シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

恵泉女学園中学校

2024年08月掲載

恵泉女学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.教員の実体験から生まれる入試問題

インタビュー1/3

受験生に「入試問題がおもしろかった」と思ってほしい

まずはこの問題の作問意図を教えてください。

朝野先生 昨年、高校2年生の見学旅行を引率した際に京都を訪れたことがきっかけでした。見学旅行とは、高校2年生で実施する日本の文化や歴史を肌で感じる体験型学習のことで、私は京都の宇治を巡りました。

生徒たちと宇治で抹茶に舌鼓を打ったり、茶畑を眺めていたりする時に「茶葉を題材に問題を作ってみよう」と思い立ちました。元々、大学で葉の研究をしていたこともあり、茶葉にも興味がありました。過去にもコウノトリや牧場をテーマにした問題を出題していますが、そういった問題も私自身の興味のある分野や実際に生徒たちと訪れた場所をテーマに作問しています。

先生方の身近な出来事から問題が生まれているんですね。

朝野先生 そうですね。入試問題を作問する時は、教員の興味のあるものや身近なものを題材にすることが多いと感じています。今回の問題には「紅茶も緑茶も抹茶もウーロン茶もみんな同じ茶葉」という一文を記載しました。この一文は、本校を受けていただいた受験生の皆さんに、ちょっとした気づきや、今まで知らなかった新しい知識を得てほしいという思いから記載しました。試験を受けた後に、受験生の方に「理科の入試問題がおもしろかった」「新たな知識を得た」と思ってもらえる問題を作りたいと思っています。

本校は創立以来、園芸の取り組みを行っています。園芸の授業では農作物について学ぶだけではなく、押し花やフラワーアレンジメントなど様々なことを学んでいきます。そうした生徒の人生を豊かにしたいという思いを受験生の方にも体感してほしいと思っています。それが「おもしろい入試問題を作りたい」「入試問題を通して新しい知識を得てほしい」という作問意図につながっていますね。

この問題の出来具合はいかがでしたか。

朝野先生 正答率は9割程度でした。予想よりよくできていました。グラフを正確に読み取り、確実に得点した受験生が多かったですね。今回の問題はグラフ自体は複雑ではありませんが、初めて目にする方も多かったと思います。受験本番で初めて見るような問題に向き合う力が必要で、そういった点では、情報を正確に読み取り、問題を解いていた受験生が多かったのかと感じています。

理科/朝野 陽子先生

理科/朝野 陽子先生

会話文形式で情報を読み取る問題が多い

恵泉女学園中学校の全体の入試問題の構成について教えてください。

朝野先生 生・化・物・地4分野から出題し、生物は2題、他は各1題ずつの構成です。理科の入試がはじまって以来、変わらずにこの問題形式で入試問題を作成しています。生物の問題を冒頭の大問で出題することも本校の入試問題の大きな特徴です。例年、大問1が植物、大問2が動物の問題という区分けをしています。

生物の問題を冒頭で出題するのはなぜですか。

朝野先生 本校の中学1年生も花や植物の観察から学びはじめているので、入試問題も同じく植物の問題を出題しています。私自身も中学1年生の最初の授業が植物の観察で、楽しく学ぶことができました。生徒にも本校で学ぶ最初の理科の学びではぜひ楽しいと思って前向きに取り組んでほしいと思っています。着任以来、中学1年生の理科は生物分野からはじめています。学校の教育方針が、入試問題にも反映されているということです。

今年は入試問題は会話文が多いという印象を受けました。

青鹿先生 会話文は出やすい傾向にありますね。大学の共通テストでも会話文の問題が増えていますし、先程、朝野も申していた通り、教員の実体験をもとに出題していることが多いので、問題のイメージを膨らませてもらうためにも、会話文形式で出題しています。

朝野先生 今年度のてこの問題は、会話文形式で出題されていますが、てこが苦手な方でも問題文をじっくり読むと正解を導き出せるものとなっています。会話文は問題の情景をイメージしやすいですよね。問題を解くための手がかりを問題文の中に入れていきたいと考えているので、そうした意図から、会話文は今後も出題されやすい傾向にあると思います。

恵泉女学園中学校 理科特別教室

恵泉女学園中学校 理科特別教室

インタビュー1/3

恵泉女学園中学校
恵泉女学園中学校1929年、第一次世界大戦を経験したクリスチャン・河井 道が、「広く世界に向かって心の開かれた女性を育てなければ戦争はなくならない」と考えて創立した。創立当初より聖書・国際・園芸を教育の柱に据え、生徒の知性・感性・社会性を育てている。この伝統は今に受け継がれ、様々な分野で活躍する女性を輩出し続けている。
現在の校舎は創立者の言葉を刻んだ「泉」のある中庭を囲んで配置され、木材を多用し、明るく広々とした雰囲気。また、HR教室24教室分の広さと9万冊の蔵書を誇るメディアセンターをはじめ、生徒の自立的学習を支援する施設が備えられている。
恵泉の朝は、25分間の礼拝から始まる。恵泉教育の特徴のひとつである「感話」は、日頃感じたり考えたりしたことをまとめたもので、礼拝の中で他の生徒の前で述べる。神との対話、理想とする生き方、友人とのトラブル、留学から学んだこと、哲学や芸術について……多感な時期に感話を書き、また聞き続けることで、誠実に人生に向き合うことを学ぶ。聖書や感話の中で語られる、人それぞれの生きる営み。様々な生き方を知り、「自分とは何者か」「自分はいかに生きるべきか」、思索を深めていく。
英語は少人数制と豊富な選択授業により、Reading, Writing, Listening, Speakingの4技能をバランスよく伸ばし、コミュニケーションツールとしての英語を身につけることを目標としている。中学生は英検各級の満点合格者が多数。5年生のGTECの平均点は959.2(全国平均793)で、海外進学を視野に入れられるレベルの生徒が約6割、6年生の17%が英検準1級を取得している。
多くの生徒がスポーツ系、文化系の21のクラブで活動している。茶道やオーケストラやサイエンス・アドベンチャーなどの課外活動では、専門の指導者による学年の枠をこえた授業を行っている。また、クラブ活動のほかに学校生活を豊かにするための委員会活動なども活発。