シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

恵泉女学園中学校

2024年08月掲載

恵泉女学園中学校【理科】

2024年 恵泉女学園中学校入試問題より

(問)下の図1は、茶葉の量に対する、味の変化を示したものです。横じくは湯200mLあたりの茶葉の量(g)、縦じくは味の強さを示した数値です。また、図2は湯の温度を変えた時のうまみとしぶみの味の変化を示したものです。この2つのグラフから言えることをまとめた次の文の空らん([A])、([B])には( )内の中から適語を選んで答えなさい。また、([C])には、下の(ア)〜(エ)の文章のうち、最も適したものを一つ選び、記号で答えなさい。

図1茶葉の量に対する味の変化

問題図2湯の温 度を変えた時のうまみとしぶみの味の変化

うまみ成分は茶葉の量が増えるにしたがって多くなるが、しぶみ成分はうまみ成分に比べて増え方が([A]多い・少ない・変わらない)。また、湯の温度が高くなるとうまみ成分は少なくなっていくのに対し、しぶみ成分は([B]多くなる・少なくなる・変わらない)。よって、しぶみが少ないようにして、うまみ成分をより味わうには、( [C] )。
  • (ア)茶葉の量を多くして、湯の温度を80°C以上にするとよい
  • (イ)茶葉の量を多くして、湯の温度を40°C以下にするとよい
  • (ウ)茶葉の量を少なくして、湯の温度を80°C以上にするとよい
  • (エ)茶葉の量を少なくして、湯の温度を40°C以下にするとよい

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この恵泉女学園中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答
  • [A]少ない
  • [B]多くなる
  • [C](イ)
解説

図1から、茶葉の量とうまみ、しぶみの関係を読み取ることができます。茶葉の量が多くなると、うまみも、しぶみもどちらも強くなっていきますが、グラフの傾きを比べると、しぶみの方がゆるやかになっています。このことから、茶葉の量を増やしていくと、しぶみの成分はうまみの成分に比べて増え方が少ないということがわかります。

図2から、湯の温度とうまみ、しぶみの関係を読み取ることができます。湯の温度が高くなると、うまみは40°Cくらいまでは弱くなっていき、その後はほぼ一定になっていますが、しぶみは強くなっていきます。このことから、湯の温度が高くなると、しぶみの成分は多くなることがわかります。

これらのことから、しぶみが少ないようにして、うまみ成分をより味わう方法を考えます。図1から、茶葉の量を増やしていくと、しぶみの成分はうまみの成分に比べて増え方が少ないため、茶葉の量を多くすればよいと考えることができます。図2から、湯の温度を40°C以下にしたときと、80°C以上にしたときを比べると、しぶみの成分は40°C以下にしたときの方が少なく、うまみの成分は40°C以下にしたときの方が多くなるため、湯の温度は40°C以下にするとよいと考えることができます。

日能研がこの問題を選んだ理由

お茶の淹れ方によって、うまみやしぶみがどのように変化していくのかをグラフから読み取っていきます。そして、しぶみが少なく、うまみ成分をより味わえるお茶の淹れ方について考えます。

子どもたちがお茶を飲むときは、家族に淹れてもらうことが多いかもしれませんが、中には自分で淹れる子もいるでしょう。ただそのときには、茶葉の量や湯の温度をどのくらいにしようか…と考えることは少ないかもしれません。それは、ひょっとすると、大人も同じかもしれません。問題のグラフを見ると、茶葉の量や湯の温度と味の関係について、さまざまなことが読み取れます。読み取ったことをもとに、実際にお茶を淹れてみて、味のちがいを比べてみたくもなってきます。

この問題に取り組むことによって、子どもたちは、普段飲んでいるお茶について、新たな興味や関心を持つことでしょう。「なぜ、湯の温度が高いと、うまみの成分は減っていくのだろう?」「茶葉の量は多ければ多いほど、おいしいのかな?」などなど。身の回りにあるものについて、新しい視点や疑問を持つことができて、実際にどうなるのかを自分で試してみたくなる!まさに科学の入り口となる問題といえるのではないでしょうか。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。