シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

富士見中学校

2023年12月掲載

富士見中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.問題文を読んで必要な情報を取捨選択する、整理する力を磨こう。

インタビュー1/3

「およそ」という概念が必要な時代

この問題の出題意図からお話いただけますか。

栗谷先生 数学の中にも「約」「およそ」という考え方が取り入れられてきている感じがします。自分では「それは数学なのかな」と思うところもありますが、小学生にとってはそれも大事なのかなと思い、「切り捨てる」という考え方をうまく使って解いていくという問題を考えてみました。

「およそ」という考え方が数学に取り入れられてきている、ということですが、どんなところで感じますか。

栗谷先生 統計もそうだと思います。

中野先生 データなども、共通テストで結構な分量が出題される時代になってきました。そういう意味でも「およそ」という概念が生徒たちにとっては身近になっている、と感じています。

栗谷先生 また、「5-3」の答えを求めるのではなく、「=2」(答え)を出して式を作らせる、という感覚は少しありました。

正答率はどのくらいでしたか。

栗谷先生 ア(2÷7)は46%、イ(5÷12)は24%でした。

予想どおりでしたか。

栗谷先生 3割くらいの人ができればいいかなと思って作っていたので、だいたい予想通りでした。

数学科/栗谷 剛志先生

数学科/栗谷 剛志先生

会話文をきちんと読むことが大切

栗谷先生 「1÷0.285714」この計算自体がいやですよね。電卓などを持ち込んで解くようなイメージがありますが、入試なので手計算でやってもらおうということで出題しました。大変なので、そこは少し心配なところではありました。

中野先生 例年、小数第2位、第3位くらいまでの計算が多かったんですよね。それ以上の桁数ということで、抵抗感のある小学生がいるのではないかと思い、心配していたのですが、ほぼ予想通りの正答率でよかったです。

会話文にした意図はありますか。

栗谷先生 会話文は大学共通テストでも多く使われているので、本校でも意図して使っています。いろいろな見方はあるかもしれませんが、すごく勘が鋭い受験生でしたら前出の0.666666という数字が3分の2だから、そこから0.25を引けばいいんだな。4分の1を引けばいいんだな、という裏技的な計算の仕方をしたかもしれません。一応、会話文の流れにそって考えてもらえれば、きちんと解けるように作っています。

中野先生 アがヒントになっているんですよね。1÷5と同じことを、違う数字でやってみるということですね。

栗谷先生 その前の「3.50003」を「3.5」にするということに抵抗があるのかなと心配になりましたけれども、それが「約」「およそ」という概念のところなのです。

概数には自分で判断する部分がある

中野先生 (受験生は)四捨五入はやっていますし、理科ではこういう計算が多いと思うので、「およそ」という概念に慣れていると思います。

つい「3.50003」のまま計算を始めてしまうと、すごく時間がかかってしまいます。空欄はありましたか。

中野先生 アはそれほどなかったと思います。イは多少ありました。

栗谷先生 7と出ているので、手を動かしてみようかなと思えば「答えだ」と気がつく人はいたと思います。

中野先生 いつもなんの気なしに練習している計算問題の式をじっくり見て、実はこういうふうになっている、ということに気づけると、文章がものすごく読みやすいかもしれませんね。

栗谷先生 1÷□=\(\frac{7}{2}\)の□に入る数字を求めなさい、という問題は、大問1の小問などでもあると思うのですが、そこに気がつくかどうか、ということだと思います。
ちなみに自分が小学生の頃、概数はすごく成績が悪かった印象があります。概数のテストだけ、すごく平均点が低かったということを思い出しました。およその数には、自分で判断する部分があると思います。どこまでが大事で、どこまでが大事ではないのかとか。これは切り捨てていいのか、悪いのかとか。この3.50003の3も大人なら切り捨てて当たり前、という感じがしますが、子どもにとっては大事なのかもしれません。そういう気持ちの部分が影響していたのではないかなと思います。

富士見中学校 学校模型

富士見中学校 学校模型

入試問題は基礎的な学習で十分に解けるレベル

算数の入試問題全体のコンセプトを教えてください。

中野先生 いわゆる難問奇問のたぐいの問題は出していないと思います。

栗谷先生 気をてらった問題ではなく、基礎的な学習を行っていれば十分に解くことができる問題を出すことにしています。

中野先生 単元についても偏ることなく、計算問題から簡単なつるかめ算などを使って解く文章題、速さ、図形、整数……と、まんべんなく出題しています。例年の構成は、大問1が小問集、大問2がそれよりも少し文章量が増える中問、大問3と4がいわゆる大問の誘導を効かせた問題となっています。大問では(1)から解いていく中で得られたものを使って、最後の問題まで解けるように誘導を絡めながら作っているというのが例年の傾向だと思います。

中野先生 特に大問1は受験生が学んできた基本的な知識を使って解けるレベルで作っています。いくつものプロセスを踏んで答えを出すような問題は出していません。この整数の問題もそうだと思うのですが、いつもやっている解き方を逆に見るとどうなるか、という、言われてみるとそんなに難しくない問題なのですが、受験会場でパッと見た時にひらめかないことがあるかもしれませんね。練習をしておかないと難しいかもしれません。

