シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2024年09月掲載

頌栄女子学院中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.思考の過程や仕組みを理解する、ということを楽しもう

インタビュー3/3

数学に興味を持ってもらうために十分な量と質を確保

貴校の数学の特色を教えてください。

栃木先生 生徒にも保護者にも繰り返し言い続けているのは、日々の課題、補習、長期休暇期間の講習など、十分に学力を身につけることができる教育を行っているということです。量・質、ともに、そこはしっかりと提供している自負があります。
数学が得意できない生徒、数学に苦労している生徒もいるのですが、真面目で努力家の生徒が多いので、生徒も理解したいという気持ちで前向きに取り組んでくれるため、そういった子たちと励まし合いながら学習を続けることができる、いい刺激を受けられる環境であると思っています。

生徒に少しでも興味を持ってもらえるように、クイズというか、活動みたいなものを位置付けています。また、単元の導入部分とか、授業のポイントとか、教科書の解答の別解釈とか、この問題をきっかけとして、新たな気づきを得られるようなものを仕込める時は仕組んでいます。

数学が苦手な生徒に対してはどうされていますか?

栃木先生 数学が得意な子は気にせずに訓練ができるのですが、数学が苦手で、しかも何をやっているかわからないっていう子は辛いですよね。得意まではいかなくても、このように考える必然性を植え付けるフェーズがあり、それをクリアした場合に、今度は練習しようという気持ちになるのだと思います。ですので、最初に少しでも興味を持ってもらうために、アクティブラーニングスタイルで、話し合いの中で気づかせる、ということをしたりもします。最近は、ICTを使って映像的に見るとか、その解説の動画などもあるので、そういうツールを使って学んでもらう工夫もしています。
最終的に算数、数学は自分の脳みそでやれない限りできない教科だと思いますので、ペンと紙で勝負するしかありません。ある程度のお膳立てと生徒の主体性、その辺りの部分のバランスを取りつつの授業を心がけています。また、特に中学生に対しては定期的な補習を行い、学習習慣とあわせて数学への取り組み方を指導しています。

聞けばわかる、というのはいいですが、算数・数学は考える教科なので、そこが難しいですよね。

栃木先生 そうですね。その思いを上手に伝えて生徒に実践させるというところが難しいです。身近な例だと「先生、わかりません」と質問に来て、「わかった」というのなら、試験でそれを再現してほしいと思うのですが、なかなかそれができないという現状もあり、試行錯誤の連続ですね。

頌栄女子学院中学校 プール

頌栄女子学院中学校 プール

自ら考える力、それが数学の普遍的な価値

中高6年間を通して、生徒さんにはどのような力をつけて育ってほしいと思っていますか。

栃木先生 一言で言えば、自ら考える力です。 たぶん数学の普遍的な価値であると思うのですが、思考力、判断力、表現力、考え方を学ぶ学問だと思うので、この統計の問題にも関わってくると思いますが、現状を正しく分析し、根拠を持って、総合的に考える素地を身につけさせたいと思います。先行きが不透明な時代なので、きちんと粘り強く考える力は持ってほしいと思っています。

コロナ前と比べて、粘り強さや考える力に変化は見られますか。

栃木先生 コロナの前後で大きな差はあまりないような気がします。ただ、もっとこうなってくれたらなという思いを持って、生徒と関わっています。何をするにも、待ってしまう。さっきの話とは通ずる部分があるのですが、もっと主体的に、いろいろなことをやってほしいんですよね。よく言えば、言われたことはきちんとやろうとする「いい子」なので、良い意味で、「はみ出る」ようなことにチャレンジしてほしいです。

昔の子どものほうが手を焼いたけれどもエネルギーを感じた。活力があった。ある意味、たくましく生きていけるタイプだった、ということは、よくよく耳にしますから、今を生きる子ども達にも、そうしたたくましさを身に着けてほしいです。

たくましさは必要ですよね。

栃木先生 大人の関わり方の影響も大きいですよね。時代も大きく変化していますし。保護者の方も、教員私たちも、先回りしすぎることなく、生徒自身が考えて行動するような関係づくりを築いていくことが重要ですよね。

頌栄女子学院中学校 掲示物

頌栄女子学院中学校 掲示物

一緒に楽しく数学を学べる人を待っている

最後に、受験を考えている小学生に向けて、メッセージをお願いします。

栃木先生 一緒に楽しく数学を学べる人を待っています。そのためには、こうしたらできる、というテクニックに頼るのではなく、日頃から「なぜ」「どうして」というところにきちんと焦点を当てて、思考の過程や、仕組みを理解する、ということを楽しんでほしいと思います。
先ほどもお話しましたが、努力型の学校だと思います。入試でもそういう部分が必要とされますので、やるべきことを真面目に積み上げてください。そうすれば納得のいく結果が得られると思います。本校が第1志望であれば、特殊なことはしなくて大丈夫です。当たり前のことを当たり前に取り組んでください。

数学科主任/栃木 斗夢先生

数学科主任/栃木 斗夢先生

インタビュー3/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。