シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜雙葉中学校

2024年06月掲載

横浜雙葉中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.理科の中心となる化学を軸に授業を展開

インタビュー3/3

理科の授業の特徴などについて教えてください。

白兼先生 本校では、中高の6年間で理科の力を十分に培ってほしいという願いがあります。中1・中2では実験観察の授業やデータを整理する授業などを数多く行い、中3・高1になると幅広く理科を体系的に学んでもらいます。高校4科目の基礎科目を勉強するわけですが、なかでも理科の科目の柱は化学であると位置づけています。

受験においては化学・生物で受験するか化学・物理で受験していくかに結局どちらかに分かれますので、まず化学が固まらないと生物か物理かも固まりません。そのため今年から高1の化学基礎の後半では2つのグループに分けることになりました。理系で化学を発展的に学びたいという生徒と、共通テスト向けには化学基礎だけで十分という生徒に分かれてきますので、それぞれの関心の深さに応じて学ぶことを期待してこのような試みもスタートさせました。

そして高2・高3ではより本格的に、大学でも通用する理科のレベルに引き上げていく構想で授業を行っています。学校によっては受験を意識し、全員理系化学を学ばせるという学校もあると思うのですが、生徒それぞれの進路があるわけで、その進路をサポートしようといった考え方を持って臨んでいます。

ですから、理系に進まない生徒たちにとって化学基礎だけでよいのであればそれだけで終えますし、理系化学が必要な生徒にはしっかり身に付けてもらいます。もちろん方向性が違っていたと思ったら戻れるようにもして、生徒の進路に合わせてサポートしていきます。このような方針が、本校の生徒たちの性格や学力を見てもマッチしているのではないかと思っています。

横浜雙葉中学校 校舎内

横浜雙葉中学校 校舎内

実験の授業では解剖も率先して行う

ちなみに女子校ならではの特色はありますか?

白兼先生 中2ではニワトリの心臓や牛の肺の解剖などをはじめとして、解剖の授業があります。男子がいないので、女子だけでやらざるを得ません。そのおかげで、誰もが解剖に取り組んでいます。最初は尻込みしていた生徒も友達が積極的にやっているのを見て「私もやりたい」となる。そのあたりは女子校ならではの良さに感じます。

先ほど、理科の先生は自分の専門分野以外の科目も教えるという話がありました。全分野を教えるとなると結構大変ですよね。

白兼先生 理科の専任教員は7名、非常勤の教員は3名います。高校分野は、それぞれの専門を教えますが、中学分野は4分野全部を教えています。お互いの専門分野の知識を共有しながら、授業を展開していますので、とても大変ですが、楽しみながらやっています。

そのような決断をされた経緯としてはどのようなことがあったのでしょうか?

白兼先生 本校の理科は中1・中2で中学の単元を学び、中3から高校の範囲を学んでいきますが、中1で理科を2つ、中2で2つといった形でやっていくと週に2コマ、つまり2時間しか理科の授業がありません。そんな中、生徒たちの様子を見てじっくりとある程度時間をかけて体験的な学びが必要ではないかというのが発端です。

週2コマだと学校行事で授業が飛んでしまったりすることも多く、学習したことが抜けてしまうことがよくあったため、ある程度の授業の固まりを作り、1つの分野を集中して習得するほうが意味のあることではないかと考えた結果です。

あとは新教育課程になり、期待される能力も知識だけではなく思考したり主体的に取り組んだりといったことが必要になったこともあると思います。

普段先生たちの間ではどのようなお話をしたりするのですか?

教科同士というよりは、教科主任の集まりの中で話をすることはあります。そのような場では盛り上がるというよりもむしろ頭を抱えることのほうが多いかもしれません。たとえば、評価をどのように出していくと良いのだろうか?といった問題にはさまざまな課題があります。

最近だと観点別評価をどう付けていくべきかという点には特に悩みますね。ひと言で観点別評価といっても、教科ごとに性質が違うので考えも違います。

たとえば体育における主体性と社会科における主体性は違うけれどどうすべきか?といったことが挙げられます。体育だと出席することを重視すべきだとなりますが、社会だと授業への参加もあるものの、日頃の学びや読書もあるのでは?となるわけです。この手の話を議論したりすることが教科主任の集まりだと多いです。

横浜雙葉中学校 理科室(生物室)

横浜雙葉中学校 理科室(生物室)

理科を通じて社会に役立つ知識や経験を身に着けてほしい

横浜雙葉の理科として、これからの時代に子どもたちにどのような力をつけてもらいたいといったものがあればお願いいたします。

白兼先生 理系に進む生徒たちばかりではありませんが、理科はいろいろな自然現象が説明され整理された結果や、法則・原理などから結論を見出していくという作業にほかなりません。そこで培った能力は、どの生徒にとっても社会に出た時には必要となるものですので、理科の授業を通じて吸収してもらいたいと思っています。

それと、現在は複雑な社会だからこそ複雑なまま受け止めることも大事にしてもらいたいという思いがあります。理科として原理原則を追求したり、それを冷静に見たり探求したりといった経験を、授業を通じて育んでもらいたいですね。

このような想いは生徒にどのようにして伝えているのですか?

