シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

東邦大学付属東邦中学校

2024年03月掲載

東邦大学付属東邦中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.出題する問題のバランスには十分気を使って入試問題を作成

インタビュー2/3

では、次に全体の構成について教えてください。

土田先生 全体的なコンセプトとしては、受験生が面食らってパニックになって45分を終えてしまうようなことは当然望んでいませんので、2年から3年間にわたり受験勉強してきてくれたお子さんたちが、100%の力を発揮した上で合否が決まるような問題を作問したいと考えました。

「これを知らないとまずいよね」といった前半の基本問題は、正答率でいうと8割~9割になってくるのであまり差がつきませんが、後半は深掘りして考えないと解けない問題も多く、その問題ができるかできないかで合否がわかれてしまいます。

算数の試験は45分という短い時間ですので、1年生から6年生までの学習内容を全て問えるわけではありません。その中から、年度によって出したり出さなかったりはあるにせよ、割合の問題や図形の問題は必ず出題しています。また、時には「ここまで聞いてくるのか」といった問題も出題していて、全体のバランスにはかなり気をつけています。

東邦大学付属東邦中学校 制服

東邦大学付属東邦中学校 制服

小学校の算数と中学・高校の数学との難易度の差に悩むことも

作問において特に気をつけた点などはありますか?

土田先生 我々は普段数学を通して中学生を相手にしているため、小学生が学んできた算数の難易度が我々の考えている算数の難易度と合っているかどうかは、教員の中で議論していても常に悩んでしまう部分です。

今回の問題における正答率約6割というのはある程度予想通りでしたが、時には思っていたより低かったり高かったりとブレてしまうこともあります。「そんなに難しくないだろう」と思って出題したら意外と正当率が低かったり、その反動で少し簡単にしてみたら正当率が高すぎてしまったりしたこともあります。

そんな中で、空間図形に関しては苦手とするお子さんも多い分野ですが、ある程度我々の正当率や難易度予想に収まっています。小学生の算数の題材としての図形問題は、普段中学生や高校生を教えている我々が想定している問題とはまる時、はまらない時が明確に表われます。

ちなみに大問6題まで45分という試験時間だとかなり急いで問題を解いていかないと時間は足りなくなってしまいますね?

土田先生 そうですね。ですから、受験生は大問2番あたりの基本問題で止まってしまわないよう、少し難しい問題で手が止まったら先の問題に進むことが大事です。今回だと後半4題(大問3~6)に時間を使ってじっくり取り組んでもらいたいところです。各大問の小問2問ないし3問の完答を目指しつつ、1問目は解けたけど2問目は時間がかかりそうだと感じた問題は、後回しにして次の問題に行くようにするのも試験を突破するコツのひとつです。
45分という限られた時間の中で、後半の大問を5→4題にしてみるのはどうかということで、昨年から6題構成になっています。その結果、去年も今年も我々の想定より受験者平均点は高くなっています。大問構成を見直した結果、受験生が落ち着いて問題を解いてくれるようになったのではないかと、前向きに捉えています。

東邦大学付属東邦中学校 掲示物

東邦大学付属東邦中学校 掲示物

論理的な思考力・構成力が大事

御校の数学科として、生徒に身につけさせたい力や重視していることがあれば教えてください。

土田先生 本校の数学科のカリキュラムとしては、中学1年・2年の最初の2年間で、学習指導要領の内容でいう中学分野をすべて終えてしまいます。その後、中学3年と高校1年・2年の3年間で、高校数学の3年分を進めていく早期完習学習が展開されています。

そんなカリキュラムが展開される中、中学に入ると習う図形の証明や議論の仕方、論理の構造をしっかりと学び、最終的に大学入試に向かうところでの高校の関数や解析、微分積分に関しても回答・記述していける論理構成力を身につけてもらいたいです。そういった最終的な目標に向けて、中高一貫ならではの6年という長い期間をかけて普段の授業から学びを怠らないでほしいですね。

授業の進め方は各先生に一任されているのですか?

土田先生 一応シラバスをもとに、学校が前提として進める道筋はあります。ただ、本校の数学科に関しては教科書以外に使っている教材もあります。
中高一貫校の中学数学でかなり取り入れている学校は多いと思うのですが、数研出版の「体系数学」というテキストは非常によく練られていて、中1中2に薦めています。検定教科書ではないものの、本校の中1・中2に関しては、授業中は教科書として使っています。

東邦大学付属東邦中学校 カフェテリア

東邦大学付属東邦中学校 カフェテリア

校風として理数系に進む生徒の割合は多い

御校の歴史を考えてみた時に、理数系科目が好きで理数系の道に進みたいという生徒はやはり多いのですか?

土田先生 我々も理系のお子さんを特に増やそうとアナウンスしているわけではないです。ただ、東邦大学のほうが自然科学中心であったりすることから、伝統的に理数系のお子さんが多いのは確かです。他の学校と比べたら医療系を希望されるお子さんも多く、本校にいると情報も得やすいので、将来的に理数系もしくは医療系あたりを検討しているお子さんが本校を選択する割合が増えていると感じます。

岡田先生 理系を目指すお子さんが多い点については、医学部を中心とした理系の総合大学である東邦大学の付属校としての伝統によって醸成された、本校の特徴のひとつです。本校での学びは理系科目だけに特化しているわけではありません。幅広くさまざまな学びに取り組むリベラルアーツ型カリキュラムにより、中高6年間で豊かな教養を身につけることで総合的な人間力の育成を目指しております。その学びの中には、今すぐに役立つかはわからないものもあるかもしれませんが、未来の自分を支える土台となる大切な学びであると考えています。

インタビュー2/3

東邦大学付属東邦中学校
東邦大学付属東邦中学校建学理念である『「自然・生命・人間」の尊重』は、創立者の額田豊・晉兄弟医学博士の自然観・生命観・人間観に基づいている。「感性」で捉えたものを「理性」に高めて理解できたとき出会える学ぶ喜びを重視する「プロセス重視の学習」を象徴する言葉である。
高1までの授業はリベラルアーツ型で幅広く学び、高2から文系と理系に分かれてより深く学ぶ。主要教科以外の時間も充実しており、たとえば「自分探し学習」。中学では各学年ともⅠ~Ⅲ期に分け、Ⅰ期は校外学習(中3は修学旅行)に関するテーマ学習、Ⅱ・Ⅲ期はそれぞれの30の講座を開設し、その中から各自が選択する。高校では、提示されたテーマの中から、あるいは、生徒自らが設定したテーマ、このいずれかを選択してレポートを作成。
また、大学付属校としてもメリットを生かした講座も豊富にある。「学問体系講座」は東邦大などとの連携授業で、中学生が参加できる講座もある。医学部志望者には、外科手術体験セミナーまである。部活動も盛んで、中学校で8割強、高校で7割弱が、学業との両立を図りながら元気に活動している。近年、めざましく躍進している部活も多く、東邦生の学びの場の一つとして心身を鍛えている。こうした部活動や、その他にある行事も、生徒達にとっては「自分探しの場」である。
2020年度はコロナ禍等諸般の事情により、文化系部活動・同好会の各種大会や発表会が中止となったが、学校HPで文化系団体の日頃の活動の成果を発表できるよう、作品や発表が公開されている。生徒たちの日々の取り組みが伝わる内容となっている。