出題校にインタビュー!
鎌倉女学院中学校
2024年04月掲載
鎌倉女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.鎌倉女学院の国語の入試は豊富な読書量や読書体験が大事
インタビュー2/3
続いて入試問題全体の特徴についてお聞かせください。
清水先生 鎌倉女学院の国語の入試では、読む経験が豊かかどうか、読むことが好きかどうかを知りたいと思っています。あと読むことの基本が身についているかどうかですね。説明文ではなるべく正確に読み取れるかどうかを問うようにしています。少し背伸びして科学、社会といった多様なジャンルの文章を出題しながら、知的好奇心が旺盛な子に入ってきてもらいたいと思っています。
一方で、物語文では場面状況や心情が汲み取れるかを問うようにしています。せっかく集中して文章を読んでもらえる機会でもあるので、なるべく年齢にふさわしいもの、面白く読めるものを選んでいます。
なお、今回大問3ではナイチンゲールを題材にした2つの文を組み合わせて出題しています。例年ですと物語文だけを出すことが多いのですが、作問検討会議で問題文Bを持ってきた先生がいまして、今まで普通に私たちがイメージしているナイチンゲールではなく統計学者としてのナイチンゲールが書かれておりとても面白い文章だと思いました。
しかし、これをどういう形で出題したらいいんだろうと非常に悩んだんです。そしていろいろ議論した結果、「伝記と組み合わせたらどうか?」という意見が出てきて、伝記だと一般的な慈愛深いイメージのナイチンゲールについても尋ねられるので「組み合わせてみよう」ということで構成が固まりました。
あと、昨今の大学入学共通テストでは2つの文章を組み合わせる問題も多いので、そういった傾向も取り入れたいと思いました。伝統だけで進むのではなく今の時代のものも取り入れたいという意図があり、2つの文章で出題される運びとなりました。
鎌倉女学院中学校 図書館
自分たちの生活と結びついた文章が出題
最後の問題は説明文が出題されるパターンです。先ほどのナイチンゲールの話も最後の大問四の荒川の話も私たちの生活と結びついているように感じるので、全然違うジャンルの文章ではありますが、結局は身近な部分と繋がっているように思いました。
清水先生 荒川の話はこの本をはじめて読んだ時、川って人がこんなにも流れを変えてしまうんだということに恥ずかしながら驚きました。私たちの身近なものが実は私たちが想像しているものとは違う背景を持っているといった面白さを味わってもらえたらいいなという問題です。
自分が読んで面白いと思った本から出題したい
この大問四の素材文「人がつくった川・荒川(長谷川敦 著)」は社会科の先生から紹介されたものとかではなく、国語科の先生が見つけられたのですか?
清水先生 この本は私が見つけ、問題文としてどうだろうかと思って紹介したものです。読み始めたらとても面白いと思える本でした。実は私は地理が少し苦手なのですが、川の流れが人の力で変わったというこの話なんかは非常に興味深く感じました。
なるべく自分が面白いもので問題を作成したいという思いがあります。今回は地図問題も出題したのですが、これは文章からどう地形が変わったのか正しい地図を選ぶ問題でした。今の時代は画像や映像から入ることが多いので、文章から絵や図をイメージできる力を大事にしたいと思って作ったものです。
問題は先生方で持ち寄って議論の上で選定していくのですか?
清水先生 そうですね。持ち寄った文章や問題からどれがいいか、これは一次試験に出すか二次試験に出すか、組み合わせはどうするか、などを話し合って決めていきます。昨年度は問題作成チームが4人で、たとえば語句は「みんなが一人1つずつ何か作ってこよう」といった形で持ち寄り選定していきます。文章素材についても、これはと思うものをいくつか持ってきます。多い時は10以上の文章から選定することもあります。
ここまでこだわる必要があるのか?と思うこともありますが、国語科の教員みんな割とこの作業が好きで凝り過ぎてしまいます。結局私が一番こだわり過ぎてしまうのですが。
伝統的に私も先輩から受け継いだ思いとして、入試問題は子どもが読むものなので子どもたちにいい影響を与えるものがよいと思っています。色の問題も設問に「美しい言葉」と記載したということもあって、美しいものを集めることにこだわりました。たとえば、あずき色もいいかなと思いましたが、「かさぶたはあずき色だ」みたいな文章となってしまい、それはちょっと美しくないよねとボツになりました。
鎌倉女学院中学校 教室
日本の伝統文化に触れられる「鎌倉」
こういった言葉への感性に関し、近年の生徒さんにはどのような印象を持たれていますか?
清水先生 本校では俳句や短歌を作らせることが結構多く、そういう中で生徒は「歳時記」などで季語を見たりすることは多いです。生徒が卒業する際に、「何が授業で印象に残ったか」といったアンケートを取ったりするのですが、「俳句を作ることで季節感を感じた」と書いた生徒もいます。
また中一では「特別国語」という授業があるのですが、それは古典の導入となるような予備知識を体系的に学ぶ授業で、日本の伝統文化にも触れます。それについて「勉強の感じは薄いけども純粋に楽しんで教養を身につけられた」とか、「特別国語のおかげで古典常識が身について高校からの古典の理解度が上がった」と言ってくれた子もいました。
教員側としては、中学のうちはなるべく楽しく古典的なものや伝統文化に触れさせてあげたいと思っていまして、高校生になって大学受験を迎える際に「あの時勉強したことがこれに結びつくんだ」と感じてくれればいいなと思いながら、「特別国語」の授業をしています。これは受験だけが目的ではなく、生涯を通じた教養を身につけてもらいたいと国語科が力を入れている授業のひとつです。
鎌倉という土地も古典や伝統を学ぶのに非常にいい場所ですよね。
清水先生 季語ひとつとっても今の私たちの生活からはすごく遠ざかっている感じがすると思うのですが、この鎌倉という環境で学んでいるときちんと目を向けたらそこら中に季語と結びつくものがあるので、「鎌倉女学院はとてもいい場所にあるよね」といつも語り合っています。
とはいえ、教員側が何か示唆しないと目に入ることなく通り過ぎてしまうので、そこは少し生徒に刺激を与えて、創作させることなどから伝統文化や自然に目を向けるように促しています。やはり鎌倉という土地柄はとても恵まれているんですね。本当に素晴らしい場所で自然も豊かだし文化や歴史を感じさせてくれます。
鎌倉女学院中学校 和室
インタビュー2/3