シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

海城中学校

2023年11月掲載

海城中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.受験生へ。「体験は大事。もっと家事をしよう!」

インタビュー1/3

狙いは自分の頭で考えること

この問題の出題の意図からお話いただけますか。

佐々木先生 「小惑星の表面で衝突や水がなくてもレゴリスができることを検証するために、家のキッチンでもできるような実験を1つ考え、説明する」という問題でした。この問題の出題意図は、地球上で身近に起きていることは宇宙空間でも生じているということや、天体や天体構造の起源を考察してほしい、というところにありました。

「衝突や水がなくても」という条件は、前問の内容を排除するために設けました。合わせて、2014年のNatureの論文に、レゴリスは衝突以外の原因、例えば温度差でも形成されるということが出ています。直感的には当たり前な気がしてしまいますが、2014年以前はそれが検証されていませんでした。そこが重要で、そのプロセスを紹介したい、という思いもありました。また、「家のキッチンでもできる実験を」というのは、ぜひ自分の手で検証してほしいからです。最後の「考えを説明する」という設定は、自分の考えを他人が納得するように、論理的に説明する力をつけてほしいというメッセージです。

受験生は、はやぶさの報道で知ったかもしれない内容ですが、受験は報道前です。受験生は知らないで解いたと思います。

海城中学高等学校 校舎

海城中学高等学校 校舎

正答をかけている生徒は比較的多かった

印象に残っている解答はありますか。

佐々木先生 もう少し驚く解答が出てくるかなと勝手に期待していたのですが、「温めて冷やす」という解答以外の解答はありませんでした。基本的には火であぶって放っておくということになるのかなと思います。

山田先生 この問題は、解答がそのパターンに限られていたので、正答を書けている受験生は比較的多かった印象がありますが、我々の間で迷ったのは、「レンジでチンする」という解答です。我々としては「コンロの火であぶる」という方法がすぐ出ると思っていたのですが、そもそもIHが普及して家にコンロがないということもあり得ますから、どこまで許容すればいいのか、というところで迷いました。

受験生に望むのは家事の体験

山田先生 そういう生活体験みたいなものがだんだんと希薄になっていることは、時代状況の中での傾向なのかなと思うのですが、本校の過去の入試問題でも、生物では「アジを開いた際の骨とはらわたの位置を書きなさい」とか、「サケの切り身に背骨と肋骨の位置を書き入れなさい」というような問題を出したこともあり、これらは生活体験とも関係してくる部分かなと思います。理科的な視点で、興味を持って対象に接してもらうという体験を、繰り返し持つということは、中学に入学後も役立つ大切なことではないかと思います。

今、中1の生徒を見ていても、ガスバーナーの扱いが、教えてもなかなかできない、ということが実際にあるので、生活体験をもう少し大事にしてもらえるといいと思っています。

佐々木先生 問題文に「キッチン」と入れたのは、「家事をやっていますか」というメッセージです。ただし、十分気を付ける必要があります。問題のような実験は安全対策の不十分な家ではやらない方がいいでしょう。

海城中学高等学校 実験室

海城中学高等学校 実験室

問題が難しくなりすぎないように意識

岩石を熱して冷やすとどうなるのですか。

佐々木先生 少しずつ表面から鉱物粒子が離れていくような感じになります。はがれやすくなります。もともと岩石の表面はざらざらなので、最初はほじっても取れません。その状態からバーナーで熱する、冷やす、ということを繰り返すうちに、だんだんぼろぼろになっていきます。地球上では重力があるのでぼろぼろ落ちますが、宇宙空間であれば落下しません。宇宙空間での様子まで再現できたらいいのですが、それはできませんでした。

山田先生 同じような実験を本校の授業でもやっています。花崗岩を風化させるという実験です。よくある実験なのですが、深成岩の一種である花崗岩をバーナーであぶって、すぐに水の中に入れると、温度差により膨張、収縮します。鉱物ごとに膨張、収縮の比率が違うため、鉱物間にすき間ができて、ぼろぼろぼろっと鉱物が剥がれ落ちてくるような感じになります。基本的にはそれと同じ仕組みの問題ですね。

