今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
日本大学藤沢中学校
2024年08月掲載
2024年 日本大学藤沢中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
中学一年生のAさんが、夏休みに隣(となり)のS県に住んでいる祖母と映画に行くことにしました。待ち合わせ場所は祖母の最寄り駅S駅から一時間離(はな)れている、Aさんの最寄り駅のY駅にしました。【SNSでの事前のやりとり】と【Y駅のホーム】【当日の結果】を見て、あとの各問いに答えなさい。
【SNSでの事前のやりとり】
Aさん:「何時の電車で来る?」
祖母:「10時の電車で行くわね」
Aさん:「10時ね。駅のホームまで迎(むか)えに行くよ。どのあたりがいいかな?」
祖母:「ありがとう。わかりやすい所がいいね」
Aさん:「わかった。じゃあ階段の近くで待ってるよ」
祖母:「なるべく階段に近い所に着く号車に乗るね」
Aさん:「了解(りょうかい)。一緒に映画に行けるのを楽しみにしてるよ」
祖母:「私もよ。それではまた当日会いましょう」
【当日の結果】
- ◎Aさんは【Y駅のホーム】の「●」の場所に10時に行った。
- ◎祖母は【Y駅のホーム】の「▲」の場所に11時に着いた。
- ◎祖母は携帯(けいたい)電話を忘れてしまったので、当日は連絡(れんらく)手段がなかった。
- ◎Aさんは祖母がなかなか来なかったので祖母の携帯電話に何度も連絡した。しかし、既読(きどく)がつかなかったので祖母の携帯電話に連絡をとることをあきらめ、【SNSでの事前のやりとり】を読み返して祖母を探してまわり、最終的には「▲」の場所にいる祖母を見つけた。
(問1)なぜ祖母はY駅のホームに11時に来たのでしょうか。答えなさい。
(問2)祖母に【Y駅のホーム】の「●」の場所に来てもらうためには、【SNSでの事前のやりとり】でAさんのどの言葉をどのようにすべきだったでしょうか。答えなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この日本大学藤沢中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
(問1)祖母の「10時の電車」という発言は、Y駅への到着時間ではなくS駅からの出発時間だったから。
(問2)「階段の近くで待ってるよ」を「南階段の近くで待ってるよ」にすべきだった。
解説
(問1)
【SNSでの事前のやりとり】の初めにあるAさんの「何時の電車で来る?」という発言は、「何時の電車に乗る?」という意味なのか「何時の電車で到着する?」という意味なのか、いくつかの意味にとられてしまいます。祖母は、その発言を「何時の電車に乗る?」の意味にとらえたため、10時の電車に乗り、11時に着くことを想定して、「10時の電車で行くわね」と発言したと考えられます。
(問2)
Y駅には階段が「北階段」と「南階段」の2か所あるにもかかわらず、ただ「階段の近くで待ってるよ」としかAさんは説明しませんでした。その結果、Aさんと祖母は別々の階段でお互いを待つことになってしまったのです。したがって、どちらの階段で待っているのかをあらかじめ明確に伝えることで、このようなすれ違いが起こるのを避けることができると考えられます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
昨今、時代の変化とともにコミュニケーションツールが多様化し、それに伴いコミュニケーションの質も大きく変化してきたように思います。そうした中で、子どもの日常でも実際に起こり得るできごとを想定して、「自ら考える」ことの重要性を問う問題だと感じました。
世間でも話題になることが多いSNSを使った他者とのコミュニケーションは、中学校に進学した子どもたちにとって特に大きな関心事になると思われます。この問題のように親類や家族、友人とのやり取りがSNSを通じて行われることが増えてくるでしょう。そうした状況の中で、他者とのディスコミュニケーションが生まれることも経験するかもしれません。そのような状況に陥った時、自分はどう考えるのかだけでなく、他者の立場からの想像力をも働かせながら、現実に即した場面で「自分で考える」ことの大切さが表れている問題だと思いました。
また、問題における情報の提示の仕方にも工夫を感じました。【SNSでの事前のやりとり】【当日の結果】【Y駅のホーム】といったように複数の情報を組み合わせて考えていく力が求められます。さらに、【Y駅のホーム】は図で示したものであり、国語の問題でありながらも、活字ではない情報を取り入れ、多様な情報をどのようにとらえるのかを考えさせる問題です。
こうした多様な情報を扱っていく力は、現代社会を生きていくために必要な力であり、今後の教育で育成されるべき力であることを示唆しているように思えました。
以上のような要素が盛り込まれたこの問題は、日本大学藤沢中学校の教育理念である「自主創造」が反映されているものだと受け取ることができました。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。