シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

品川女子学院中等部

2023年10月掲載

品川女子学院中等部【算数】

2023年 品川女子学院中等部入試問題より

2、3、5などのように、1とその数自身のほかに約数がない整数のことを素数といいます。
また、ある素数について各位の数字を逆に並べると別の素数になるものをエマープといいます。
例えば、107という素数について、各位の数字を逆に並べてできる701も素数になるので107と701はエマープです。一方、313という素数は、各位の数字を逆に並べても、もとの数と同じ数なのでエマープではありません。

以下、十の位の数字をA、一の位の数字をBとする2桁(けた)の素数ABについて、ABとBAがともにエマープであるときのみを考えます。
(問3)については、解答用紙に途(と)中の計算や考えた過程をかきなさい。

(問1)考えられる2桁の素数ABのうち、最も小さいものはいくつですか。

(問2)1から9までの数字のうち、各位の数字AにもBにも使われないものはどれですか。すべて答えなさい。

(問3)2桁の素数ABとBAの差が最も大きくなるとき、ABとBAはいくつですか。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この品川女子学院中等部の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(問1)13
(問2)2、4、5、6、8
(問3)17と71

解説

(問1)
2桁の素数を小さい順に書き出し、エマープかどうかを調べていきます。
11……逆に並べても11なのでエマープではありません。
13→31……どちらも素数なのでエマープです。
よって、最も小さいABは13とわかります。

(問2)
例えば、23は素数ですが、各位の数字を逆にした32は2で割り切れるので素数ではありません。よって、23はエマープではありません。このように、AまたはBが2、4、6、8の場合は必ずABかBAが2で割り切れるので、エマープではありません。したがって、2、4、6、8はAにもBにも使われないことがわかります。
同様に、53も素数ですが、各位の数字を逆にした35は5で割り切れるので素数ではありません。このように、AまたはBが5の場合は必ずABかBAが5で割り切れるので、エマープではありません。したがって、5はAにもBにも使われないことがわかります。
以上より、AにもBにも使われないものは、2、4、5、6、8です。

(問3)
(問2)より、AとBに使われる数字は1、3、7、9のいずれかであることがわかります。また、各位の数字を逆に並べても、もとの数と同じになるものはエマープではないので、AとBは異なる数字です。
これらのことを使うと、2桁の整数は全部で90個ありますが、AとBの候補の組み合わせは(1、3)、(1、7)、(1、9)、(3、7)、(3、9)、(7、9)の6通りに絞れます。そこで、この6通りからできる2桁の数について、エマープかどうかを明らかにし、エマープである場合は差を調べていきます。
13→31……どちらも素数なのでエマープです。2つの数の差は31-13=18です。
17→71……どちらも素数なのでエマープです。2つの数の差は71-17=54です。
19→91……91=7×13より、19は素数ですが91は素数ではないので19はエマープではありません。
37→73……どちらも素数なのでエマープです。2つの数の差は73-37=36です。
39……39=3×13より、39は素数ではありません。(エマープでもありません。)
79→97……どちらも素数なのでエマープです。2つの数の差は97-79=18です。
以上より、差が最も大きくなるABとBAは17と71とわかります。

日能研がこの問題を選んだ理由

2023年4月掲載の『シカクいアタマをマルくする。』では「コラッツ予想」を題材にした問題をご紹介しました。この品川女子学院中等部の問題に登場する「エマープ」も、「コラッツ予想」と同様に多くの子どもたちにとって初めて出あう言葉だったでしょう。どちらも数が持つ不思議さや奥深さへと子どもたちを誘う問題です。

この問題の(問2)では、2桁のエマープで絶対に使われない数字を明らかにします。この問題を通して、子どもたちは素数の一の位の特徴に目を向けます。すると、(問3)で調べる場合の数をぐっと減らせることに気づくことができます。もしかしたら、子どもたちはその数の少なさに驚いたかもしれません。

また、問題の冒頭で「エマープ」の定義だけでなく、素数の定義も提示されています。これは、現行の学習指導要領から小学校で素数を扱わなくなったことに対する配慮でしょう。子どもたちに、もっと数が持つ不思議さや奥深さを感じてほしいという先生の想いがこの問題を通して伝わってきます。中には「3桁のエマープならどうなるのだろう?」という疑問が湧いた子がいるかもしれません。この問題は、そんな数の世界への探求の入り口ともいえるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。