シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

品川女子学院中等部

2023年10月掲載

品川女子学院中等部の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.入試問題の構成を大きく変更

インタビュー2/3

最後まで解いてもらうことを大切に

入試問題の構成を大きく変更されたのはどんな意図がありますか。

木村先生 2023年度入試から、大問1の計算問題を2問から4問に、また大問2と3の一行問題を大問2に集約しました。そして、3題あった記述の大問を1題減らして2題にし、大問は5題から4題に変更しました。
本校の対策として、記述問題3題のうち苦手な1題は“捨てる”という指導を受けている受験生もいるようでした。それは本校にとって本意ではありません。捨てられるなら、元から問題を捨ててしまおう、最後まで粘り強く解いてくれるように問題の構成を変えました。
今回、計算問題に虫食い算を入れました。虫食い算は結構がんばらないと解けませんから、粘り強さを問う問題として固定していこうかなと思っています。

問題構成を変えて、最後まで解ききった受験生は増えましたか。

木村先生 昨年度までは、記述問題の1題丸ごと無答という答案が目立ちましたが、今年度はそうした答案は少なく最後までがんばって解いてくれた答案が多くなったように思います。

品川女子学院中等部 2階ホール

品川女子学院中等部 2階ホール

生徒を本気にさせる工夫を

木村先生 今年の中1の中には、エマープは本校のオリジナル用語だと思っていた生徒がいました。エマープを知っている生徒が、実は数学用語だと説明して盛り上がっていました。
教科書では出てこないけれど大学受験では題材にされることがあるオイラー円を、脱線して教えると意外と盛り上がったりします。教科書の公式を使いこなすことも大切ですが、教科書に載っていない、「無限とは」といった雑談的なことを話すと生徒は面白がります。
中学受験である程度基礎ができているので、中学では教科書以外のことも触れる余裕があります。こうしたちょっとした余計な知識が、最終的に大学受験の下地になり、もっと先の学びに生きてくると思います。
数学のおもしろさをどうやって伝えるか。生徒を本気にさせるように、教員はあの手この手で工夫しています。

品川女子学院中等部 美術室

品川女子学院中等部 美術室

中学受験の経験を数学の理解に生かす

木村先生 小学校の算数(具体化)と中学校の数学(抽象化)への橋渡しがうまくできていないのではないかと、長年思っていました。具体化から抽象化へスムーズにつながるようにグラデーションができればいいのですが、数学になった途端、「算数は忘れてください」という傾向があります。
算数と数学をつなぐのに、中学受験は結構理に適っているのではないかと、私は考えています。具体的なことから抽象的なことへ持っていくために、いろいろな学習をさせているからです。
算数が大好きだった生徒が、数学が大嫌いになることがあります。別ものだと思わせてはいけないなと強く思います。私はつるかめ算を題材に連立方程式の授業をしたりもします。「つるかめ算ではこう解いていたけれど」ということをグラデーションとしてワンクッション挟むだけで、生徒は同じものと見てくれます。生徒は「それ、知ってる!」となるので、式にしたときに「xとyに変わっただけなんだ」と気づいてくれます。中学受験の経験を生徒にフィードバックしてあげることが、生徒の理解や定着につながると考えています。

品川女子学院中等部 掲示物

品川女子学院中等部 掲示物

インタビュー2/3

品川女子学院中等部
品川女子学院中等部1925(大正14)年に荏原女子技芸伝習所が開設。戦後、品川中学校・高等学校となる。1990(平成2)年には制服を新しくし、1991年に現校名に。2004年には高校募集を停止し、完全中高一貫体制に移行。受験にも十分対応できるシステムで学力の向上をはかる。創立100周年を迎える2025年には新校舎が完成する。
新校舎は学年ごとにフロアを分けており、廊下が広く、さまざまな活動ができる。
「世界をこころに、能動的に人生を創る日本女性の教養を高め、才能を伸ばし、夢を育てます」というミッションのもと、社会の問題を発見し、多様な人を巻き込みながら解決に向けて一歩踏み出す「起業マインド」を育てる。そして、「28歳になった時に社会で活躍できる女性を育てる」という「28プロジェクト」に取り組んでいる。総合学習での企業訪問や起業体験は、学習への動機付けともなっている。平日の補習・講習と年4回の担任面談で、きめ細かい進路指導をおこなっている。
コミュニケーション能力の育成や、国際社会で活躍するための基礎となる英語能力の育成に力を入れ、英検指導もおこなう。完全中高一貫体制で、独自のシラバスに沿って高2までに無理なく大学進学に対応できる学力を身につけ、高3で進路に応じた選択科目や演習によって実践的学力を養成する。中学では基礎力を鍛えるため、補習や講習もきめ細かい。高校生は20:00まで学校で自習が可能。
国際化教育プログラムも充実しており、海外留学生のうけ入れ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランドの姉妹校への留学、中3の修学旅行(ニュージーランド)などで「生きた英語」「異文化」を学ぶ。宿泊行事、合唱祭、文化祭、体育祭、芸術鑑賞、校外学習など行事も多種多彩。茶道・華道・着付けの指導もある。クラブは38あり、バトン、ダンス、吹奏楽部などが部員が多い。利用者の多い図書館の蔵書は42,000冊。