シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

湘南白百合学園中学校

2023年11月掲載

湘南白百合学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.国語の学習には「目的意識を持つこと」が重要

インタビュー3/3

先ほど国語一教科入試のお話がありましたが、それまでと比べてどうですか?

山代先生 そうですね、これまで2回行いましたので次で3回目です。国語一教科入試は、記述がない分文章もかなり長いですし、選択肢も難易度が高い作りにしています。この国語一教科入試で入ってきた子の中には、意見をすぐにまとめられる力や発表力・発言力がずば抜けている子もいるとは聞いています。

国語の問題って、読みやすい文章が出題されれば点数が出やすいですし、反対に難解な文章が出題されれば点数が出ないといったように、不安定なスコアが出がちな科目だと思います。実際のところ国語ってどのように学習していけばよいものだとお考えですか?

山代先生 「国語って何をやったらいいの?」というのはよくいただく質問のひとつです。私自身明確な答えがあるわけではないですが、生徒それぞれが目的意識を持たないと学習が始まらないと考えています。目的意識とはやる気スイッチみたいなもので、そこにいつも刺激を与えるようにしていけるとよいのでは、と思います。そうすれば、「これをしなければならない」ではなく、国語に限らず自ら学習に向き合っていけるのではないかと思いますね。

私は映画、演劇、本などの話も授業で行うのですが、「観たほうがいいよ」「これ読んだほうがいいよ」と言いたくなるものの、なるべく言わないようにしています。ただ自分個人として、観たり読んだりしたものがどういう感想だったか、どういう内容の作品だったかということを紹介はするけれど、実際に観たり読んだりするかどうかは自分たちで決めるように促します。生徒の中から自発的に生み出されるようなものがあれば、必ず何か本を手に取ったり映画を観たりするはずです。それがたまたま私の紹介した本なら、それはそれで嬉しいですし、「ぜひ感想を聞きたい」と時間を取ることもあります。

生徒から自発的に生まれてくるものがなければ、それを待ってみる。内発的な力が生み出されるような働きかけをすることに注力していきたいと思います。

湘南白百合学園中学校 リリースペース

湘南白百合学園中学校 リリースペース

スマートフォン・タブレット時代における国語や読書のあり方

現在はスマートフォンやタブレットを巧みに操作できる子どもも増えているため、読書の機会も減っていると感じます。

山代先生 ネットからの仕入れる情報によって、大人や教師が知らないことを知っているプラスの面もあると思います。最近は電車に乗っていても本や新聞を読んでいる人はほとんどいなくなりましたよね。ご家庭でも新聞を取らなくなったところは多いと思います。

そのような環境下で「本を読むことはいいよ」と発信して強制させたとしても、当然読まないでしょう。ただし、本を読むことで国語力・思考力を高めることは間違いありません。内面の深い人はそれだけのものを蓄えています。

ではそれをどこで蓄えるかというと、テレビやYouTubeなどもあるとは思うのですが、それ以外に本や論理的な考えを蓄積した大人と話すことでも充実したものが蓄積されていくはずです。子どもにとっても活字に触れることは大事ですが、時代の流れとして減ってしまうのはしょうがないことです。しかし、豊かな人間性と読書は切り離せないものですし、また、ただ本を読めばよいわけではなく、しっかりとした文章の読み方は教え続けなければいけないと考えています。

漢字のテストをすると「覚えればいいんでしょ」という生徒も多いです。しかし私は常々「漢字のテストをするということは、言葉を覚えるための試験なんだよ。漢字が読み書きできるだけではなくて、そこから言葉を蓄積すること、ものごとの考えの基礎を積み重ねていくための学習なんだよ」と言っています。

そういうことの積み重ねのなかで国語教育は成り立っているんだと感じますし、それが発信できればと思っています。

今後こういった取り組みをしていきたいといったものはありますか?

山代先生 国語はあらゆる教科の基礎になっているものですから、非常に大事な科目です。そのことを教科側も自覚していますので、生徒が「読む」「聞く」「話す」「書く」の4つの力を付けられるように、教師としてさまざまな取り組みをしていきたいと思っています。

これはまだ取り組んでいないのですが、いずれ国語の時間で生徒に動画を作らせたいですね。YouTubeを含め映像作品は受け身の媒体ですが、逆に作る側になり能動的な取り組みにしていく。生徒にテーマや台本決めさせて、例えば人に喜んでもらうにはどういう内容にしたらいいのかなどを考えさせて、動画を作らせてみる授業は、最終的に国語につながるなと。それも主体的で今の時代に合っているなら、生徒も喜んで取り組んでくれるのではないかと思っています。

湘南白百合学園中学校 校舎からの景色

湘南白百合学園中学校 校舎からの景色

インタビュー3/3

湘南白百合学園中学校
湘南白百合学園中学校1936(昭和11)年、フランスのシャルトル聖パウロ修道女会が創設した幼稚園を前身に、カトリックの精神に基づいた女子教育を行っています。全国7校の姉妹校とともに、「従順」「勤勉」「愛徳」を校訓に、神と人の前に誠実で、社会に奉仕できる女性の育成をめざしています。湘南の高台に立つキャンパスは、江の島や相模湾が一望できる自然あふれる環境で、校地内にはリスの姿も見られるほど。併設大学がありますが、東京大学をはじめとした国公立大学や難関私大、医学部への進学実績は堅調です。
6年間を通して宗教の授業を実施しており、キリスト教の普遍的価値観に触れながら、世界で関わる他者を尊重する姿勢や、自らの資質を活かして社会に奉仕する心を育てています。英語教育のレベルが高く、中学1年から少人数クラス、中学2年からは習熟度別少人数クラス制を実施。Eラーニングも取り入れ、個別最適な英語の学びを提供しています。また英語に堪能な生徒を対象とした極少人数のEクラスでは、海外のテキストを使用したハイレベルな授業を中学1年時より行っています。数学も中学1年から少人数クラス、中学3年からは習熟度別少人数クラスを開設。きめ細かな添削課題などで基礎学力を確かなものにするとともに、探究の授業を中心に、発言の機会や深く考える場面が数多くあります。探究の授業では、中学1年から高校2年まで、テーマと形態を学年ごとに発展・展開させながら教科の枠を超えて学びます。
近年は、新たな教育を見据えて学校の施設もリニューアルしています。創立75周年を記念して作られた、1200人収容の「白百合ホール」をはじめ、2020年には紙の書籍とICT機器を集約した「メディアネットラボ」が、2022年には有志の生徒がリノベーションを手がけたカフェテリア「リリースペース」が完成。全面人工芝に改修したグラウンドは、体育の授業はもちろん、運動部の生徒たちが活用しています。「リリースペース」を生徒が作り上げるなど、生徒主体の活動が活発化しています。フィリピンの姉妹校とグローバルな取り組みを行っている「PVO」や、SDGsを推進している「SEE」は生徒が立ち上げた有志団体。学年や部活の枠を超え、生徒主体の様々なチャレンジの場があります。