シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

湘南白百合学園中学校

2023年11月掲載

湘南白百合学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.受験生の誰もが当たり前のようにできてもらいたいと思って出題した問題

インタビュー1/3

まずはこの設問への想いや作成意図について教えていただけますでしょうか。

山代先生 中学・高校の国語科における教科学習・探究学習の中で、資料を用いて探究したり調べたりしていくことは非常に多く、生徒たちが自分の意見として発表できる機会はたくさんあります。今回の問題は、素早く資料を読み取って論理的にものごとを捉えていくことができる力を、小学生の間に身に付けているかどうかを尋ねる問いとして作問しました。

あえて「やさしい日本語」に着目した点について教えてください。

山代先生 「外国語=英語」という認識が小学生の間では強いのではないかと思っていますが、現在日本の中では英語を母国語としない外国籍の方もたくさんいらっしゃいます。そういった方々にもわかるような言葉、それはどういうものか?を考えるきっかけになってもらえればいいな、ということで出題に至りました。

試験での正答率はどれくらいだったのでしょうか?

山代先生 正答率は(1)が約98%、(2)が約99%とほぼ満点に近い状態でした。この問題は当たり前のようにできてもらいたいというのを念頭に置いて出題していますので、この問題自体で差をつけたいという考えは当初からありませんでした。

出題のベースとなった大阪市のホームページ「『やさしい日本語』で話してみませんか?」は以前から注目していたのですか?

山代先生 作問するにあたり、外国の方やわかりやすい言葉について注目しようと考えていました。私たちとしては「資料と文章との組み合わせの問いを作りたい」と思っていましたので、ネットで調べていたところ大阪市のホームページに記載されていた言葉に関する内容に注目し、「ぜひこれを活用してみよう」ということになりました。
問1のウの選択肢(参加するとき費用はけっこうです)にある「けっこう」に、複数の意味があります。外国の方からしてみたら言葉の意味だけで取ると非常にわかりにくいですでしょうね。

国語科/山代 裕之先生

国語科/山代 裕之先生

生徒に知識+やわらかな心を培ってもらいたい

学校の授業の中で「知識」+「やわらかな心」を大切にしているとのことですが、実際にはどのようなことをされているのでしょうか?

山代先生 当然知識も大事です。しかし同時に人間としての内面や生き方、大学に入ったその先につながるものといったやわらかい部分も人として極めて大事なのではないかと。それを本校で学ぶ6年間の中で育ませていきたい、と教師全員が思っています。入試問題のような問いを6年間やっていけばそれなりの力はつくかもしれません。しかし国語教育はそれだけはないと感じています。数値には表れないかもしれませんが、歌舞伎鑑賞や読書指導なども大事にしていることのひとつです。

体験している子と体験していない子との間で、読み取りの違いを感じることはありますか?

山代先生 価値観や見方は多様なので、昔の生徒と比べて違和感を覚えることはあります。しかし、生徒が感じたり思ったりすることを否定はせずに認めつつ、文章を読む中で筆者が語りたい、伝えたい部分にたどり着けられるように、丁寧な授業を心掛けています。

湘南白百合学園中学校 白百合ホール

湘南白百合学園中学校 白百合ホール

「良い文章を読んでもらいたい」ということを念頭に

国語の試験全般についてお伺いしたいです。

山代先生 大問は全部で3つにしていますが、1番は漢字の読み書きや多様な文章の読み取りにしています。2番、3番の説明文や物語文といったまとまった文章を読解していく力は言語事項が基礎になるので、その部分を問うことからスタートする構成となっています。

文章題に関して御校が大事にしていることはありますか?

山代先生 学校説明会でもお伝えしているのですが、入試はいうまでもなく選抜するための試験です。しかしそれ以上に、良い文章を読んでもらいたい、という思いを大切にしています。ですから、本校の受験が終わった帰りに「いい文章を読んだなぁ」という気持ちを持ってくれたらとてもうれしいです。そういうことにつながる文章選びをしたいと常々思っています。

白百合らしい文章を出したいという想い

文章選択には非常に力を入れているのですね。文章は国語教員の皆さんで持ち寄るのですか?

