シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

海城中学校

2023年11月掲載

海城中学校【理科】

2023年 海城中学校入試問題より

みなさんの足もとに無数にある砂つぶはどこからやってくるのでしょうか。砂つぶの多くは、もともと岩石だったものです。

小惑星ベンヌ

(問)岩石が細かいつぶになる現象は宇宙空間でも起こります。図のような小惑星の表面はレゴリスというつぶでおおわれていて、レゴリスは天体衝突や水分がなくてもできると考えられています。宇宙空間で衝突や水なしにレゴリスができることを検証するために、石を使ってどのような実験をすればよいですか。家のキッチンでもできるような実験を1つ考え、説明しなさい。ただし、図の小惑星に関する下のデータを参考にしてかまいません。

【小惑星のデータ】
  • 太陽からの平均距離:1.7億km
  • 1日の長さ:4.3時間
  • 1年の長さ:437日
  • 昼間の最高温度:116℃
  • 夜間の最低温度:−73℃
  • 平均直径:492m

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この海城中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

例1 岩石をトングで持って、コンロやガスバーナーの火にあてたあと、火から離して放置して冷やす、という操作をくり返す。

例2 岩石をオーブンで加熱した後、冷凍庫に入れて急に冷やすことを何度もくり返す。

解説

問題に示されている【小惑星のデータ】から、昼間の最高温度が116℃、夜間の最低気温が-73℃であることがわかります。1日の長さが4.3時間であることも加味すると、この小惑星の地表面に存在する岩石は、約2時間ごとに温度が上がったり下がったりして200℃近く変化する環境下にあることが推測できます。

したがって、家のキッチンでこの環境を再現するためには、コンロやオーブンなどを使って岩石を加熱した後に冷やすことをくり返し行う方法が考えられます。

なお、問題文中に「宇宙空間で衝突や水なしにレゴリスができることを検証するために」と書かれているので、岩石をたたいたり落としたりして衝撃を与える方法や、冷やすときに水につける方法などは、適切ではないことにも気をつけたいところです。

日能研がこの問題を選んだ理由

私たちの足もとにある、無数の砂つぶ。ふと立ち止まって、砂つぶがどこからやってきたのか、どのようにしてできたのかに思いを巡らせてみる……。そんなロマンあふれるシーンから、この問題は始まります。

この問題では、宇宙空間で衝突や水がなくても小惑星の表面にレゴリスができることを検証するために、家のキッチンでもできる実験を考えます。子どもたちは、まず問題中に示された文章やデータをもとに、小惑星にある岩石がどのような環境に置かれているのかをとらえます。次に、家のキッチンにあるものを思い浮かべながら、どんな道具や装置を使い、どのような操作を行うと、小惑星の環境に近い状況をつくり出せるのかを考えていきます。

この問題に取り組むことによって、子どもたちは問題で示された情報をもとにして、未知の状況について筋道立てて推測する過程を体験することができます。また、創意工夫によって、特別な道具や装置がなくとも、家のキッチンでも宇宙空間で起こる現象を検証することが可能なんだ!という面白さにも、きっと気がつくことでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。