シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

鷗友学園女子中学校

2024年02月掲載

鷗友学園女子中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.文章記述は問いの要求に応えること

インタビュー2/3

結果的に差がつくのは用語記述・記号選択

入試問題はどんなことを意識して出題されていますか。

新木先生 分野が偏らないように、そして、いろいろな解答形式で出題することで受験生の力を測れるように意識して作問しています。グラフや資料を読み取る力も測りたい力の1つです。また、リード文をきちんと読んで、それを踏まえて問いと向き合ってもらいたいと思っています。
結果的に差がつく傾向にあるのは、用語記述や記号選択の○か×かの問題です。こうした問題は、得点してほしい問題とチャレンジ問題があります。公民の「シビリアン・コントロール(文民統制)」はチャレンジ問題として出しましたが、合格者と不合格者で最も大きく差がつきました。

ちょっと“いじわるな”問題を出すこともあります。2022年は参議院選挙があったので、受験生は参議院の勉強に力を入れていたでしょうが、衆議院の仕組みを答える問題を出しました。参議院の問題だと思って読み進めると、衆議院の問題であることに頭が回らず間違えてしまいます。

鷗友学園女子中学校 生徒作品

鷗友学園女子中学校 生徒作品

文章記述問題の形式は大きく3つ

受験生の文章記述力についてはどのように見ていますか。

伊藤先生 文章記述問題は部分点が取れるので、対策を取ることで何かしら得点できている傾向はあります。

新木先生 この問題の場合、書けていないという印象はありませんね。どの受験生も文章として完結させてはいました。記述力というより、何を答えなければならないか、問いの要求をとらえる力が得点率を左右したように思います。

伊藤先生 文章記述問題は、(1)公民分野で出題した「南北問題」のようなベーシックな用語を説明する問題、(2)提示された資料と身につけた知識を結びつけて答える問題、(3)この問題のように初見の問題の3パターンに大別されます。(2)は提示した2つの資料を用いて信長が堺を支配した理由を説明する問題(2023年度第二回入試)が該当します。勉強したことが生かせるし、資料を読み取る力があれば十分対応できます。この問題の正答率は高かったです。(3)は受験生と接点のある題材を取り上げており、初見の対応力、生きる力につながる力量を測りたいと思って出題しています。

社会科主任/伊藤 保志先生

社会科主任/伊藤 保志先生

用語は理解して初めて活用できるようになる

用語説明ができないというのは、その意味するところを理解していないということでしょうか。

新木先生 用語の理解はとても大切です。一問一答式に用語が答えられる受験生は多いと思いますが、何を意味するのかは“理解の落とし穴”になりがちです。そこはしっかりやってほしいところですね。

伊藤先生 それは中高6年間続きます。覚えることはできても、意味を聞くと途端に答えられない生徒は多い。単に用語を暗記するだけでは本当の理解につながらない、応用が利かないことは、よく注意しているところです。

入学後、用語の理解はどのように促しているのですか。

新木先生 定期試験の振り返りや、前の授業で学習したことを友達に説明するペアワークでこまめに行っています。そこで自分の説明に筋が通っていないことに気づいたり、授業のプリントを見返して実はよくわかっていなくて質問に来たりします。

鷗友学園女子中学校 実習園

鷗友学園女子中学校 実習園

社会の出来事や学んでいることをおもしろがる

伊藤先生 本校の校訓は「慈愛(あい)と誠実(まこと)と創造」です。受験生は一生懸命、誠実に勉強してくれていると感じます。一方で、入試で創造力を測るのは難しくても求めたい部分です。その場で考える力は生きる力につながっていくと思うので、入試問題で少しでも引き出したいと思っています。

新木先生 受験生には、世の中で起こっていることや学習していることをおもしろがる感覚を大切にしてほしいですね。問題を読んだときに「おもしろそう」と思うのがスタートかなと思います。そう思えれば入学しても楽しく勉強が続けられるでしょう。そのためには「なぜ」「どうして」の問いを立てられること。頭に浮かんだ「はてな(?)」をそのままにせず、調べてほしいですね。

インタビュー2/3

鷗友学園女子中学校
鷗友学園女子中学校1935(昭和10)年、東京府立第一高等女学校(現・都立白鷗高等学校)の同窓会鷗友会により、母校創立50周年事業として設立。今日の繁栄の基礎を築いたのは、女子教育の先覚者で第一高女の名校長とうたわれた市川源三と、内村鑑三・津田梅子の薫陶を受けた石川志づ。
「慈愛と誠実と創造」の校訓のもと、キリスト教精神を取り入れた全人教育をおこなっている。「女性である前にまず一人の人間であれ」の教えのもと、一人ひとりが自分の可能性に挑戦し、社会の中で自分の潜在的な能力を最大限に発揮することを目指す。生徒・教師が一体となり<よろこび>と<真剣さ>のあふれる日々を送っている。
全館冷暖房完備で、ゆとりと明るさを追求した特別教室・図書室・ホールを整備。非常災害時のための危機管理システムも整った太陽光発電や雨水利用システムなども導入している。実習園、屋外プールなどもある。校外施設として、軽井沢に追分山荘をもつ。
ていねいな指導に定評があり、教師陣はハイレベルな指導のためにカリキュラムの研究検討を重ね、独自の教材を使った授業も展開する。中学では先取り学習をしつつ、聖書・園芸・書道も正課に取り入れている。英語は「使える英語」を目指し、すべて英語で授業を行っている。中2の英・数はクラス2分割。英語と数学は高校で習熟度別授業を導入する。中1では自分レポートを作成。高2で文系(芸術系を含む)・理系コースに分かれ、選択科目を多く設定し、きめ細かく進路に対応している。高3では主に演習を実施。数多くの特別講習や小論文の個別指導など、進学指導も充実している。
2期制を実施。進路指導では、自分史・環境・福祉・職業・平和などに取り組む。社会で活躍する先輩の話を聞く機会もあリ、自分を見つめ、社会を知り、生き方を考える。70年の伝統を持つリトミックを全学年で週1時間実施し、身体表現を豊かにし、運動神経を高める。課外活動として、茶道、華道、書道、手話、英会話、Debate Workshopもある。文化祭や運動会のほか、スクールコンサート、クリスマス会、中1の軽井沢追分山荘生活学習、中2のスキー教室、中3の沖縄修学旅行などの年間行事を実施。チョート校サマースクールやチェルトナム・レディース・カレッジ研修など、国際理解教育にも力を入れている。クラブ活動は、学芸部8、運動部13、同好会15で、中高合同で活躍している。