シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

自修館中等教育学校

2024年05月掲載

自修館中等教育学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.なぜ、こうしたルールがあるのかを、自分なりに深く考える意識をもとう

インタビュー3/3

中学生のうちに高次の問いを立てる力を育てたい

貴校はかなり早くから探究論文に取り組んでいましたが、先駆的にチャレンジできる土壌があるのでしょうか。

大藤先生 そうですね。探究は今でこそ広く知られていますが、本校ではかなり前から取り組んでいました。探究のサイクルを回していく、というやり方を学内にしっかり定着させることと、探究の授業だけでなく、教科の授業のなかで、問いをきちんと立てるなど、学びを探究的にしていこうということで、今少しずつチャレンジしているところです。

道村先生 社会科を学んでいくなかで、いろいろな疑問が湧くと思います。その疑問には、簡単に答えられる疑問と、正解は1つではない疑問、あるいは因果関係を考えなければいけない疑問など、問いにもレベルがあって、そのレベルをできるだけ高次なものにしていきたいと考えています。

前期生の最初のころは、疑問と言っても、すぐに答えられるようなものが多いと思います。例えば「本能寺の変は何年ですか」というような、答えは1つで、調べれば出てくる問いなのですが、そのうちに「この時、織田信長はどのようなことを考えていたのだろうか」「織田信長はなぜ安土城をここに作ったのだろうか」「あなたが織田信長だったらどこに城を作る?」といった、高次の問いが出てくるように、引き上げていきたいと考えています。そこで、単元ごとに考えられる問いを出してもらい、いろいろな問いのなかからピックアップして、「こういう問いを求めているんだよ」と、示しています。後期生になったら、自分で探究できるようになってほしいので、前期生のうちにレベルの高い問いを立てる力を育てることが重要であると考えています。

自修館中等教育学校 掲示物

自修館中等教育学校 掲示物

社会科で企画する社会的な体験がおもしろい

社会科がかかわっている行事はありますか。

大藤先生 「土曜セミナー」があります。昔は土曜日に授業がなかったので、他校さんではできない体験をする、ということで始まりました。いろいろなものを作ったり、社会的な活動に参加したりしていたのですが、今は半日授業があるので、土曜日だけではできないことが増えています。そこで、初夏休みや秋休みなどを利用して社会的な体験をさせるために、社会科の先生が関わって企画を立てています。例えば、横浜の歴史的な建造物を訪ねたり、裁判を傍聴したり。エンタメ的なところではカップヌードルミュージアムに行きました。

自由参加ですか。

大藤先生 そうです。中1から高3まで、全学年を対象としています。

参加者はどのくらいいますか。

大藤先生 各回とも概ね10~15名くらいです。行き先は神奈川県内が中心です。時々、東京や埼玉あたりに行くこともあります。だいたいが現地集合、現地解散ですが、地下神殿として人気の首都圏外郭放水路(埼玉県)に行った時は、スクールバスで行きました。

道村先生 かつては探究でも、ゼミ単位で出かけていました。コロナ禍でそれが難しくなっていましたが、これから段々と元の形に戻そうとしています。

今後、生徒さんと行ってみたいところはありますか。

道村先生 米軍基地や自衛隊基地などに行ってみたいです。

大藤先生 外部で実施している企画に申し込むこともよくあります。以前、森林の伐採ボランティアに参加しました。一般の方がたくさんいらっしゃるので、中学生が行くと、おじいさん、おばあさんに可愛がってもらえます。

自修館中等教育学校 「土曜セミナー」

自修館中等教育学校 「土曜セミナー」

当たり前を疑う目や、考え方を身につけよう

最後に、小学生に向けてアドバイスをお願いします。

道村先生 日常のなかで、社会とのつながりを意識してほしいですね。例えば、学校へ行く前に朝の情報番組などでニュースを見て、ふと気になったニュースがあれば、こんなニュースあったんだ、で終わりにするのではなく、その原因や解決方法を自分なりに考えてみるとおもしろいと思います。例えば、多数決は常に正しいのか。そういうことを、日常的に考えることを楽しんでほしいのです。

本校には「学校生活の約束」というものがあって、今年もいろいろなルールが変わりました。その前段階で、公民の授業のなかでもそういうことを考えさせました。なぜ、こうしたルールがあるのか。今の時代に合わないものはあるか。そういう観点で見ていくと、いくつか出てきました。当たり前だと思っていることを、疑ってみる、考えてみる、という姿勢をもつ子どもたちが入学してくれたら嬉しいです。

自修館中等教育学校 校舎内

自修館中等教育学校 校舎内

インタビュー3/3

自修館中等教育学校
自修館中等教育学校スクールバスにて小田急線愛甲石田駅より約5分、JR東海道線平塚駅より約25分。目の前には緑多い大山と丹沢の山々があり、恵まれた自然環境。校舎は、5階建ての普通教室棟と特別教室棟からなり、図書館、PC教室、自習室などを備え、高度情報化社会に対応したつくり。体育館や屋上にプールを備えたアリーナ棟もある。学校食堂の枠を超えたレストラン、カフェテリアも好評。
建学の精神「明知・徳義・壮健」の資質を磨き、実行力のある優れた人材を輩出し人間教育の発揚を目指す。そのため、学力とともに、「生きる力」を育成するテーマ学習や心の知性を高めるEQ教育などユニークな取り組みを実践。教育を“こころの学校作り”ととらえ、学校を想い出に感じ、帰れる場所に、と家庭とも連携を保ちながら、きめ細かい指導にあたっている。
中1~中3を「前期課程」、高1~高3を「後期課程」とした、高校募集のない完全中高一貫の体制。3カ月を一区切りとする4学期制で、メリハリをつけて効果的に学習を進めている。英・数は高2から習熟度別授業を実施。英語の副教材には、『ニュートレジャー』を使用。興味のあるテーマを選んで継続して調査・研究を行う「探究」の授業もある。指名制の補習と希望制の講座がさかんに行われている。また個別指導が多いのも特徴。
週6日制だが、土曜日の午後は自由参加の土曜セミナーを開講。「遺伝子組み換え」「古文書解読」「伊勢原探訪」など生徒対象のものだけでなく、保護者対象の講座も多数用意している。「探究」以外でも心の知性を高める「EQ」理論に基づいた心のトレーニング「セルフサイエンス」や、国際理解教育など、特色ある教育を展開。中1のオリエンテーション、山歩きに挑戦する丹沢クライム、芸術鑑賞会などの行事がある。文化部9、運動部10のクラブ活動も活発。「探究」の一環として、高2でオーストラリアでの海外フィールドワークが行われる。