シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

日本大学藤沢中学校

2024年08月掲載

日本大学藤沢中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.中学校では基礎力を、高校では進路を見据えて力を伸ばす環境がある

インタビュー2/3

基本的な学習能力や知識の習得も大事

国語の入試問題を通して、受験生のどんな力を問いたいと考えていますか。

沼尻先生 大問1番は、基礎的な能力を確認する問題を用意しています。漢字や熟語、文法など、知識系の問いですね。こうした問題で、日常的な学習態度や、地道にコツコツ勉強する力が身についているかどうかを図りたいと考えています。

基本的な学習能力や知識が身についていないと、中学校、高校でさらに伸ばすということが難しくなります。それがわかっているので、ある一定の力が身についていることを問いたいというのが、その基礎的な確認の部分になります。

説明文の場合はできるだけ抽象度の高い文章を選んで、文章に書かれている言葉の中だけで物事を考えるという力を見たいと考えています。要は、説明されている言葉を、自分の中でどれだけ具体的に落とし込めるか、そういう力を問いたいということですね。
小説は逆に言うと、登場人物の立場に立って想像し、共感できる力を見たいと考えています。

教科主任に話を聞くと、(入試問題を通して特に)言葉の知識や論理的思考力を問いたいと話していました。使える言葉を身につけるには知的好奇心を持っていることが大事なので、そういうことも問題を通じて問いたいと考えています。論理的思考力は、それぞれの事柄がどんな関係性にあるのか、例えば対立関係にあるのか因果関係にあるのか、そういう関係を見抜く力を問いたい、とのことです。

日本大学藤沢中学校 図書室

日本大学藤沢中学校 図書室

入試の文章選びにもこだわりがある

説明文では、イメージしやすいものは避ける傾向にあるのですね。

沼尻先生 そうですね、題材によってはイメージしやすいものも当然あるとは思うのですが、例えば、抽象的な事柄をどれだけ具体化できるか、といった力を見たいので、あまりにも簡単にイメージできるものは選ばないようにしているということです。

素材文の選び方はとても難しいです。小学生の話題から離れすぎてしまうと、難しすぎて解けなくなってしまいます。小学生が理解できるレベルはどのあたりか、というところを探って、文章のレベルで判断しなければいけないと思っています。そこにはかなり注意を払って文章を選んでいるつもりです。

私1人でも100冊ぐらい読んでいます。なかなか見つからないので、本当に大変です。100冊読んでも、説明文で使えそうな文章は10冊にもなりません。これがいいなと思った題材の中で、一旦軽く全部作問をしてみて、作問に耐えられるようなところかどうかを判断し、2冊に絞って提示しています。同じように、担当の教員が同じような形で持ち寄った作品の中から選んでいます。

また、小学生が習う範囲内の出題と決めています。選択肢の中で、いわゆる重箱の隅をつつくような問題は出さないようにしています。きちんと考えて答えられる選択肢を用意しているということですね。また、難易度も偏らないようにしています。例えば、わざと簡単なもの、実行しなければいけないものも出しているつもりですので、入試の中でもこういう意図があるんだな、ということを、受験生に汲み取ってもらいながら解いてもらえたら幸せです。

日本大学藤沢中学校 図書室

日本大学藤沢中学校 図書室

中学時代は基礎力の習得に注力

国語の授業の特色を教えてください。

沼尻先生 中学生の場合は、基礎的な学力の育成を徹底しています。入学後から小テストを毎朝行います。今日は漢字、今日は英単語と、曜日によって変わるのですが、中学生のうちは短い範囲の中でコツコツ繰り返し練習して、覚えていくことを大切にしています。これを繰り返していくと、中3次に漢字検定の準2級レベルに、できる子は2級まで到達します。本校の中学の国語の目標としては、漢検でいえば中3次に準2級、2級を取得してほしいと考えて、中1次から徹底して練習しています。

要は漢字だけを覚えるのではなくて、文章の中のこういう場面で使われている漢字はこれだ、という認識で練習させているということになりますので、言葉を覚えるということに繋がると考えています。この言葉、漢字を覚えてくれないと、その先に繋がらないので、それをまず中1から徹底してやっていることが、特色の1つです。

私は今年、中学生の授業を担当しているのですが、考える力を養うというところで、いわゆるグループ学習、プレゼン学習に繋がるような形で、タブレットを使った授業を行っています。タブレットを白紙の画用紙に見立てて、フリップのように扱いながら、自分の言葉でまとめて説明する、という訓練を行っています。説明する力は、これから社会に出れば必要になるため、中学生のうちから取り組んでもらっています。中3までの中で言えば、さらにそれを論じる力に繋げていきます。ですから、解答が短いものだけではなく、場合によっては何十字のレベルで解答しなさい、という問題を出題しています。

現代文では精読力と速読力の両立を目指す

沼尻先生 高校に入学するとクラスにより差が出てきます。「総合進学クラス」「特別進学クラス」の2種類に分かれるのですが、クラスに関係なく、学年の成績上位者が、高校に進学すると通称「内進特進」と言われる日藤出身者だけの「特進クラス」に入って行きます。その子たちには国公立の上位校や早慶レベルに達する国語力を身につけてほしいので、そこに繋がるスピードで教育しています。国公立の2次試験を考えている子は、論述ができないと合格できないので、そのクラスの子たちには現代文では論述力と、難しい文章をどれだけ正確に読めるか、という精読力と速読力の両立を、現代文分野では目指してもらっています。

