シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

恵泉女学園中学校

2024年08月掲載

恵泉女学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.生徒たちが楽しいと思えることで「理科好き」を増やしたい

インタビュー2/3

「授業」という枠を超えた取り組み

「理科好き増やそうプロジェクト」を実施しているとお伺いしました。どのような取り組みを行っているのでしょうか。

朝野先生 「理科好き増やそうプロジェクト」では、生徒の興味関心をかきたてるテーマを教員が設定し、授業外の時間を使って自主研究を行なっています。スタンプラリーや結晶コンテストなど毎年内容を変えて、生徒が楽しめるイベント形式で実施しています。教員も自分の好きな分野や専門外の取り組みを実施することができるので、楽しみながら企画を考えていますね。中学生の参加も非常に多く、文系を志望している生徒も「理科好き増やそうプロジェクト」に積極的に参加してくれています。

「理科好き増やそうプロジェクト」を実施しようと思ったきっかけは何でしょうか。

青鹿先生 本校は創立以来、私立文系が多い学校で、理系分野に苦手意識を持っている生徒が多いことを課題と感じていました。「理科好きを増やしたい」「生徒たちにも理科の学びの楽しさを知ってほしい」という教員たちの思いから、「理科好き増やそうプロジェクト」は生まれました。

私は大学選択や文理選択を前にした時に「理科が苦手だから」という理由で理系分野を選択肢から外してしまうのは、非常に残念なことだと思っています。「理科好き増やそうプロジェクト」を通じて、中学生の頃から理科に対して「楽しい」「おもしろい」というプラスのイメージを持ってもらうことで、生徒たちのポテンシャルを伸ばしたいと考えています。また、「理科好き増やそうプロジェクト」では教員の専門分野を超えて、それぞれが楽しみながら企画を考えています。私の普段の担当は物理ですが、地学分野にも興味があり「理科好き増やそうプロジェクト」では鉱物当てクイズを担当しています。教員も楽しみながら参加することで、理科の楽しさを伝えていきたいと思っています。

朝野先生 私は中高で生物部に所属していて、部活動で自分の興味関心をもとに様々な経験をしたことが、今に繋がっています。身近なものに興味を持つことが、理科の楽しさに気づくきっかけになればと思い、生徒たちが楽しんで参加できる企画を考えています。

また、本校では課外活動に「サイエンスアドベンチャー」があります。サイエンスアドベンチャーでは、生物、化学、物理、コンピュータ・サイエンスの4班に分かれ、分野ごとに指導教員がつき、生徒の興味関心のある事象についての研究やフィールドワークを実施しています。最近はザリガニの体色変化の実験や、ワカケホンセイインコの生態観察を実施しました。授業の枠を超えた取り組みが生徒たちの理科への好奇心を刺激するものになってほしいと思っています。私たちも理科が楽しくて理科の教員をしていますので、授業という枠に縛られず、身近な所から理科の学びの楽しさに気づいてほしいですね。

実際に理科が好きな生徒や、理系進学者は増えていますか。

朝野先生 授業外の取り組みをはじめてから、理系進学者は年々増加しており、近年では国公立理系進学者も増えています。もともと看護学部や農学部を志す生徒が多くいましたが、近年は多岐に渡り理系分野の進学を志す生徒が増えているのも印象的です。苔に興味を持ったある生徒が、クラスメイトを巻き込んで授業で苔の乾燥耐性の実験を行い、その実験での取り組みや成果を総合型選抜でプレゼンテーションをして、東北大学の合格をいただきました。

青鹿先生 生徒たちの理科への興味関心も広がっているように感じていますね。今年、東京理科大学の先生をお招きして特別授業を実施した際に、授業後に自ら質問に行く生徒の多さに驚きました。また「理科好き増やそうプロジェクト」で実施しているスタンプラリーや結晶コンテストの参加者の多さなどを見ても、進路に関わらず、理科に対して興味関心を持ってくれている生徒が増えていることが実感できていて、非常にうれしいですね。

