シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

和洋国府台女子中学校

2024年01月掲載

和洋国府台女子中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.「実験が好き」と答える生徒が8割

インタビュー3/3

中学3年間で100回の実験・実習を実施

天野先生 本校は中学3年間で100回の実験・実習を実施しています。そのスタイルは本校の風土です。教科書に載っている実験・実習についてはほとんど行っていると思います。

生徒さんの様子はいかがですか。

天野先生 たまたま教室での授業が続くと、「実験がしたかった」という声が聞かれます。実験を楽しみにしている生徒が多いと思います。
中1の実験で生徒が喜ぶのが、液体窒素の実験です。マイナス196°の液体窒素の中に、ソフトテニスのボールを入れて凍らせて、取り出して地面に落とすとボールがパリンと割れます。また、液体窒素の中にバルーンアートで使う細長い風船を入れると、風船内の空気が状態変化で気体から液体になってどんどん萎んでいきます。それを液体窒素の中から取り出して実験台に置くと、風船が温まってどんどん膨らんでもとの大きさになります。目に見える劇的な変化に、生徒は「わーっ!」と歓声を上げます。目で見た現象のインパクトと、なぜそうなるのかという理論が結びつけば知識として定着しやすいと思いますし、そのようにしたいと思っています。

和洋国府台女子中学校 生物実験室

和洋国府台女子中学校 生物実験室

家庭科の実習が実験の段取りのよさにつながる

天野先生 解剖実験はアジやイカなど個人で行う解剖もあります。グループで行うとどうしても遠慮してサポートに回ってしまう生徒がいます。実験・実習はなるべく少人数で行うようにして、全員が手を動かしてできるように心がけています。
高校の分野選択では少人数クラスになるので、2人1組で行うことが多くなります。一貫生の方が実験慣れしていて手際よくできている印象です。
家庭科の調理実習や被服実習で鍛えられて、段取りや細かい作業ができるようになり、それが理科の実験の手際のよさに生かされて助かっています。

和洋国府台女子中学校 調理実習室

和洋国府台女子中学校 調理実習室

実験は失敗しても必ず成功体験を積ませる

天野先生 中学の実験は、失敗したら再実験をして成功体験を積ませるようにしています。アンモニアの噴水実験は噴水が起こらないことがあるので、失敗したら終わりにせず、必ず予備を用意して授業中に再チャレンジできるようにしています。失敗体験も大切ですが、「できた」という成功体験も大事だと思います。
解剖実験は、「やってみよう」と誘ってもどうしても嫌がる生徒は、教室から出て窓から様子をのぞいてもらいます。

生徒はChromebookを持っているので、解剖の様子を配信して廊下で見てもらうこともあります。硫化水素が発生する実験では、喘息を起こしそうな生徒は予め廊下に出て配信動画で確認するというように、ICTを活用して安全面に考慮することもできています。
ただし、「何となくイヤ」「気持ち悪いから」という単純な理由では許可しません。できるだけ参加するように促します。

考察や疑問点を次の授業で共有するのが理想

天野先生 レポートは、本来なら大学で課すようなレポートを書かせることができれば一番いいのですが、それでは時間がかかってしまうので、実験レポートのプリントをこちらで用意して、必要なことを書かせて、自分で気づいたこと、疑問に思ったことなどを書いてもらう形式が多いかもしれませんね。

レポートはどんなところをチェックされていますか。

天野先生 できれば考察や疑問点で出てきたことをその次の授業の最初にみんなで共有できるのが理想かなと思っています。
1分野のレポートは実験データが取れているか、そこから考察できているかどうか。実験がうまくできなかったとき、それはなぜか考察できるかというところを見ています。
2分野のレポートは観点別の評価を細かく行っています。観点別の評価を行うことで、生徒の考え方が見えてきたり、生徒の特性に早めに気づけたりする利点があります。