山代先生 そうですね。担当する先生はそれぞれ自分が良いと思った文章を持ってくるわけですので、なかには「それは小学生には難しすぎる」「これは白百合らしくないね」といった意見が出ると「えっ、どうして?」となるような場面はあります。

「今年はこういう方針で行こう」といったものはテスト全体としてあるのですか?それとも大設問ごとに「このような構成で行こう」ということは決まっているのですか?

山代先生 「全体的にこれで行こう」というのがあればよいとは思うのですが、決まった長さのものを白百合らしく小学生に向けて、といった文章を選ぶだけでかなり限定されてしまいます。絶対に被らないようにとは思っていないものの、他校で近年使われたのと同じ文章を使うというわけにもなかなかいきません。その限られた中で最良のものを選び、作っていくので、出来上がって初めて「今年はこういう感じで行くんだ」というのが見えてくるという感じです。

今のお話で「白百合らしく」という言葉が出てきましたが、具体的にはどんな文章なのでしょうか?

山代先生 この学校で授業をしているそれぞれの教師の想いが伝わるもの、また、言葉遣いや表現、内容などに注意を払いながら選んでくるといった感じです。

本校では国語一教科入試を数年前から行っていまして、今年はその入試の中で説明文として「ロボットと人間」という石黒浩さんの文章から出題しました。ロボットやAIは今時のテーマで、AIで言うとChatGPTも非常に話題になっています。ロボットと人間との関係の中で、「私って何?」といった根源的なテーマが文章の底に流れていました。問題作成時には、それを小学生に理解してもらえるように、またそれが白百合らしい問題にできればと思って作問していました。

記述がバランスよく出題されている印象があるのですが、それは以前からですか?

山代先生 4教科入試では必ず記述問題を設問するのが特徴のひとつとなっています。文字数は問いによって求められる解答が違うので異なりますが、大体100字前後の文章を書くものを出題、それが1~2題あります。一方で国語一教科入試では、漢字の読み書きは書かせることをしますが、文章をまとめたり理解したことを記述したりする形式ではなく、選択式としています。

湘南白百合学園中学校 グラウンド

湘南白百合学園中学校 グラウンド

インタビュー1/3

湘南白百合学園中学校
湘南白百合学園中学校1936(昭和11)年、フランスのシャルトル聖パウロ修道女会が創設した幼稚園を前身に、カトリックの精神に基づいた女子教育を行っています。全国7校の姉妹校とともに、「従順」「勤勉」「愛徳」を校訓に、神と人の前に誠実で、社会に奉仕できる女性の育成をめざしています。湘南の高台に立つキャンパスは、江の島や相模湾が一望できる自然あふれる環境で、校地内にはリスの姿も見られるほど。併設大学がありますが、東京大学をはじめとした国公立大学や難関私大、医学部への進学実績は堅調です。
6年間を通して宗教の授業を実施しており、キリスト教の普遍的価値観に触れながら、世界で関わる他者を尊重する姿勢や、自らの資質を活かして社会に奉仕する心を育てています。英語教育のレベルが高く、中学1年から少人数クラス、中学2年からは習熟度別少人数クラス制を実施。Eラーニングも取り入れ、個別最適な英語の学びを提供しています。また英語に堪能な生徒を対象とした極少人数のEクラスでは、海外のテキストを使用したハイレベルな授業を中学1年時より行っています。数学も中学1年から少人数クラス、中学3年からは習熟度別少人数クラスを開設。きめ細かな添削課題などで基礎学力を確かなものにするとともに、探究の授業を中心に、発言の機会や深く考える場面が数多くあります。探究の授業では、中学1年から高校2年まで、テーマと形態を学年ごとに発展・展開させながら教科の枠を超えて学びます。
近年は、新たな教育を見据えて学校の施設もリニューアルしています。創立75周年を記念して作られた、1200人収容の「白百合ホール」をはじめ、2020年には紙の書籍とICT機器を集約した「メディアネットラボ」が、2022年には有志の生徒がリノベーションを手がけたカフェテリア「リリースペース」が完成。全面人工芝に改修したグラウンドは、体育の授業はもちろん、運動部の生徒たちが活用しています。「リリースペース」を生徒が作り上げるなど、生徒主体の活動が活発化しています。フィリピンの姉妹校とグローバルな取り組みを行っている「PVO」や、SDGsを推進している「SEE」は生徒が立ち上げた有志団体。学年や部活の枠を超え、生徒主体の様々なチャレンジの場があります。