シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

普連土学園中学校

2024年06月掲載

普連土学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.先生の興味や得意なことを講座という形で主催する「教養講座」がおもしろい

インタビュー2/3

記述の採点ではニュアンスを汲み取ってあげたい

記述問題はいかがですか。

冨澤先生 できれば自分で読み取ってほしい、という思いが、私が本校に赴任したころからありました。単語を抜き出して、つなげて文章にするというより、自分の言葉で書いてくれた解答のほうが、読み取れているな、という印象を受けます。

大井先生 あまり字数制限を設けていないので、私たちが発表する解答は短い文ですが、実際はたくさん書いている受験生が多いです。

冨澤先生 3行くらい、100字超えで書いてくれる受験生もいますよね。ただ、長さは関係ありません。短い文でも答えてほしいエッセンスが入っていれば正解にします。

冨澤先生 記述問題は、どうしても採点に時間がかかります。どこまで正解にするか、というところで、一旦採点を止めて議論することも珍しくありません。

大井先生 そういう意味では丁寧です。受験生の解答の意味や意図をできるかぎり汲み取ろうという姿勢で採点しています。

冨澤先生 そうですね。ここまで書いているということは、ここまではわかっているのだろうという……。言葉のニュアンスを汲み取ってあげたい、という気持ちで採点しています。最近、誤答で多いのは、小説で主語の人物が違う、ということです。読み取りはできていてストーリーはわかっているのですが、急いで読んでいるからか、人物の関係性を見ていないのです。そのため、解答する時に「誰が」を間違えてしまうということがよくあります。

普連土学園中学校 生徒作品

普連土学園中学校 生徒作品

文章で答えるときは完結させることが大切

記述問題に部分点はありますか。

冨澤先生 あります。ただ、文章が完結していることが絶対条件になります。

大井先生 文章が途中で終わってしまうと、文末が肯定なのか否定なのかわからないので、短くてもいいから、とにかく最後まで書くということをご指導いただけるとありがたいです。採点する際に、こちらが想定しているいくつかの要素のうち、1つでも書かれていれば点数になりますから。

冨澤先生 主語を明らかにして文を完結させる。その上でどこまで書けているか、というところで、私たちのほうで要素を抽出するということです。

大井先生 表現というか、書こうとする意思がある受験生は合格できると思います。

プレゼンでもそうですよね。最後までしっかり伝えることは大事です。

普連土学園中学校 教室

普連土学園中学校 教室

入試でも楽しんでもらいたい

作問はどのように行っていますか。

冨澤先生 問題を持ち寄ってコンペのようなことをします。広報の先生にも、一度、全然違う立場で見てもらうんですよ。

池田先生 私も言葉の問題を毎回楽しみにしています。自分でも少し解けるぞ、という問題なので(笑)。理科や算数も事前に見るのですが、私は英語、つまり文系なので、日本語の確認や問題の意図が伝わるか、といった程度で終わってしまいます。問題を解くところまではなかなか手が出ないのですが、国語は本気で考えながら確認できるので面白いのです。

(広報としては)説明しなければいけないですからね。

池田先生 そうなんですよ。受験生は緊張して問題を解いているので、その中で(言葉の問題によって)少しでも楽しんでもらえる時間ができると嬉しいな、と思いながら、私は外から見ています。難しい問題も、クイズっぽい要素というのでしょうか。小学生がいろいろ考えて頭の中で言ってみるような、そんな時間になっていたら面白いですよね。

先生は個人経営者のように自分の授業に専心

では、授業に話を進めていきたいと思います。先生方が考える普連土学園の授業の特色を教えてください。

冨澤先生 授業はそれぞれの教員がそれぞれのポリシーで行っています。1学年3クラスと少ないので、基本的に1人で1学年を担当します。その学年をどういう方針で授業を進めていくかは、担当の教員に任されています。大切にしているのは、生徒が6年間かけていろいろな視点に触れることです。アプローチによって着眼点が変わることから、同じ教員が何年か持ち上がることはありますが、1つの学年にずっと入り続けることはありません。最大で3年ぐらいです。生徒は複数の教員とかかわることによって、いろいろなものの見方に触れて、学ぶことになるので、自分の着眼点のあり方をもって送り出すことはできていると思います。

大井先生 個性的な教員が多いので、偏りが出ないようにしなければいけないですし……。

冨澤先生 生徒の合う、合わないもあるじゃないですか。先生が変わると急に成績が伸びる生徒もいますから……。教員にとっては自分のやり方で授業がしやすい環境になっていて、生徒はそれを見極めるというか。

大井先生 豊かな出会いを演出しています(笑)。

冨澤先生 国語科としては、シラバスを作る時に、今年、この学年で何をやるか、ということを共有しています。1年後に振り返りを行い、国語科で共有して、次年度はさらにより良いものを目指していきましょう、と確認しています。また、学年の引き継ぎでは、専任だけでなく非常勤の先生も含めて、情報の共有を行っていますので、引き継ぎで言われたことと、自分が考えていたことをすり合わせてバージョンアップを目指していく、ということですね。

大井先生 チェーン店のようにどの店へ行っても同じような雰囲気やサービスを味わえる、という授業ではありません。個性あふれる街の喫茶店が並んでいて、入ってみたらここは居心地がいいなとか、ここはちょっと落ち着かないなとか。味わいがあるなとか。生徒自身が感じてくれればいい、というスタンスなので、教員は自分の店を任されている感覚で、楽しく、意欲的に授業に取り組んでいると思います。

