シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2024年09月掲載

頌栄女子学院中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.2つのデータ、どちらを選んでも正解できる異色の問題

インタビュー1/3

自分で判断する力を問いたかった

この問題の出題意図からお話いただけますか。

栃木先生 算数・数学は答えが1つに定まることがほとんどですが、実生活において、そういうことはむしろ稀だと思います。答えは1つではありません。そういう事柄について判断を迫られる場合において、与えられたデータを正しくとらえて、自分なりに根拠のある結論を導き出すことができるか。そして、それを言葉で説明できるか。そのような力を試したいと思い、このような問題を出題しました。

また、教科書で学ぶ、あるいは授業の中では、「こういう観点や着眼点で比較してみなさい」といった指示のもとに取り組むことが多いかもしれませんが、指示されたとおりにデータを比較するのではなく、比較する観点、視点も含めて、自分で定めることができるかどうかを見たかったということがあります。

統計分野が入ってきてしばらく経っています。テストのデータといえば代表値、平均値が注目を浴びがちですが、平均値がすべてではないんですよね。この問題には「他の代表値も含めて判断する必要があるということを意識してほしい」というメッセージも込められています。

小学生にとっては初めて見る問題だったのではないかと思います。

栃木先生 はい、おそらくほとんどの受験生にとって初見の問題だったのではないでしょうか。未知の問題・課題に対してどうアプローチするかは、数学ひいては人生においても、とても大切なことです。統計分野は将来実際に使う人も多いと思うので、受験勉強を通してこのような経験を少しでもしてもらえたらという思いもあります。

数学科主任/栃木 斗夢先生

数学科主任/栃木 斗夢先生

受験生の約55%が満点を取れていた

受験生は実際どんなところに目を向けて、どのような答案を作っていましたか。

栃木先生 最頻値に注目している解答が多かったという印象はありましたね。採点については、AとB、どちらの主張かということと、その裏付けとなることを書けていれば正解にしております。比較的よくできていて、55%くらいの受験生が満点を取っていました。

先生方の予想と一致していましたか。

栃木先生 こちらの想定よりは、比較的多いイメージはありました。ただ、これぐらいになるといいな、という値にちょうどなってくれたという感じです。正答率が55%ぐらいになったのは、結果的に良かったと思います。比較的よくできていたなと思います。

頌栄女子学院中学校 校舎

頌栄女子学院中学校 校舎

「数を用いて」が抜けている解答は不正解に

どんな誤答が目立ちましたか。

栃木先生 誤答のパターンとしては、選んだものとその理由に整合性がないものが多かったです。また、入試の緊張なども相まってそうなってしまったのかもしれませんが、文章がねじれているなど、言いたいことを上手に整理できていない解答や、具体性に欠ける解答が目立ちました。「数を用いて」が抜けている解答は不正解にしました。

無回答はありましたか。

栃木先生 ほとんどなかったです。何かしら解答していました。まだ時間が足りなくなる段階でもなさそうなので、とりあえず何か書こうとしたのは見て取れます。
面白い問題というのは、採点が大変になりがちですよね。聞いてみたいけど、どういう解答が入ってくるかちょっと読めないし、蓋を開けた時に面白いけどどうしようかなっていうことは確かにあるので。
中間点もありましたが、多くはつけなかったですね。受験生の10%もいないです。ほぼ〇か×かになりました。問題の一番難しい部分は、まず、自分で決めなくてはいけないっていうところなのかなと採点していて思いました。

頌栄女子学院中学校 グローリアホール

頌栄女子学院中学校 グローリアホール

インタビュー1/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。