シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

獨協埼玉中学校

2024年09月掲載

獨協埼玉中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.現代社会が抱える問題を受験生に考えさせる問題

インタビュー1/3

まずはこの設問の出題意図について教えて下さい。

田口先生 未来予測において「人口」に関する問題はもしかすると天気以上に確度の高い予測ができるものかもしれません。人口のようにあまり見つめたくない問題から目を逸らし、ああだこうだ願望を語るのもありだと思います。しかし、日本における大きな課題のひとつが少子高齢化であるのは明らかなわけで、それはもうどうにもならない事実をもとに明確に見える未来であるのに、その部分をしっかりと踏まえた教育がおそらく小学校でも中学校でも我々の教育現場でも足りていません。

そういったことから、人口について意識させるような出題をこれまでも何度か行ってきました。この問題のように、女性と高齢者が比較的政府によって生産年齢の縮小に基づいて期待されていることは今までも入試で聞いてきたわけですが、「実際働いている方々は何をもって働いているのだろうか?」このことをいつか聞いてみたいと思っていたところ、この問題で使用した図表のような比較的新しいデータを見つけたことから出題するに至りました。

この問題からどのようなことが読み取れると思われましたか?

田口先生 ここから言えることは、男性は正解である(ア)のあるように、年齢に応じてだんだん収入目的の割合が減っているんだなということです。逆に仕事そのものや自分の持っている力を発揮したいとか、健康といったポジティブな働く理由を大きくしていくのが望ましいと考え、男性はだんだんとそうなっていくのかなというのが見て取れました。

しかし、一方で女性のデータを見た時にかなり驚きました。調査対象者は決して多くはないため、これが日本全体の状況を示しているかどうかははっきり言えませんが、データからは少なくとも収入目的で働いている人が増加している年代も見受けられます。しかも75歳以上の場合、38.5%と同年代の男性の割合を大きく超えているわけです。これはおそらく夫が亡くなったり、年金問題やその他いろいろな問題を抱えているんだろうなと思いながら、女性が生きていくには困難な社会であることが伺えて非常に胸が詰まりました。

個人的には知識や能力を活かせたり、健康目的といった部分が働く原動力になるような未来が望ましいと思っているのですが、女性についてはなかなか厳しい現実があるんだなと思いましたね。

高1学年主任/田口 淳先生

高1学年主任/田口 淳先生

図表を正確に読み取るにも読解力が必要

田口先生 この問題においては読解力が重要だと思っているので、リード文を読み、知っている・知らないではなく、読んで理解して答えられるものにしようと考えました。また、図も見ただけで理解できてそのまま答えられるような問題にしようと心掛けました。知らないと答えられないのではなく、読む力を問いたいと思った問題です。

そういった意味で選択肢の(ア)は割とはっきり解答が見えるものにしたつもりでしたので、出題時点では7割程度答えてくれるといいかなと思っていたものの、実際は半分程度の正解に留まってしまいこちらが期待した正答率ではありませんでした。当然受験生はこういった文章を読むのも不慣れだと思いますし、初見のものをきちんと読むのは誰にとっても容易ではなかったのかなと思います。

それとなるべくひっかけにならないように心掛けたものの、(ウ)の選択肢のように「年々増加している」といった言葉に引っ張られてしまった子もいました。単年度データなのでそんなことはあり得ないといった当たり前のことであっても、経験の乏しい小学生6年生にとっては少々きつかったかなと反省しました。

ちなみに(ウ)は割と誤答として多かったのですか?

田口先生 誤答率を出しているわけではないため正確なことはわかりませんが、採点した感触では(ウ)の誤答が多かった印象はあります。(イ)と(エ)はすぐに除外できると思いますが、もしかすると図表の読解において(ウ)でひっかかったとしたら申し訳なかったなと感じています。

正解の(ア)が50%ぐらいの正答率であれば、問題としては丁度よかったのでは?と思いましたが、いかがでしたか?

田口先生 他に結構難しい問題があったので、この問いは取れる問題として出したつもりでしたが、結果として54.6%の正答率でとなりました。

この図に関しては、物事を多角的に考えるための材料として、日本社会の見えない一面を見せてくれるデータとしてみんなで話し合ってみると面白いのではないかと感じます。私一人が気づくことなんて、自分の視野の範囲内の限られたものでしかありません。それを女子生徒または自分の妻など女性を交え、いろいろな議論をぶつけあって、どんな意見が出てくるか話し合うことでものすごく勉強になると思いました。データは、みんなで共有しながらさまざまな意見を出していくところに面白みがあると思いますね。

この問題は以前から出題されようと思っていたのでしょうか?

田口先生 高齢者や女性、また外国人に関するような社会問題はずっと気になっていましたので、これまでも出題してきましたが、さらに何か面白い材料はないかと探していたら、今回の図表のような資料に出会いました。おそらくこれからもこのような問題は出題していくと思います。

獨協埼玉中学校 校内

獨協埼玉中学校 校内

インタビュー1/3

獨協埼玉中学校
獨協埼玉中学校1881(明治14)年にドイツを主としたヨーロッパ文化を学ぶことを目的とした獨逸学協会としてスタートし、以後120年間のうちに獨協大学、獨協医科大学、姫路獨協大学、獨協中学・高校を有する総合学園に発展。獨協埼玉高校は1980(昭和55)年に開校。2001(平成13)年に待望の中学校が開校した。
都内と違い、まだまだ多くの自然が残る環境のなか、約8万m2の広大な校地をもつ。300mトラック、サッカー・ラグビー場、図書館棟、和室棟などがある。中学開校に伴い、中学の校舎を新築。普通教室のほか、カリキュラムで使い分ける選択教室が8教室、250名収容の多目的ホールや、各階の談話コーナーのほか、弁当、パンや飲み物を販売する売店や販売機も備えている。
教育方針は、自ら考え、判断し、行動することのできる若者を育てる。中学では、様々な体験を通じて、自分の目でみて確認する「帰納法的手法」を重視している。
併設大はあるが、他大学進学へのウエートが大きい。英語は中1では週6時間、そのうち2時間は外国人教師による授業で、1クラス2分割の少人数制。指名制・希望制の補習が放課後あり、定期考査後や、学期末にも特別補習を実施する。中3で卒業論文発表に取り組む。毎日10分間の朝学習では、読書、学習チェックの2つの内容で行われる。高校の英・数は学年により習熟度別・少人数授業を行っており、伝統のドイツ語は高1から自由選択科目となる。外部進学生とは高2より基本的に混合クラス。
中学のクラブの活動日は週4日で、完全下校を中1は5時半に設定。運動部は陸上、軟式野球部など12、文化部は吹奏楽、演劇部など6、文芸、囲碁・将棋など6つの同好会がある。授業のほか体、心を鍛える総合学習プログラムがあり、中1では地域の農家の協力を得て稲を育てるネイチャーステージ、中2では将来の進路や就業について調べるキャリアステージや、2泊3日アメリカン・カウンセラーと生活する「英語ですごす3日間」を体験するイングリッシュキャンプ、中3では福祉体験などを行うボランティアステージなどが用意されている。学校行事は、文化祭、修学旅行、マラソン大会など多彩。希望者対象に中3はニュージーランド、高校はシンガポール語学研修、ニュージーランドターム留学、オーストラリア・ドイツとの国際交流がある。