出題校にインタビュー!
横浜雙葉中学校
2024年06月掲載
横浜雙葉中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.太陽の動きや地球の自転について考えてもらう問題
インタビュー1/3
まず質問の出題意図について教えてください。
白兼先生 太陽の動きに関する問いは理科の問題としてはよくある基本的な内容ですが、この問題に関しては少し難しめの問題となっています。一般的には太陽は東から昇って南を通って西に沈むと覚えていると思いますが、実際そのように見えるのはどうしてだろうか?そのことについて考えてもらいたい、また考える問題にしてみよう、ということから出題にいたりました。
あえてあまりなじみがない北極点に立った時に、どんな影の動きになるかを考えることで改めて太陽の動きや地球の自転との関係について考えてもらう問題です。
正答率は50%ほどで、予想よりはよくできていました。
結構子どもたちも悩んだのではないかと思います。ただ、もう少し正答率は高いかなと思っていたので50%ぐらいというのは少し意外でした。
ちなみにこの問題はどのような力を持っている子が正解したとお考えですか?またどんな力を見ようとして出題されたのでしょうか?
白兼先生 太陽の動きとしては「こう動く」ということ自体は知っているものの、北極点といった見慣れない場所での動きを想像し、頭の中でその現象を作り出すことができるかどうかが正解・不正解の分かれ目だったと思います。
理科のなかでも特に物理や化学は、現象を頭の中でイメージできるかどうかがとても大事です。そうした力が小学生ならではの体験の中でも培われているかどうかを見たい問題でした。なおこの問題における図や説明は、必要最小限の情報を受験生に提供するように注意して作問を行っています。
白兼先生
教員でも悩んでしまうレベルの問題
間違えた生徒の回答で多かったのはどの選択肢でしたか?
白兼先生 最も誤答で多かったのは(ア)でした。こちらとしては(ウ)か(エ)ではないかと思っていたので、どうして(ア)が多かったかについて推測することは難しいのですが、意外に(ア)が多かったのには驚きました。おそらく自分の頭の上に太陽が来るように思った結果、東から西に動いているものを単純にあてはめたのかもしれませんね。
南半球における太陽の動きは結構出てくると思いますが、北極点の太陽の動きについてはあまり勉強しないところです。ましてや影の動きとなると、子どもたちも悩みながら想像していろいろ考えたのではないかと思います。
1つ前の問題の答えが白夜でしたが、そちらは80%ぐらい正答率がありましたのでこの問題のほうが正答率は低かったです。多分社会科でも白夜を習うから知識として知っていたのだと思います。
影は時計周りに動き、そして太陽は反時計周りに動くわけですよね。これってどこから見るかでも変わっってしまうので、そこが一番混乱する部分だと思います。見上げるのか、それとも高いところから見下ろすのかによって回転方向が真逆になってしまうので、なんとなくのイメージで解こうとすると逆回りにしてしまいがちです。
白兼先生 理科の教員の間でも「これどうなるんだろう?」とかなり悩みながら作問していました。天体は苦手な子も多いので、こういう問題をきっかけに「天体って面白いかも」と思ってもらえるとうれしい限りです。
横浜雙葉中学校 校舎
単元にフォーカスした授業を展開
普段の理科の授業でどのように天体を教えているのですか?
白兼先生 本校では中1生は化学を学んだのちに地学を学んでいきます。半年間ずっと地学だけを学ぶといった具合に、ひとつの単元にフォーカスして学んでいく体制を取っているため、時間数もしっかり取って学習できる機会を提供しています。そのため実験なども多く行うことができ、体験を通して理解を深めてもらっています。
実際に手を動かしてみたり見に行ったりすることができないような内容に関しては、動画を活用するような授業もされるのですか?
白兼先生 そうですね。コロナ禍では教員が動画を作成し、配信を行って生徒に見てもらうなど行っていました。教科書の内容は動画で学習してもらい、学校に来るようになってからはその内容を確かめるために実験を行ったりするような授業をしていましたね。
現在でも実験結果の写真を撮影し、自宅に帰ってからそれをレポートにまとめたのちに提出してもらうようなことは行っています。
生徒が行う実験結果を題材として入試問題を作成することも
実験結果に関する入試問題は、過去に出題されていますね。今回も大問4のように、実際の授業で大切にされているデータを整理してわかることを考える出題にされていました。
白兼先生 確かに、実験を題材にしたテーマは入試問題にも表れることがあります。去年の入試問題では電気回路に関する問題で、さまざまな電圧や電流の結果を並べ整理して答えを導いていくものが出題されました。生徒たちが勉強して実験した結果など、実際に授業で行われている内容に近い入試問題を出題することもあります。
本校では、中1・中2の理科授業で、実験実習の機会を多く設け、様々な現象に実際に触れることを大切にしています。高2から進路に合わせた授業を選択することができるため、理科を深く学び続けるかどうかは高1の終わりに決める必要があります。そこで、中3からは学習レベルをあげて概念を幅広く理解してもらう授業になっています。そして高2・高3になると受験対策だけではなく、大学でのさまざまな学問にも対応できるような能力まで育くんでもらえるような授業を行っています。
たとえば高校2年生では「ジグソー法」といった学習方法を用いて、学習単元の中で担当者を決めて勉強してもらい、お互いが紹介し合いながら一つの単元の学習を整理していく授業も行っています。
横浜雙葉中学校 図書館
最近は理系を目指す生徒が増えてきている傾向も
理系を目指す生徒は多いですか?
白兼先生 年度によるので、一概に理系を目指す生徒が多いと言い切ることは難しいですが、増えてきているとは思います。今年の高校3年生は理系が多く、その下の2年生は文系が多いです。特に理系教育を重視しているというわけではなく文系理系どの教科も大切にしてほしいと本校では思っていますが、比較的理系に関してもしっかり学んでいこうとする生徒たちがいることはとても嬉しいですね。
理科の場合には物理・化学・生物・地学で分かれているものの、中1で最初化学だけを集中して学ぶ時には生物や物理の教員が化学を教えることもあります。他科目の先生が化学の単元を把握し共有しながら学年で同じ授業を展開していくなど、科目を超えて理科の授業を作っていくような取り組みも行われています。
教科を超えた授業としては国語についても行われています。たとえば、中学1年生で扱う宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の中で、不思議なきらめきとか瞬きなどと表現されている部分がありますが、そこで表現される現象について講師の先生を招いてお話しいただいたりしました。
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