白兼先生 それぞれ教科の先生たちが「今年はこれを大事にしよう」といった内容をシラバスの中で生徒に訴えたり、週に一回の放送朝礼の中では半分は生活指導や進路指導の話、残り半分は教科の先生たちが教科の立場から大事にしていきたいことを生徒に向かって語りかけたりします。

横浜雙葉中学校 校内

横浜雙葉中学校 校内

横浜雙葉なら自分の進むべき道を見つけられる

最後にこれから横浜雙葉中学校を目指す受験生に向けたメッセージをお願いします。

本校はキリスト教の学校ですが、一人一人意味があってここに生まれてきている存在であり、やるべき事柄もそれぞれ違っている大事な存在として親御さんからお預かりしていると考えています。生徒に対しては各自の能力がその人らしく育つように、またその後能力が開花していくように、さらには自分の進むべき道を見出していけるようにする。それが学校の基本的な方針となります。

そういう学校の良さを感じてもらえばうれしいです。特に中学生の段階では、すべての科目において実際に起こっている出来事を通じて考えてもらうことをどの科目でも大事にしたいと思っています。

インタビュー3/3

横浜雙葉中学校
横浜雙葉中学校1872(明治5)年、創始者である幼きイエス会のマザー・マチルドが来日、横浜で教育活動を開始した。1900年に横浜紅蘭女学校を開校。その後、1951(昭和26)年に雙葉、1958年に横浜雙葉と校名を変更して現在に至る。2000(平成12)年には創立100周年を迎えた。
「徳においては純真に 義務においては堅実に」を校訓に、一人ひとりが自分を積極的に表現し、他の人と心を開いてかかわり、能力や資質を磨いて社会に役立てようとする「開かれた人」の育成を心がける。そのために「開かれた学校」を目指し、21世紀をたくましく生きるための知性と精神を伸ばす教育が行われている。
横浜港を見下ろす中区山手町のなかでも、最も異国情緒あふれる一角に位置する。隣接の修道院跡地に、聖堂・視聴覚室などを備えた高校校舎と特別教室があるが、2003年には図書館やITワークショップなど、最新の情報技術やグローバル教育に対応した新校舎が完成。
45分×7時間授業で、主要教科は、男子の難関進学校なみに内容が濃く、進度が速い。特に英語はテキストの『プログレス』を軸に、中1から少人数の週6時間の授業や、外国人教師による英会話の授業など、非常に意欲的。数学は中1から数量と図形に分ける。中3から英・数は習熟度別編成となる。2期制なので、1年間は42週と公立中学の3学期制・35週より多い。定期テストは年4回だが、「小テスト」は随時各教科で行い、進度が遅れぎみの生徒には指名による補習も行う。高2から文系・理系に分かれ、幅広い選択制で進路に柔軟に対応。毎年東大に合格者を出すほか、難関私大にも多数の合格者を出している。医療系への進学者が多い。中3~高2の希望者にフランス語講座がある。
学校週5日制。年間を通じて朝の祈りやさまざまなミサ、講演会などといった宗教行事も多い。文化祭をはじめ多くの活動が、運営される生徒会を中心に計画される。クラブ活動は、文化部が20、運動部5のほか、聖歌隊、ボランティアを行うTHE EYESという団体がある。テニス部、新聞部は全国大会にも出場する実績を誇る。しつけに厳しいといわれるが、教師たちは服装や持ち物検査は行わず、生徒たちが自分でけじめをつけて行動するよう求める。制服はジャンパースカート。2002年から夏の準制服が登場。ブラウスは白と青、スカートは紺とチェックの2タイプずつで、組み合わせ自在。2023年からは、スラックスも導入され、動きやすいと生徒にも好評。中3から高2の希望者が韓国、シンガポール、マレーシア、アメリカ、オーストラリアなどを訪れ交流するプログラムが続けられている。