普連土学園中学校 図書館

普連土学園中学校 図書館

少人数の授業でも同じ熱量で生徒と向き合う

冨澤先生 国語科では高校生の最後のところでは習熟度別になる授業もあります。そこで共通問題を出すにあたり、同じ教材なのにそれぞれにこう出したいというものがあるのです。平準化すると問題がつまらなくなるので、習熟度別でもクラスごとの問題を出します。

大井先生 基本的に1学年を1人で担当します。高校生で学年が上がっていきますと習熟度別に分けたり、選択授業では10数人という授業も最後はあります。1学年対象の試験であっても、10数人対象の試験であっても、同じように試験を行います。高2、高3では、受講者が1人でも成立する場合があります。

冨澤先生 昨年度は、「古典講読」という受験対策ではない、古文を楽しむ講座の受講生は1人でした。そもそもそれほど多くの生徒が選択しないと思っていた授業でしたが、今年、受講者が増えたんです。昨年受講した生徒が担当教員とのマンツーマンの授業が楽しかったようで、下の学年にその楽しさが伝わったようなのです。7人に増えると、それはそれで難しいというか、新たな課題が生まれました。古文がものすごく得意な子から苦手な子までいて、担当教員はどこに焦点を合わせるか、というところで悩んでいました。そこで生徒に、どこに興味があるのかを聞いて、その声を参考に授業で扱う教材を選んでいく、ということをしています。その講座で唯一決まっているのは、泉岳寺が近いので、赤穂浪士のあの時期に文学散歩に行く、ということです。毎年、線香をあげて帰ってきます。

普連土学園中学校 図書館

普連土学園中学校 図書館

先生が教科の枠を超えて自由に主催する「教養講座」

それはいいですね。文学散歩のように、国語科で実施している行事はありますか。

冨澤先生 文学散歩に行けるのは2時間続きの授業時間に、徒歩で往復できる距離に泉岳寺があるからなんです。ですから他に行っているものはありませんが、強いていえば学年にお願いして歌舞伎や能、文楽などを観に行ってもらっています。

大井先生 「教養講座」ではいろいろなところに行っていると思います。

教養講座とは?

池田先生 春休みと夏休みに教員が好きな講座を作ることができます。それを「教養講座」と呼んでいます。国語科の教員の中にも、プログラミングを用いた工作系の授業をしている人がいます。春休み、夏休みは見学系の講座が多いです。

冨澤先生 そのプログラミングの講座をやっている教員が、2月2日の言葉の問題(ファミコン言葉)を作問した教員です。

そうなんですか。多彩ですね。

大井先生 美術館に行ったり、文学散歩をしたり、3Dプリンターでものを作ったり……。

教養講座は多岐にわたるのですね。全部先生方が実施しているのですか。

池田先生 時々ゲストをお呼びして、何かをやっていただくことも時々ありますが、基本的には本校の教員が主催しています。

インタビュー2/3

普連土学園中学校
普連土学園中学校1887(明治20)年、キリスト教フレンド派(クエーカー)に属する米国フィラデルフィアの婦人伝道会により創設。当時米国留学中の新渡戸稲造の助言によるもので、「普連土」の漢字は「普(あまね)く世界の土地に連なる」という意味を込め、津田梅子の父・津田仙によりあてられた。
生徒一人ひとりにある「内なる光」を導き出し、育てることを教育目標とする。毎朝20分の全校礼拝や週に1回の「沈黙の礼拝」は、自らの“内なる光”に気づく機会でもある。また、フレンド派の創始者ジョージ・フォックスの言葉「Let Your Lives Speak」をモットーに、創立当初から少人数制主義を守り、1学年3クラスの規模とし、生徒の特性と個性を理解した教育を実践。全員参加の自治会活動を行うなど、広い意味での奉仕の精神と国際性の涵養にも力を入れている。伝統ある「小さな名門校」でファンも多い。
学園内に木々や草花が植えられ、都心とは思えないほど静か。赤い屋根、広いベランダが人気の校舎はモダンだが、机と椅子と床は木製で、自然のぬくもりを大切にしている。視聴覚設備を完備した音楽教室、蔵書3万冊の図書館、講堂など、施設は十分。
基礎をていねいに身につける面倒見の良いカリキュラムが特徴。英語は中1から週6時間。うち2時間の英会話はクラスを3分割し、外国人教師による指導が行われる。中3~高3の英語、高1~高3の数学、高2の化学、高3の古文では習熟度別授業を実施。中3英・数・国の補習が夏休みにあるほか、高校では大学入試対策を中心とした補習が放課後や長期休暇中に行われる。中3の夏休みには興味ある職業について内容を調べ、在校生の保護者の職場を実際に取材してレポートを作成する。高2から選択授業を豊富に取り入れ、高3では演習が増え、40%近い理系進学をはじめ幅広い進路に対応。大学合格実績では堅実な成績を収めている。
生徒同士の交流は家庭的な雰囲気であり、学校生活、クラブ活動においても温かな空気が流れている。クリスマス礼拝、収穫感謝礼拝など宗教行事のほか、ネイティブスピーカーの先生や留学生と英語で対話をしながら昼食をとる週1回のイングリッシュ・ランチ、白樺湖でのイングリッシュ・キャンプなど英語を楽しく学べる行事が多い。高1・高2の希望者が参加するジョージ・フォックス・ツアーはフレンド派の原点をたどるイギリス研修旅行。学校にはフレンド派に属する世界の識者や有名人が毎年のように訪れ、生徒たちと語り合う機会も多い。生徒会はじめ14の委員会があり、生徒はいずれかに全員参加。クラブは中高合わせて文化系が12、体育系が9ある。