シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

光英VERITAS中学校

2024年05月掲載

光英VERITAS中学校【算数】

2024年 光英VERITAS中学校入試問題より

(問)「4月1日」は401、「10月15日」は1015のように、日付を3けたまたは4けたの数で表します。「●月▲日の★日後」を表す数が、「●月▲日」を表す数の3倍になるとき、★に当てはまる数は何通りありますか。ただし、★に当てはまる数は365以下の整数とします。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この光英VERITAS中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

40通り

解説

まず、問題文にある日付で試しながら、構造をさぐってみます。

  • 「4月1日」を表す数は401なので、その3倍は401×3=1203です。これは「12月3日」を表す数なので、★は「12月3日が4月1日の何日後かを表す数」になります。
  • 「10月15日」を表す数は1015なので、その3倍は1015×3=3045です。この数を日付に直すなら「30月45日」ですが、そのような日付は存在しません。つまり、★に当てはまる数はありません。

このように試してみると、3倍した数が表す日付がある場合とない場合があることがわかります。3倍した数が表す日付がある場合の条件を、さらに試しながら探っていきます。

例えば、「●月1日」で探っていくと……

  • 「1月1日」は101で、これを3倍した101×3=303は、「3月3日」を表す数です。
  • 「2月1日」は201で、これを3倍した201×3=603は、「6月3日」を表す数です。
  • 「3月1日」は301で、これを3倍した301×3=903は、「9月3日」を表す数です。
  • 「4月1日」は401で、これを3倍した401×3=1203は、「12月3日」を表す数です。
  • 「5月1日」は501で、これを3倍した501×3=1503を日付に直すなら「15月3日」になりますが、そのような日付は存在しません。

例えば、「4月▲日」で探っていくと……

  • 「4月2日」は402で、これを3倍した402×3=1206は、「12月6日」を表す数です。
  • 「4月3日」は403で、これを3倍した403×3=1209は、「12月9日」を表す数です。
  • 「4月4日」は404で、これを3倍した404×3=1212は、「12月12日」を表す数です。

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  • 「4月10日」は410で、これを3倍した410×3=1230は、「12月30日」を表す数です。
  • 「4月11日」は411で、これを3倍した411×3=1233を日付に直すなら「12月33日」になりますが、そのような日付は存在しません。

このように、いくつか試しながら条件を探っていくと、「●月▲日」を表す数の3倍が「□月◇日」を表す数のとき、以下のことがわかります。

  • ①1月から12月まであるので、□に入る数は最大でも12となり、必ず□は●の3倍になる(※)ため、●に入る数は最大でも12÷3=4とわかります。
  • ②1日から31日まであるので、◇に入る数は最大でも31となり、必ず◇は▲の3倍になる(※)ため、▲に入る数は最大でも31÷3=10余り1より10とわかります。
    (※)31×3=93が100より小さいことから、どんな日付でも、その日付を表す数を3倍したときに十の位がくり上がることはありません。つまり、必ず□は●の3倍で、◇は▲の3倍とわかります。

よって、「●月▲日」を表す数の3倍が「□月◇日」を表す数のとき、●は1~4のいずれかになり、▲は1~10のいずれかになるので、全部で4×10=40(通り)あります。

この40通りでは、「●月▲日」を表す数の3倍が「(●×3)月(▲×3)日」を表す数になるので、「(●×2)か月と(▲×2)日後」が「★日後」にあたります。●が1変われば★は約60程度変わるため、例えば1月10日と2月1日など、月をまたいで★が同じになることもありません。つまり40通りそれぞれで★が異なるため、★も40通りあります。

(参考)40通りは以下の通りです。
<1月>

  • 「1月1日」→1月1日の61日後が3月3日なので、★=61。
  • 「1月2日」→1月2日の63日後が3月6日なので、★=63。
  • 「1月3日」→1月3日の65日後が3月9日なので、★=65。
  • 「1月4日」→1月4日の67日後が3月12日なので、★=67。
  • 「1月5日」→1月5日の69日後が3月15日なので、★=69。
  • 「1月6日」→1月6日の71日後が3月18日なので、★=71。
  • 「1月7日」→1月7日の73日後が3月21日なので、★=73。
  • 「1月8日」→1月8日の75日後が3月24日なので、★=75。
  • 「1月9日」→1月9日の77日後が3月27日なので、★=77。
  • 「1月10日」→1月10日の79日後が3月30日なので、★=79。

