学の校舎を新築。普通教室のほか、カリキュラムで使い分ける選択教室が8教室、250名収容の多目的ホールや、各階の談話コーナーのほか、弁当、パンや飲み物を販売する売店や販売機も備えている。
教育方針は、自ら考え、判断し、行動することのできる若者を育てる。中学では、様々な体験を通じて、自分の目でみて確認する「帰納法的手法」を重視している。
併設大はあるが、他大学進学へのウエートが大きい。英語は中1では週6時間、そのうち2時間は外国人教師による授業で、1クラス2分割の少人数制。指名制・希望制の補習が放課後あり、定期考査後や、学期末にも特別補習を実施する。中3で卒業論文発表に取り組む。毎日10分間の朝学習では、読書、学習チェックの2つの内容で行われる。高校の英・数は学年により習熟度別・少人数授業を行っており、伝統のドイツ語は高1から自由選択科目となる。外部進学生とは高2より基本的に混合クラス。
中学のクラブの活動日は週4日で、完全下校を中1は5時半に設定。運動部は陸上、軟式野球部など12、文化部は吹奏楽、演劇部など6、文芸、囲碁・将棋など6つの同好会がある。授業のほか体、心を鍛える総合学習プログラムがあり、中1では地域の農家の協力を得て稲を育てるネイチャーステージ、中2では将来の進路や就業について調べるキャリアステージや、2泊3日アメリカン・カウンセラーと生活する「英語ですごす3日間」を体験するイングリッシュキャンプ、中3では福祉体験などを行うボランティアステージなどが用意されている。学校行事は、文化祭、修学旅行、マラソン大会など多彩。希望者対象に中3はニュージーランド、高校はシンガポール語学研修、ニュージーランドターム留学、オーストラリア・ドイツとの国際交流がある。