古典分野は大学入試が変わりつつあり、(対応が)難しくなってきています。従来の古文・漢文でいうと、古文は出題されますが、漢文は大学入学共通テストの出題が中心で、私立大学では出題されるケースがかなり減っています。漢文は文型を理解すれば、ある程度読めるようになるのですが、古文はただ単に読解しても面白くないので、日本の文化の大切さと絡めて教えています。例えば、今、大河ドラマで「光る君へ」を放送中ですが、ああいう世界観や、当時の女性文学の発達の仕方などに焦点を当てて、その時代と現在の時代の女性文学の違いを絡めながら授業を進めています。

日本大学藤沢中学校 進路指導室

日本大学藤沢中学校 進路指導室

日大の付属校から獣医学科を目指すなら日藤

今はどのくらい日本大学へ進学するのですか。

沼尻先生 学年の半分弱です。40%から50%の間を行ったり来たりしています。私は25年ぐらい前に本校に奉職したのですが、その当時は日大が70%を超えていました。少なくなった理由は、昔と比べて日大よりも難易度の高い大学に合格できる生徒が増えたからです。

日大の難関学部に進学する人数はどのくらいいますか。

池田先生 難関学部とは、基本的に獣医学科になります。日大の(生物資源科学部)獣医学科に行きたくて、中学受験で日藤に入学する生徒が一定数います。すべての付属校を対象に獣医学科の推薦枠が30名あまりしかない中で、本校からは10名ほど入っていて、ダントツなんです。ですから、日大の付属の中でも、確率は高いと言えます。隣の生物資源科学部への進学者数も、付属の中では一番多いです。本校は中学から高校へ、ほとんどが進学できますから、中学受験で本校に入学し、特進クラスに入って力をどんどん伸ばして、日大の基礎学力到達度テストで高得点を取れば、上から順に志望学科を選択できるような仕組みです。

総合進学クラスはかなり自由度が高くなります。日大に進学してもいいですし、日大以外の大学に進学してもいいですし。自分の希望に合わせて選択できます。ですから、専門学校や留学、スポーツ関係では選手として就職する子もいます。

中1から大学生と学内の畑で農作業

総合進学クラスも内部の試験を受けるのですか。

池田先生 そうです。そのための試験(基礎学力到達度テスト)が高2の4月、高3の4月、高3の9月に行われて、3回の総合成績で判断されます。本校は付属が26校ある中で、平均点がいつも5位以内に入っています。ですから、本校の生徒は、全国の付属の中でも上位に位置することは間違いありません。

沼尻先生 クラスによって学習内容を若干変えています。総合進学クラスには、一般受験を目指す生徒と最初から日大を目指す生徒が明確に分かれているので、それぞれの希望に応じてクラスを分けています。そうすることで一体感をもって勉強できますし、教える側も対策がしやすいのです。

指定校推薦で進学する生徒さんもいますか。

池田先生 今は指定校推薦の枠がものすごく増えています。難関大学からも枠をいただいていて、しかも1枠ではなく、複数の枠をいただいているところも少なくありません。難関大学からいただいている枠は100を超えます。

日藤の生徒は行事やクラブ活動などをものすごく一生懸命やっています。その中で勉強を両立し、高校生時代は高校生なりの楽しみ方をして大学に進学したい、という生徒は多く、最初から「日大に進学したい」と言っている子も当然います。その子たちが、大学でもよい成績を取っています。

むしろ大学で核になるような生徒さんを送り込んでいるということですね。

池田先生 そうですね。日藤中学出身の大学4年生が、大学で特待生になっていますので、本当にありがたいです。

日本大学藤沢中学校 農場

日本大学藤沢中学校 農場

インタビュー2/3

日本大学藤沢中学校
日本大学藤沢中学校日本大学生物資源科学部に隣接し、緑あふれる約115,412平米のキャンパスには、最新の教育施設を備えた新校舎をはじめ、各種の教育施設が設置され、私学として明るく創造性に富み、心身ともに健康で心豊かな人間の育成を目指した、質量ともに充実した教育環境を形成している。平成21年度より併設の中学校を設立し,付属高等学校・中学校の特性を活かし、大学・高校・中学校十か年一貫した展望とゆとりのある教育を実践されている。
先生方の指導はきめ細かく、放課後の補習など常に生徒の傍でサポートしている。進路指導においても、日本大学進学を希望する生徒は[全員進学]を目標とした受験指導を行い、日本大学以外の国公立・難関私大の受験など、進路の多様化に対応したクラスや講座も設けられている。
さらに、国際的素養を磨くため、カナダへの修学旅行やオーストラリアでの語学研修、英国ケンブリッジ大学への語学研修、優秀な留学生と学ぶ国内語学研修などを実施している。単なる語学修得だけでなく、真の国際人としての基礎を築いている。
フィールドワークへの積極的な取り組みも特徴的。たとえば、「食」について、農場での野菜の栽培や、ソーセージなどの食品加工も体験する。いずれも専門知識を持つ大学スタッフの指導のもとに、食品づくりのシステムや安全性を学び、大学の学習そのものを体験することで、大学進学への意欲を高める。生物資源科学部に隣接するメリットを生かしたプログラムだ。
運動部には高校19部・中学11部もの武道やスポーツのクラブ活動があり、全国制覇を狙う競いの場から趣味の活動を広げる場まで、それぞれの環境で同じ志を持つ仲間達と切磋琢磨して心と身体を鍛えることができる。中学では野球部などが活躍。高校の水泳やサッカー、ウエイトリフティング、女子ソフトテニスは関東・全国大会レベルだ。