佐々木先生 水や塩などを排除せずに聞くことができたら、もう少し解答の幅が広がってよかったかなという気持ちがありました。原案はもう少し幅広い解答が出てくるような設定でしたが、結果的にこういう出題になりました。この問題の前で聞いていることも関連しています。

海城中学高等学校 校内

海城中学高等学校 校内

「水を使っている」という解答が多かった

レンジ以外に悩ましい答案はありましたか。

佐々木先生 水を排除しているのに「水を使っている」解答は結構ありましたね。

山田先生 基本的に「温めて冷やす」ということが書かれていれば、広く◯にしました。すごく難しい問題ではないので、正答率も想定内という感じでした。

受験生の多くはこの題材自体を知らなかったと思うので、そういう意味ではとっつきにくい問題だったかもしれませんが、慣れていないだけで、問題に書いてあることをしっかり吟味すれば十分に考察できる範囲だと思っています。

インタビュー1/3

海城中学校
海城中学校もともとは海軍予備校だった海城中学校。創立されたのは1891(明治24)年と、一世紀以上の歴史がある伝統校です。建学の精神は、「国家・社会に有為な人材を育成する」こと。そのために、「フェアーな精神」「思いやりの心」「民主主義を守る意思」「明確に意思を伝える能力」を身につけた、高い知性と豊かな情操を持つ人物を「新しい紳士」と名付け、その育成を目指している。
生徒の学習意欲をかきたて、個性豊かに育てるためには、ふさわしい学習環境が必要と考え、2021年夏に完成したScience Center(新理科館)、ユニークな体育館(アリーナ)、カフェテリア(食堂)など、一人ひとりが、より良く、より深く学べるよう必要な施設や教育環境が整備されている。個々の生徒の進路選択のために、豊富な情報、資料のそろった進路指導室が準備され、担当の先生による面談が随時行われ、学習や進学の悩みや迷いなどには、専門のカウンセラーも適切な助言を与える。
習熟度別授業は行っていない。個人のブースにこもって勉強するのではなく、級友と切磋琢磨し、集団として成長してほしいと考える。6年間を通じて学習の中心にあるのは、それぞれの時期に応じた内容の濃い授業だ。授業は、大学入試そのものを目標として行うのではないが、結果として大学受験に十分対応できるものとなっている。教員もよりよい授業を追求すべく、相互の情報交換や外部の研究会への参加などを通じて研鑽を続ける。
入学後生徒たちは先ずはPAやDEといった体験学習を通して「新しい人間力」(コミュニケーション能力・コラボレーション能力)のイロハを学ぶ。文化祭などの学校行事やクラブ活動などは、そこで習得した基礎力を、実践活動を通して向上・発展させる場・機会として位置付けられる。と同時に、そうした場で力を出し切る経験を積み重ねることで生徒たちは自分に対する信頼(自己信頼)や「(多少の困難があっても)自分は出来る」といった感覚(自己効力・自信)を高める。ここぞという時にうろたえ・浮足立つことのない「新しい紳士」のエートス(行為態度)はこうした営みの中で培われる。
中学3年生を対象に、中学卒業時の3月下旬にアメリカ研修が実施される。バーモント州のセントジョンズベリーアカデミーという学校に通学する子女の家に1週間ほどホームステイをしながら同校に通学する。ボストン見学やマサチューセッツ工科大学も訪問します。高1・2年生では、7月下旬から8月かけてイギリス研修が実施される。モーバンという町に滞在し、ホームステイしながら英語の勉強をする。現地の先生やホームステイ先の家族をお招きし、スピーチの発表会を開く。また、国内での語学研修としてイングリッシュキャンプを校内で夏休みの3日間実施し、すべてネイティブの先生による授業が実施されている。