理科/青鹿 吉洋先生

理科/青鹿 吉洋先生

生徒自身で創意工夫ができる探究実験

理科の授業で工夫されていることはございますか。

朝野先生 本校は創立者が自ら考え、発信する力のある自立した女性を育てたいという思いから誕生した学校ですので、理科の授業でも、自分の頭で考えるきっかけを作るしかけは積極的に行っています。なかでも生徒たちから強い支持を集めているのは中学3年生で実施している探究実験です。教員同士で様々なテーマを出し合い、ひとクラスを6つに分け、生徒たちの意見を尊重しながら少人数で実験を実施します。

私は抗菌作用の実験を担当しており、実験で使用する食材は生徒たちに自由に考えてもらっています。マヌカハニーや生ワサビ、焼酎など多種多様でユーモアに富んだ食材を選んでくる生徒たちに、私自身が刺激を受けることも多いです。他の教員も雪の結晶作りやダンゴムシの交替性転向反応など多岐に渡る実験を実施しています。どの実験でもテーマをもとに生徒たち自身で実験の内容を考えてもらうことを大切にしていますね。探究実験は生徒たちからの満足度も非常に高く、アンケートでは「高校生になってもこの授業を続けてほしい」という生徒が多いです。

なぜ中学3年生で探究実験を実施しているのでしょうか。

朝野先生 本校では先取り学習を行っていないため、高校受験をしない中学3年生は比較的時間があります。その時期に「理科で様々なことにチャレンジをしてみたら楽しかった」という経験を積むことで、理科を超えて様々な分野へチャレンジをしてみるきっかけを育てたいと考えています。また、中学3年生は頭が柔らかく、自由な発想をすることができます。教員でも思いつかないような発想もあります。自分の頭で発想することや、チャレンジする楽しさが生徒たちのその後の学びに繋がってほしいと思っています。

そうした取り組みは先生方の話し合いの中で生まれるのでしょうか。

青鹿先生 そうですね。現在、理科の専任は6名のみなので、活発に意見交換をしています。少人数だからこそ気軽に話ができるのも本校の強みだと思っています。

朝野先生 私たち理科の教員も理科が好きで、理科に興味関心を持ってほしいという思いから様々な活動に取り組んでいます。生徒たちがすこしでも理科を学ぶ楽しさに気づいてくれるとうれしいです。

恵泉女学園中学校 展示物

恵泉女学園中学校 展示物

インタビュー2/3

恵泉女学園中学校
恵泉女学園中学校1929年、第一次世界大戦を経験したクリスチャン・河井 道が、「広く世界に向かって心の開かれた女性を育てなければ戦争はなくならない」と考えて創立した。創立当初より聖書・国際・園芸を教育の柱に据え、生徒の知性・感性・社会性を育てている。この伝統は今に受け継がれ、様々な分野で活躍する女性を輩出し続けている。
現在の校舎は創立者の言葉を刻んだ「泉」のある中庭を囲んで配置され、木材を多用し、明るく広々とした雰囲気。また、HR教室24教室分の広さと9万冊の蔵書を誇るメディアセンターをはじめ、生徒の自立的学習を支援する施設が備えられている。
恵泉の朝は、25分間の礼拝から始まる。恵泉教育の特徴のひとつである「感話」は、日頃感じたり考えたりしたことをまとめたもので、礼拝の中で他の生徒の前で述べる。神との対話、理想とする生き方、友人とのトラブル、留学から学んだこと、哲学や芸術について……多感な時期に感話を書き、また聞き続けることで、誠実に人生に向き合うことを学ぶ。聖書や感話の中で語られる、人それぞれの生きる営み。様々な生き方を知り、「自分とは何者か」「自分はいかに生きるべきか」、思索を深めていく。
英語は少人数制と豊富な選択授業により、Reading, Writing, Listening, Speakingの4技能をバランスよく伸ばし、コミュニケーションツールとしての英語を身につけることを目標としている。中学生は英検各級の満点合格者が多数。5年生のGTECの平均点は959.2(全国平均793)で、海外進学を視野に入れられるレベルの生徒が約6割、6年生の17%が英検準1級を取得している。
多くの生徒がスポーツ系、文化系の21のクラブで活動している。茶道やオーケストラやサイエンス・アドベンチャーなどの課外活動では、専門の指導者による学年の枠をこえた授業を行っている。また、クラブ活動のほかに学校生活を豊かにするための委員会活動なども活発。