出題校にインタビュー!
品川女子学院中等部
2023年10月掲載
品川女子学院中等部の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.素数は整数の中でも大切な概念
インタビュー1/3
小学校で扱わない素数を題材にした理由
出題の意図を教えてください。
木村先生 出題のきっかけとして大きかったのは、学習指導要領の改訂で小学校で素数を扱わなくなったことです。そして、生徒の「数感(数の感覚)」が鈍ってきたと感じるようになったからです。
数感は計算力にも関係します。例えば、この問題にも関係する「91」という数が何で割り切れるのか、直感的にわからない。「97」はどうかというと、2で割り切れないのはさすがにわかるけれど、2、3の次は5で割れるか確かめるところを、4で確かめようとする入学者が一定数見られるようになってきました。整数に限らず、数字を扱う力が少し落ちてきているのではないかと思ったのです。
小学生の算数として押さえてほしい力として、整数はとても大きなウエイトを占めると思っています。整数の中でも大切な概念である素数を、小学校で扱わなくなってしまったのはかなり大きなことだと感じています。素数について何か問いかけられたらと思い、リード文に素数の定義を入れて、素数を題材にした問題を出題しました。数の感覚を問う問題は意識して出題しています。
数学科/木村 貴彦先生
「素数の出題を検討」と予告
正答率はいかがでしたか。
木村先生 実は、第1回入試は受験者平均が71.3点、合格者平均82.1点と設定の50~60点台よりかなり高くなってしまいました。これは、2023年度入試から出題の構成を変更しことが関係していると思います。正答率はその前提で聞いていただきたいのですが、受験者平均は、(問1)が78.2%、(問2)が62.9%、(問3)が38.2%、合格者平均は95.9%、80.0%、52.9%でした。
この問題が想定より正答率が高くなったのは、事前に出題ポイントをお知らせしていたことも関係していると思います。2023年度は「平方数と素数の出題を検討しています」ということを、入試説明会を通じて受験ガイドでお知らせしました。本校を熱望してくださるお子さんに入学していただきたいという思いがありましたから、本校を第1志望で受験したお子さんたちはしっかり対策してくれた、本校のメッセージは受験生に届いたかなと思います。
素数を知っているのは中1にプラスに作用
木村先生 なぜ、出題ポイントをそこまで絞ってお知らせしたかというと、ありがたいことに本校を熱望されるお子さんが多いためです。4回すべて受験するお子さんもいます。でも、残念ながらご縁がないこともあります。入試は学力を測るものではありますが、「品川女子に入りたい!」と熱意のあるお子さんであれば、入学後のミスマッチは少なくなるのではないかと思います。
複数回受験すればボーダーラインが考慮されますが、熱望組を何とか優遇できないかと考えたのです。受験生は「素数の問題が出る」と思って対策していますから、この問題をがんばって解こうとしてくれたでしょう。
素数がわかって入ってきた生徒が一定数いる、100までの素数を覚えているだけでも、中1の数学の取り組みやすさは全然違ってきます。現在の中1は数学に対してマイナスイメージを持っている生徒は少ないと聞いていますので予告した甲斐があったと思います。入試問題が入学後の授業につながって、中1の数学にスムーズに取り組めるようになることを期待して、2024年度も出題ポイントの予告を行うことになりました。
品川女子学院中等部 校舎内
(問1)の「11」の誤答は条件反射的な間違い?
貴校を受験するお子さんなら塾で素数の知識を得ていると思われます。それでも受験者と合格者で差がついたのは、知っているかどうか以外の要素もあるのではないかと思うのですが、どのようにお考えですか。
木村先生 ここは意見が分かれたところで、素数を知らない受験生もいたでしょうし、文章を読みとれなかったのではないかとも考えました。近年、説明文は大学入学共通テストの関係から長めのものを出しています。エマープの要件として「同じ数字が並ぶとエマープではない」という表現を読み落としてしまったのではないかと推測しました。
ただ、(問1)で多かった誤答の「11」は、読み落としというより、二桁の一番小さい素数が11なので、条件反射で答えてしまった可能性が高いと思っています。
「17」という誤答も多かったですね。本校の中上位でも「13は3で割り切れる」と勘違いしている生徒がいて、数感のずれを感じます。3の段を言ってもらうと気づくのですが……。この大問は、(問1)、(問2)、(問3)と段階を踏んで解いていく問題です。(問1)の正答率の差がそのまま(問2)、(問3)に関わってくるので、(問1)はしっかり得点してもらいたいところでした。
(問2)は「5」の見落としが多かった
木村先生 初め(問2)はありませんでした。2桁のエマープの問題を出して、最後に3桁エマープの問題を考えていました。でも、2桁、3桁のエマープを見つけて終わりというのでは、思考の過程が見えません。そこで、その場で考えて試行錯誤する問題を出すことにしました。問題の意図が伝わるか、設問文の表現は何度も練り直しました。
9つの数字について確かめればいいのですが、誤答は「2、4、6、8」の偶数だけが多かったですね。5を見逃したのは想定通りです。(問1)は「素数AB」とありますが、(問2)はリード文の「ABとBAがともにエマープであるときのみを考えます」というところも読み取れるかどうか試しました。
(問3)の記述は伝えようとする意欲を評価
木村先生 (問3)の解法としては、6パターンをきちんと調べるのが本校の受験生に相応しいと考えています。中には、「AとBの差が大きければよい」という解答がありました。想定はしていましたが、そうしたとことを見抜けた数感の鋭い受験生がいたことは、採点していてうれしくなりました。
(問3)は「途中の計算や考えた過程もかきなさい」と指定しますが、その点はいかがでしたか。
木村先生 (問2)で4つの数字しか使えないことが分かっているので、組み合わせは6通りしかありません。すべて書き出して、何かしら試行錯誤の形跡が見られる解答には点数をあげました。エマープの組み合わせは4つしかないので、必ずしも6つ書かなくても、十分説明できていれば正解にしました。記述問題はどれだけがんばって伝えようとしたかというところを評価して点数化するように心がけています。
品川女子学院中等部 校舎内
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