シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

横浜雙葉中学校

2024年06月掲載

横浜雙葉中学校【理科】

2024年 横浜雙葉中学校入試問題より

図1は北半球で夏至を迎(むか)えた日の、地球と太陽の関係を表しています。点A、B、Cは北極点と南極点を通る同じ円周上の地点で、点Bは赤道上に位置します。図中の灰色にぬられた部分は太陽の光が当たっていないところを表しています。後の問いに答えなさい。

問題図1

(問)図1より、1日を通して太陽が沈(しず)まない地域があることがわかります。
北半球で夏至を迎えた日に、図2のように北極点の水平な地面に垂直に立てた棒(ぼう)の影(かげ)の先端(せんたん)はどのような図形を描(えが)きますか。棒の影の先端が動く向きと描く図形の形の特徴(とくちょう)をもっとも正しく表しているものを、(ア)〜(エ)から1つ選び、記号で答えなさい。ただし、図は棒を上から見下ろした向きで描かれ、矢印の向きは棒の影の先端が動く向きを表しています。

問題図2

(ア)1日かけて、棒を通る一直線上を左右に1往復する。

問(ア)

(イ)太陽は1日を通して棒の真上に位置するので、影はできない。

問(イ)

(ウ)1日かけて、棒のまわりを反時計回りにほぼ円を描く。

問(ウ)

(エ)1日かけて、棒のまわりを時計回りにほぼ円を描く。

問(エ)

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この横浜雙葉中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(エ)

解説

地球は、地軸を中心にコマのように回転(自転)していて、1日で360度自転します。図1から、北極点では地球が360度自転する間は、いつも太陽の光が当たっていることがわかります。このことから、夏至の日の北極点は、1日中太陽が沈まない白夜であることがわかります。

次に、自分が北極点に立っていると仮定して太陽の動きを考えていきます。1日の中で太陽が動いて見えるのは、地球が自転しているためです。北極点に立っているとすると、地球の自転によって太陽は反時計回りに動いていくように見えます。

また、北極点に立っていると、地球が自転しても北極点の位置は自転とともに移動することはないので、地平線に対する太陽の傾きは変化しません。そのため、太陽の見える方向が変わっても、地平線からの太陽の高さはいつも同じになります。太陽の高さが同じであれば、影の長さは一定になるので、(ウ)か(エ)の選択肢のようになると考えられます。太陽は北極点から見て反時計回りに動いて見えるので、太陽の光が当たってできた影は時計回りに動いていくと考えられます。よって、(エ)の選択肢のようになると考えられます。

日能研がこの問題を選んだ理由

日本で太陽の動きを調べると、どの季節でも、東の方からのぼって、南の空を通り、西の方へ沈んでいきます。しかし、世界の中には、「太陽が1日を通して沈まない白夜」や「太陽が1日を通してのぼらない極夜」がある地域もあります。この問題ではそのような特殊な地域にある、北極点での状況について考えていきます。

北極点では、地面に垂直に立てた棒の影の先端はどのように動くのでしょうか。棒の影ができるのは、太陽の光が当たるときです。ということは、影の動きを推測するためには、太陽の動きを推測する必要があります。問題には、北半球で夏至を迎えた日の地球に太陽の光が当たるようすや、地球が回転する向きが示されているので、図をもとに太陽の動きを推測することができます。そして、棒から見て太陽と反対の方向に影ができること、太陽の高さによって影の長さが変化することなど、これまでに学んだことがらの中から必要なものを選び、北極点での影の動くようすを筋道立てて考えていきます。

子どもたちはこの問題に取り組む過程で、実際にその場に行って観測しなくても、示された情報と知識をもとにして、未知の状況について筋道立てて推測することができる、という体験をしていきます。

このような理由から日能研では、この問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。