今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
開智中学校
2024年04月掲載
2024年 開智中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
図1はフローティングキャンドルという、水の上に浮(う)かべて使うろうそくです。水の入った容器に浮かべると、ろうそくの明かりが水面に反射した幻想的な雰囲気を楽しむことができます。このフローティングキャンドルが水に浮くしくみについて考えてみましょう。
底面積が120cm2、高さ2.4cmの円柱状のろうそくを、図2のように水にそっと沈めたところ、水面から0.4cm浮いて静止しました。ただし、水の密度は1g/cm3とします。
(問)図2のろうそくに火をつけたとき、火はどうなりますか。もっとも適切なものを次の中から1つ選び、記号で答えなさい。
- (ア)水面の上に出ている部分(上の0.4cmの部分)だけが燃え、ろうそくの芯が水に浸(つ)かって火が消える。
- (イ)ろうそくが残り0.4cmの長さになったところでろうそくの芯が水に浸かって火が消える。
- (ウ)ろうそくが燃えるにつれ、少しずつろうそくの底面が浮かび上がり、ほぼすべて燃えつきたところで火が消える。
- (エ)ろうそくが燃えるにつれ、ろうそくにはたらく浮力が小さくなるので、ろうそくが水に沈んで火が消える。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この開智中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
(ウ)
解説
図2のろうそくに火をつけたときのようすを、次のようにいくつかの視点から考えます。
まず、ろうそくが燃焼するときのようすに目を向けます。ろうそくに火をつけると、ろうの固体がとけて液体になり、しんをのぼっていきます。しんをのぼった液体のろうは、蒸発して気体となって燃焼します。ろうそくが燃えているとき、ろうそくの炎によって炎の近くの空気はあたためられ、下から上へ向かう空気の流れができます。そのため、ろうそくの周囲(縁の方)は冷たい空気が流れこむことによって冷やされ、ろうそくの中央(しんがある方)のろうからとけていきます。その結果、時間とともにろうそくはだんだんと中央がくぼんだ形になります。
次に、ろうそくの密度と浮力に目を向けます。ろうそくを水に浮かべると、ろうそくが押しのけた水の重さに等しい大きさの浮力(浮かせようとする力)が、ろうそくに働きます。ろうそくが水に浮いているとき、ろうそくの重さと浮力は等しくなっています。
さらに、ろうそくに火をつけたときの変化に目を向けます。ろうそくが燃えていくと、ろうそくの重さが軽くなっていくことになるので、ろうそくが浮いているときに働く浮力も小さくなります。浮力が小さくなるということは、ろうそくの水中に入っている部分の体積が小さくなるということなので、ろうそくの底面が浮かび上がってきて、ほぼすべて燃えつきたところで火が消えると考えられます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
「ろうそくを水の入った容器に浮かべると、ろうそくの明かりが水面に反射した幻想的な雰囲気を楽しむことができます」という部分や写真から、子どもたちは入試問題の入り口の部分で「フローティングキャンドル」という素材の楽しさや不思議さなどを感じることができます。実際にフローティングキャンドルを見たり、使ったりしたことがある人もいるでしょう。では、フローティングキャンドルとして図2のようなろうそくを水に浮かべたとき、火が消えるまでに、どのようなようすが観察されるのでしょうか。この問題では、実際に起こる現象に目を向けています。
子どもたちは、これまでに理科の世界の中で、状態(三態)変化、燃焼、密度、浮力など、さまざまなことがらについての知識や考え方を身につけてきたと思います。この問題では、ろうそくが燃えるとき、どのようにろうがとけていくか、ろうがとけていくとろうの重さや体積はどのように変化していくのか、ろうそくに働く浮力の大きさはどのようになっていくのか……。さまざまな視点でろうそくがとけているときの状況をイメージします。そして、いくつもの視点で考えたことを組み合わせて、ろうそくに火をつけてから起こることを、ひとつずつ筋道を立てていくのです。
この問題に取り組むことによって、子どもたちは、学んだ複数のことがらを組み合わせて筋道を立てることや、現象をしくみと結びつけてとらえることを体験していきます。「実際に目にしていないことや、今後起こることについても、しくみをもとに予測することができるんだ!」という気づきにもつながることでしょう。
このような理由から日能研では、この問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。