出題校にインタビュー!
頌栄女子学院中学校
2023年09月掲載
頌栄女子学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.自分の頭で考えて、判断できる力を養おう!
インタビュー3/3
授業では教員も生徒も楽をしてはいけない
授業について教えてください。
小島先生 高3まで全員がタブレットを持っていますし、先生によりだいぶ差はありますけれども、理科の中でも授業に取り入れている方がいます。自分は正直なところあまり得意なほうではないので、タブレットがなければ授業ができない、というほど使ってはいません。
地学などの授業では、ハザードマップを自分で作らせたり、どういうふうに溶岩が流れるかをシミュレーションさせたりしています。高校の地学はほぼ開講されないので、中学生の間に体験的に学ばせようと、そういう授業を行なっている先生はいます。
ただ、全部をタブレットを活用した授業にしてしまうと力がつかないような印象を持っていますので、プリントを併用して自分で書くということも取り入れています。例えば化学でいうとエネルギー図などはタブレットで授業を作りやすいのですが、大学入試で化学を選択するのであれば、真っ白な紙に最初の線から書く力が必要なんですよね。大学入試が何よりも大事というつもりはありませんが、途中まで書いてあって、途中から埋めるような形であっても最初の線から書く力はつきません。そうならないように意識しています。タブレットを用いることにより、教員も生徒も楽をしてはいけないと思っています。
小島先生 授業については、教科として「こうしなければいけない」「こうしましょう」など、統一しようという向きはありません。教員それぞれの考えに従って行なっています。ただ、頻繁にお互いの授業を見せ合って、あるいは見合って、「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」というような意見交換は頻繁にしています。頻度としては、それぞれの教員が1学期に1回程度は見せているのではないかと思います。自分が本校に赴任した時と比べると、だいぶ風通しがよくなりました。先輩も、入ったばかりの人も、必ず見る。そして、先輩から学ぶだけでなく、若い先生からも学んで、良いところは自分の授業でも取り入れる、ということができています。
頌栄女子学院中学校 教室
中学生は実験や観察で興味を引き出す
理科の授業について教えてください。
小島先生 基本的に中学では理科への興味をもってもらえるように、実験や、下校庭のところにたくさん自然がありますので観察を取り入れています。
観察はどのようなことを行うのですか。
小島先生 例えば花を採取して、おしべとめしべに分けていき顕微鏡やルーペで観察するということをよくやります。女子校なので、花など植物だとやってくれるのですが、「昆虫でやりましょう」と言うと嫌がられます。もちろん平気な子もいて、教室に虫が入ってくるとふっと捕まえて外に逃がしてあげる姿も見られますが、全然受け付けない子もいます。
高校では受験を意識した内容が中心になります。授業への関心は学年によって違います。聞く姿勢をもつ子が多い年もあれば、理科があまり好きじゃない子が多い年もあり、ただ、質問は歓迎していて「聞いてくれれば受けるよ」という雰囲気は作れているのではないかと思います。
頌栄女子学院中学校 校内
必ず複数の資料を調べて判断する力を養ってほしい
子どもたちは組み合わせて考えることが苦手、ということでしたが、入学後の対策としてどのようなことをしていますか。
小島先生 組み合わせて考えることに限らず、考える力をつけるための時間を十分に取っています。1つのことに注目して、そこで安易に結論を出さずに、いろいろな資料を比べてみるというのは理科に限らず、どの教科でもすごく大切にしているところです。一番問題になっているのはチャットGPTもそうですが、それ以前からある、ネット情報の扱いです。いろいろな情報を拾ってきた1つのそれらしい記事、それらしい話に注目して、そこで終わってしまうということがあります。他の人はどう言っているのか、ということを調べずに、それで正しいと思って完結してしまうということは、本校の生徒だけでなく、他校さんでも、大人でもそういう傾向があると思うのですが、「それではダメだよ」と言っています。1つの資料でそう言っていたら、必ず複数の資料を調べて、その中で組み合わせて考えていく、正しいものを判断していく力を養わなければいけないと考えています。
それは探究活動の一部としても取り組んでいます。取り組んだからといって、組み合わせて考える力がすぐにつくか、というと必ずしもそうではないかもしれませんが、とりあえずそこは大事にしているところです。問題を解くだけだと、一つの解き方がわかっていれば答えを出せる場合が多いのですが、複数の解き方があって、Aという解き方では解けないけれど、Bという解き方では解けるとか。Bという解き方では時間がかかるけれど、Cという解き方を知っていると一瞬で解けてしまうとか。そういうことがありますので、1つのルートだけではなくて、「複数のルートで考えよう」ということは常々生徒に話しています。
身のまわりのすべてに興味をもとう
貴校らしい取り組みがあれば教えてください。
小島先生 CLD(コ•ラーナーズ•デイ)という研究発表会を行なっています。文化祭に近いイベントで、以前は学年単位で取り組んでいたのですが、コロナ禍で個人またはグループという、クラス展示よりももう少し小規模な単位に変えて、探究の要素を深めることにしました。論文を書くために、仮説を立てて、それに対して考察を深めていきます。
クラス単位で行なっている時は、正直なところあまり興味を持てずに関わらない子もいたのですが、みんながやらなければいけなくなったので、逃げられないというところが目に見えるメリットですね。
クラス単位の展示ですと、次の学年のクラスでは全く違うことをやることになるのですが、個人レベルの探究になったことにより、最初にやってみて興味をもったら、学年が上がるごとにそのテーマを掘り下げていくようなことも、もちろん認めていますので、1年で終わりではなく、3年、4年かけて深掘りする子も出始めています。そこはメリットだと思っています。ただ、クラス全員でわーっとやる良さもあるので、そちらも生かしたいなという思いもあって、悩むところではあります。
最後に、小学生に向けて、学習のアドバイスをお願いします。
小島先生 いろいろなことに興味をもつことが、もっとも大事なことだと思います。身のまわりにはいろいろなものがたくさんありますから、どういう形でもいいのでどんどん興味を持ってもらえれば、それはすべて理科の切り口になります。周囲にあるものを当たり前にしないで、これはなんだろうとか、これはどうしてこうなっているのだろうと、全てに興味をもって考えてもらえると良いと思います。
頌栄女子学院中学校 グリーンヒルハウス
インタビュー3/3