和洋国府台女子中学校 図書館

和洋国府台女子中学校 図書館

教員が理科を楽しみ、生徒に親しみを持ってもらう

どのようにして生徒さんを「理科好き」にしているのですか。

天野先生 まず、教員自身が理科を楽しむこと。教員が楽しんでいる様子は生徒に伝わると思います。理科教員が長期休暇で体験した「理科的におもしろかったこと」が、しばしば入試の作問のきっかけになっています。教員が自分の興味のあることを教科書の内容を超えて熱く語ることで、「おもしろそう」と思った生徒がいたらしめたものです。
また、理科好きを増やすためには教員が生徒に親しみを持ってもらう、信頼してもらうことも大切だと思います。それが生徒の頑張りにも影響するのではないか。特に中学生にその傾向が強いように思います。

化学は苦手でも生物は好きというように、理科を全部好きでなくてもいい、興味があることがあればそれでいいのではないかと、個人的には思います。興味を持つところはそれぞれ違うでしょうから、生徒一人ひとりの興味・関心や能力を尊重してあげることも重要ではないかと考えます。

理科の学習は嫌いだけれど「実験は好き」という生徒がいます。本校の生徒の8割は「実験が好き」と答えてくれると思います。身の回りとの関係性や生活に近いことを紹介することで理科を身近に感じてもらえるし、そこに科学的な視点を入れることで今までとは違う目線で物事を見ることができるようになります。何かしら気づきがあると理科に興味を持ってもらうきっかけになると思います。
また、実物に触れることも大切にしています。学校周辺に生息していた動物を剥製にして実際に触らせています。例えば、フクロウの頭の毛のふわふわ感、爪の鋭さが触ることで実感できます。

和洋国府台女子中学校 ロビー

和洋国府台女子中学校 ロビー

主体的に学ぶ姿勢を6年間で身につけさせたい

中高6年間でどんな理科の力をつけて卒業してもらいたいですか。

天野先生 大学ではより主体的に学んでいくことが求められます。理科に関する基本的な知識や理解する力を身につけた上で、自分自身で学んでいける力を養いたいと思っています。

これからは、物事を正しく理解する、分析できる、観察できる、データから正しく判断するといった力が求められるのではないかと思います。分析する力、観察する力が最終的に学ぶ力になっていくだろうし、主体的に学び進めるように、中高6年間でその土台を作りたいと思っています。

インタビュー3/3

和洋国府台女子中学校
411_和洋国府台女子中学校明治30年(1897年)和洋裁縫女学院を麹町区飯田町3-22(現在の千代田区富士見町富士見小学校前)が創設され、明治34年9月27日私立学校令により、私立和洋裁縫女学校と改称された。以後この日が創立記念となっている。「凜として生きる」を教育目標として明朗和順の徳性を涵養し、実験学習を重んじる学習と、徹底した生活指導に意を注ぎ、有為な日本女性を育成することを目的としている。
江戸川を望む緑美しい高台に広がる中・高・大連携キャンパスでは、講義や実習など様々な交流が行われ、和洋ならではの貴重な学びが展開される。最新設備が充実した校舎内には、季節の花などで優しい雰囲気を醸し出す。図書館は幅広い分野の書籍、約8万冊を所蔵する開架式。自習スペースとして利用される。体育館は2つのアリーナやトレーニングスペース、学生ホール(食堂)などを備える。体育館2階プレイルームは壁一面が鏡張りとなっており、ダンスの授業や部活動で使われる。体育館の1階には1年を通して泳げる温水プールがあり、水泳の授業や部活動に使われている。
英語の「和洋ラウンドシステム」では、同じ教科書を異なるアプローチで繰り返し学び定着を図る。英会話は、ネイティブの先生から少人数で学ぶ。隔年でイギリスとイタリアを訪れる海外文化研修では、異文化に触れ向上心を刺激する。理科の授業では、中学3年間で100項目の実験・フィールドワークを中心に行う「五感を駆使するサイエンス教育」を実践する。日常の生活に結び付いた探究の中で、生きた学力を身に着ける。
2023年度入学生より、新制服。伝統のセーラーのイメージは残しつつ、グレーのジャケットを採用。セーターなどのアイテムと合わせて、気温や生徒の個性に合わせた着こなしができるスタイルだ。セーラーブラウスは長袖、半袖があり、透湿性に優れた素材で快適に過ごせる。ジャケットスタイルに合う、スラックスも用意。白または紺のポロシャツとチェックのスカートを組み合わせた涼しげな盛夏服も採用された。