今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
頌栄女子学院中学校
2024年09月掲載
2024年 頌栄女子学院中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
(問)頌子さんは、紙飛行機の飛距離(きょり)を競う大会で使用するために紙飛行機A、Bを作りました。大会では紙飛行機を1回だけ飛ばします。下の表は、どちらの紙飛行機を大会で使用するか決めるため、それぞれ20回ずつ飛ばした結果を表しています。それぞれの飛距離の平均を求めたところ、平均は等しくなりました。
あなたなら頌子さんにA、Bどちらの紙飛行機をすすめますか。どちらを選んでも構いませんが、2つの表を比較して、選んだ理由を数を用いて具体的に答えなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この頌栄女子学院中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
例1 Aを選ぶ
≪理由≫ Aは安定しているが最頻値は低めで、Bは最頻値は高いが不安定である。1回しか飛ばせないことを考えると、失敗は許されないのでBよりもAを選んだ方がよい。
例2 Bを選ぶ
≪理由≫ 3.5m以上飛んだ回数がAは6回で、Bは9回だから、Bの方が飛距離が長い可能性が高いと考えられるから。
解説
20回すべてで考えると、飛距離の平均は等しくなるので、飛距離の平均はすすめる根拠にはなりません。理由を説明する方針は、大きく分けると、①ある順位について、その大小を考える、②ある区間までの回数に着目する、③代表値を利用して考える などが考えられます。ここでは、考え方の例をいくつか示します。
①ある順位についてその大小を考える場合
- 距離が長い方から17番目で比べると、Aは2.5m以上の飛距離があるが、Bは17番目が2.0m未満の飛距離なので、Aの方が飛距離が長い可能性が高いと考えられるから。
- 距離が長い方から5番目で考えると、Aが3.5m以上4.0m未満で、Bが4.0m以上4.5m未満のところにあるので、Bの方が飛距離が長いと推定できるから。
②ある区間までの回数に着目する場合
- 2.5m以上飛んだ回数がAは17回でBは14回だから、Aの方が飛距離が長い可能性が高いと思われるため。
- 3.5m以上飛んだ回数がAは6回でBは9回だから、Bの方が飛距離が長い可能性が高いと考えられるから。
③代表値を利用して考える(最頻値の近辺)
- 20回のうち、最も可能性が高いところで比べると、Aは「3.0m以上3.5m未満」6回と「2.5m以上3m未満」5回となる。一方でBは「3.5m以上4.0m未満」4回と「3.0m以上3.5m未満」3回と「4.0m以上4.5m未満」3回となる。よって、Bの方が飛距離が長い可能性が高いと推定されるから。
- Aは安定しているが最頻値は低めで、Bは最頻値は高いが不安定である。1回しか飛ばせないことを考えると、失敗は許されないのでBよりもAを選んだ方がよい。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
近年、私たちを取り巻く社会では、統計学、データサイエンス等の重要性が声高に叫ばれています。ビッグデータの活用、データマイニング、デジタルデータの安全性など、枚挙に暇がありません。この問題からは、算数を通して、そのような社会で必要とされていることと子どもたちとのつながりが感じられます。
算数では、答えが1つに定まる問題がほとんどです。しかしこの問題は、「どちらを選んでも構いませんが、2つの表を比較して、選んだ理由を数を用いて具体的に答えなさい。」とあります。どちらを選んでも、合理的な説明をすることができれば正解となる問題です。しかも、A、Bどちらも平均と回数が等しいので、合計も等しくなります。どのようなところに着目すれば、『違い』が見出せるのでしょうか。答えが1つに定まらない問いにどのように向き合っていくのかという先生方のメッセージが込められているといえそうです。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。