<2月>

  • 「2月1日」→2月1日の122日後が6月3日なので、★=122。
  • 「2月2日」→2月2日の124日後が6月6日なので、★=124。
  • 「2月3日」→2月3日の126日後が6月9日なので、★=126。
  • 「2月4日」→2月4日の128日後が6月12日なので、★=128。
  • 「2月5日」→2月5日の130日後が6月15日なので、★=130。
  • 「2月6日」→2月6日の132日後が6月18日なので、★=132。
  • 「2月7日」→2月7日の134日後が6月21日なので、★=134。
  • 「2月8日」→2月8日の136日後が6月24日なので、★=136。
  • 「2月9日」→2月9日の138日後が6月27日なので、★=138。
  • 「2月10日」→2月10日の140日後が6月30日なので、★=140。

<3月>

  • 「3月1日」→3月1日の186日後が9月3日なので、★=186。
  • 「3月2日」→3月2日の188日後が9月6日なので、★=188。
  • 「3月3日」→3月3日の190日後が9月9日なので、★=190。
  • 「3月4日」→3月4日の192日後が9月12日なので、★=192。
  • 「3月5日」→3月5日の194日後が9月15日なので、★=194。
  • 「3月6日」→3月6日の196日後が9月18日なので、★=196。
  • 「3月7日」→3月7日の198日後が9月21日なので、★=198。
  • 「3月8日」→3月8日の200日後が9月24日なので、★=200。
  • 「3月9日」→3月9日の202日後が9月27日なので、★=202。
  • 「3月10日」→3月10日の204日後が9月30日なので、★=204。

<4月>

  • 「4月1日」→4月1日の246日後が12月3日なので、★=246。
  • 「4月2日」→4月2日の248日後が12月6日なので、★=248。
  • 「4月3日」→4月3日の250日後が12月9日なので、★=250。
  • 「4月4日」→4月4日の252日後が12月12日なので、★=252。
  • 「4月5日」→4月5日の254日後が12月15日なので、★=254。
  • 「4月6日」→4月6日の256日後が12月18日なので、★=256。
  • 「4月7日」→4月7日の258日後が12月21日なので、★=258。
  • 「4月8日」→4月8日の260日後が12月24日なので、★=260。
  • 「4月9日」→4月9日の262日後が12月27日なので、★=262。
  • 「4月10日」→4月10日の264日後が12月30日なので、★=264。

※うるう年の場合も、同様に40通りあります。

日能研がこの問題を選んだ理由

入試会場でこの問題と出あった受験生は、初めに問題を読んだところで、きっと様々な疑問が生まれたのではないでしょうか。

「●月▲日の★日後を表す数が、●月▲日を表す数の3倍になるって、どういうことだろう?どんな日付でもそうなるのかな?」
「●月▲日がちがう場合でも、★が同じになることはあるのかな?」
もしかしたら、何をしてよいのかわからずに困ってしまった受験生もいたかもしれません。「★日後」というカレンダーの問題と、「3倍」という数の性質が絡み合って、この問題の複雑さやおもしろさが生まれています。

初めは何をしてよいのかわからなくても、例えば「4月1日を表す数の3倍は、何月何日になるのだろう?」と試していくと、少しずつ構造の理解が進み、この問題の核心に迫っていきます。そのうちに、「きっとこうなんじゃないか」と隠された決まりが見えてきて、この問題の全容が解明できるようになります。

この問題は、未知のことがらに対して、自ら探究心を持って一つひとつ解き明かしていく姿勢を問うた問題だと感じました。まさに「Optima est veritas.(真理こそ最上なり)」という光英VERITAS中学校の校訓に沿った、学校の先生方の想いがこめられた一問と言えるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。