立体の問題では図を描くことが大事

会話文の出題は近年の特色ですか。

栗谷先生 ここ何年かは多くなっていますね。

中野先生 文章を読んで理解できる受験生に入学してほしいと思っていますので、会話文が少し多くなっているのではないかと思います。

栗谷先生 この概数の問題もそうですが、会話文の中には問題を解くために必要な文章と必要のない文章があります。自分で判断して情報を取捨選択する力は、身につけてほしい力の一つです。

今回の会話文の中に「電卓」という言葉を用いた意図を教えてください。

栗谷先生 あまり深い考えがあったわけではありませんが、現実の道具と直接結びつけたいという意図はあったかもしれません。

大問2で立体の切断、点の移動などが出てきて、難しいと思った受験生がいたのではないかと思いました。

中野先生 「立体」は手強い、と感じている印象があります。本校でも苦手としている生徒が多いように感じるのですが、一つひとつ図を描いて考えれば少し整理できると思います。頭の中で想像するだけでなく、問題文を読みながら図を描くことが大事だと思います。

正答率を教えていただけますか。

栗谷先生 大問2(3)の正答率は18.3%でした。こちらが意図していた数字よりは低かったです。

見たことがある状態との隔たりが難しさの要因ではないかと思っています。

中野先生 自分で図を描いてみよう、という意図をもって出題していますので…。

栗谷先生 そこのギャップが大きいのかもしれません。図を与えれば正答率はもっと上がると思います。

富士見中学校 歴史記念コーナー

富士見中学校 歴史記念コーナー

入試問題は実際に解いて整える

大問1から大問4へ進むに連れて難易度は増していきますか。

中野先生 大問1、2と比べると大問3、4はやや難しいと思います。おそらく大問1よりも2のほうが難しいとは思いますが、大問2の小問の1番はそれほど難しくありません。

栗谷先生 大問3と4の難易度は並列です。

問題作成はどのようにして作っていますか。

中野先生 それぞれが複数の原案を持ち寄って、それをみんなで解きながら、修正をしていくような感じで作っています。

栗谷先生 私の場合は、普段読んでいる本の中から発想を得て、想像した問題を、夏休みあたりに文章にしてみるという感じで進めることが多いです。作問していると、なんとなく受験生もできそうな気がするのですが、他の先生方に解いてもらい、冷静に判断してもらった時に「これは少し解きにくいのではないか」という指摘をもらうことはよくあります。

中野先生 最初は難しいことが多く、「小問で誘導を入れよう」など、手を加えて出題に至るケースは珍しくありません。むしろそのほうが多いと思います。

インタビュー1/3

富士見中学校
富士見中学校1924(大正13)年に富士見高等女学校として発足。40(昭和15)年に財団法人山崎学園が経営を引き継ぎ、47(昭和22)年に富士見中学校、48(昭和23)年に高等学校を設立。山崎学園は、山種グループの総帥・山崎種二(初代理事長)が教育事業に進出するために設立。
「社会に貢献できる自立した女性の育成」を教育目標に掲げ、創設者・山崎種二の精神を受け継いだ学びを展開している。24年度より、米・金融・芸術の3分野を柱とする教育プロジェクトをスタート。実体験を通して課題解決力や発信力を磨き、未来を切り拓く力を育成。
「米」では、中1生が全員田植えから商品化・販売まで行う「コメ探究」に挑戦。農業の現場に触れ、現代の社会が抱える問題を学ぶ。中2生は都市型農業の発信地でもある地域の練馬区を舞台とした「ねりま探究」をお粉い、持続可能な食の在り方を探究していく。
「金融」教育は女子にこそ必要と考え、自分でお金をマネジメントするだけではなく、自他の幸福のためにお金を活用できる人を育成していく。そのためにファイナンシャルセンターを新設し、専門職による指導体制を整え、先進的な教育を実施。
「芸術」では、学校が所蔵する400点以上の美術品を教材に本物に触れる授業が展開。実際に日本画制作も行う。
池袋から西武池袋線で15分の中村橋駅から徒歩数分の環境にある。現在の校地には、中高校舎、体育館のほか地下温水プール、高3自習室、学習ホールなどを備えた50周年記念館、550名収容の山崎記念講堂、百人一首なども行われる茶室・和室などがある。各教室は冷暖房完備で校内はすべて無線LAN。図書館 ”Learning Hub”(略してL-Hub/エルハブ)は別棟となっており、“学びの核”として授業でも頻繁に使われる。
さらに、海外研修や留学、海外大学進学を支援するグローバルセンター、週6回スクールカウンセラーが常駐する「お話の部屋」、看護師の配置など、安全で安心な学習環境も整備。6年間を通じ、学びも生活も全力で取り組める環境となっている。
ほぼ全員が大学進学を希望し、24年度は90%が大学へと進学。国公立早慶上智ICU理科大GMARCHといった難関大学への進学率は50%を超える。大学との教育提携も進み、現在では東京理科大学、日本女子大学以外に、25年度は北里大学との連携も実現。特に理科大との連携プログラムは豊富にあり、自然科学系に進学する生徒は40%を超える。
自主性が重んじられ、校則は生徒会総務を中心に学校と話し合いを進めながら変化している。生徒会活動やクラブ活動が活発。中1のクラブ活動参加率は100%以上。また、全ての教員がクラブ顧問を務めている。特に人気があるダンス部は全国大会などで活躍。専門の器具を設置し活動する体操競技部や、温水プールがあるため水泳部は一年中活動ができる。