シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

山脇学園中学校

2023年10月掲載

山脇学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.さまざまな資料を読み解く力を育てることは、新学力を育てることにつながる

インタビュー3/3

社会科の3分野は卒業時に統合されていく

社会科の3分野や他教科と重なり合う部分はありますか。

猪野先生 大学入試の話になりますが、入試改革によって日本史で世界史が出たり、政治経済が出たりしています。その対策として、授業の内容を担当教諭に聞いたり、テキストを見たりして、「政治経済でこういうことやったね」「これとこれは関係しているね」という具合に、最後に統合するような形を取っています。

小論文指導にも社会科の先生が関わっています。それこそ総合社会科です。いろいろなテーマがあるので、「これは公民でやったね」「これは社会科でやったね」など、必然的に分野を統合するような形になります。

他教科との連携としては「探究基礎」という授業で、数学の先生と、我々社会科の先生がタッグを組んで授業を行っています。数学の先生がデータの処理の仕方や読み方を教えてくださいます。私たちはその数値から読み取れることは何か。どう考えるか、ということを指導します。そうした他教科とのコラボレーションでは教員側の気づきも多く、改めて社会科の役割を実感しています。

山脇学園中学校 掲示物

山脇学園中学校 掲示物

新学力に傾倒した授業で考える力を育てる

中学受験を経験すること、過去問を解くことは大学受験に生きてくる。社会で役に立ちますね。

猪野先生 そうなんですよ。(新学力に傾倒した授業は)考えることができる頭をつくります。早い大学では1年生からゼミがあります。自分で資料をまとめることなどは本校でもやっていますからつながっていますよね。特に武蔵大学などがそうなのです。「学校で取り組んできたことが使えます」と卒業生が言います。就職試験でプレゼンをやらせる会社もあるようです。入社後、グループディスカッションなども行うでしょう。本校の教育は、大学生や社会人になっても使えるスキルが身につくよう、意識しています。

分野を超えて「対話」する、ということはいつ頃から始めたのでしょうか。

猪野先生 本格的にやり始めたのは、中学、高校で新課程になるタイミングです。これまでも時々行っていましたが、学習指導要領が変わったので本格的に体系的にやろうということになり、授業の中に取り入れています。新課程の高校2年生を対象に、ある程度継続的に行うと慣れてきました。ただ、従来型の授業もやらなければいけないので時間数が足りません。どうしようか、と思っています。

知識がない議論は無知蒙昧で、ただの感情論になってしまうので、きちんと知識を詰めて議論して、ワークシートを書けるようにするための授業を試行錯誤しています。初年度は中2の歴史でワークシートの課題を作ってやらせてみましたが、ボリュームがありすぎて、次年度以降は少し減らしました。難易度を下げたのですが、学習指導要領の主体性、多様性、協働性などを育成する教育内容自体がすごすぎて、とてもできないと思いました。大学生レベルなのです。例えば「歴史で学んだ視点を現代の社会の主課題に応用していく力」とか。そこまではとてもできないので、もう少し目線を下げて、現実的なレベルにアレンジしています。

山脇学園中学校 ラーニングフォレスト

山脇学園中学校 ラーニングフォレスト

身近なところから地図や地形図に触れてみよう

小学生は地理をどのように勉強したら楽しいですか。

橋本先生 地理は現実世界のことを学ぶ科目なので、実際に行ってみることが一番の学びになります。小学生は中高校生と比べて、足を運んだことのある場所が少ないでしょうから、これから行く場所は、地理学習と結びつけることを意識するといいと思います。

知識がないと議論もできないですし、広がりもありません。小学生のうちはいろいろなことを吸収する気持ちでいてくれたらなと思います。例えば、家の周りの地図や地形図を見て、ここに郵便局がある、警察署がある、というように身近な、イメージできるところから触れていくといいかもしれません。

山脇学園中学校 校舎内

山脇学園中学校 校舎内

インタビュー3/3

山脇学園中学校
山脇学園中学校1903年に山脇玄、山脇房子夫妻により牛込白銀町に設立された。3年後には赤坂檜町に新校舎を建設し、移転とともに高等女子實脩学校となった。1908年には高等女学校令にあわせて山脇高等女学校と改称し、1935年には東洋一の女学校の校舎と称された白亜の新校舎を、現在の地である赤坂の丹後町に建設、移転した。
初代校長山脇房子は、建学の精神を「高い教養とマナーを身につけた女性の育成」とした。創設当時、明治という時代の中にあって、「良妻賢母」が女子教育の目標とされることが多い中、夫妻の理想は、欧米諸国のレディに見劣りしない教養ある女性を育成することにあった。2023年で創立120周年を迎え、豊かな教養と高い人間性を育む伝統の継承と、未来社会で活躍する力の育成をめざしている。
国際社会で活躍する志と資質を育成する「イングリッシュアイランド」、科学を通じて社会に貢献する志を育てる「サイエンスアイランド」、蔵書を収納する書架に加え、グループワークやプレゼンエリアを備えた探究活動の拠点となる「ラーニングフォレスト」のほか、最大300の自習席を配置した「セルフスタディアイランド」など、施設も充実している。これらの施設も活用し、人文・社会・自然の各分野の視点を融合した「総合知」をコンセプトに、探究活動や教科横断型授業で、社会で活用できる実学的な学びを実施している。
中学1年では「琴」、中学2年で「礼法」、中学3年で「華道」を習う。ダンスは体育とは別で6年間必修である。体育祭で踊る、中学3年の「メイポールダンス」と高校3年の「ペルシャの市場にて」は、山脇学園の伝統となっている。