シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2023年09月掲載

頌栄女子学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.入試を突破するための勉強にとどまっていませんか?

インタビュー2/3

天王星食が話題となり問題は出しやすかった

天王星食が話題になりました。

小島先生 正直なところ肉眼で天王星は見えないですし、望遠鏡でも相当精度の高いものでなければ見えないですよね。ですから問題は、そのあたりは理解できていて冷めているというか、知識はしっかりしている子というイメージで作りました。

問題では、お父さんが頌子さんに押され気味ですよね。

小島先生 ちょっとではありません。かなり押され気味です(笑)。インチキなスケッチは別として、頌子さんのほうが筋が通っています。本校の校長が望遠レンズを使ったカメラ撮影が趣味でして、この時、天王星が欠けていき、ちょうど月のはじっこにきれいに入るところを写真に収めていました。びっくりするほどきれいに撮れていました。
天王星の件については、小学生ならテレビで見て「ふーん」で終わりだと思うんです。自分で望遠鏡を使って観察できる小学生などほとんどいないと思うので、(小学校や塾で)ただの月食の話で終わってしまってもしょうがないのかなと思っていました。ただ、天王星食があったおかげで話題になったので、問題は出しやすかったです。

頌栄女子学院中学校 物理室

頌栄女子学院中学校 物理室

不可能を可能にするための「気づき」を問いたい

毎年、楽しい素材を提供されていますが、普段からそういうものを探しているのですか。

小島先生 (素材は)普段から考えていることがきっかけになったり、電車などに乗っている時も何かネタはないかな、と考えているので、そういうものを使ったりしている部分はあります。ひょっとしたらこういうものも使えるかも、という感じで問題を考えていく形になるので、今回の問題のように、テレビのニュースになるようなものは扱いやすいです。ニュースにならなくても、小さい時から見てきて、あれ?なんか違うよね、というものがあれば、題材になるかなと思います。

どのような思いをもって問題を作成していますか。

小島先生 あれ?これ変だな?と思ったら、そこで終わらずに、先へ進んで、もしかしたらできるかも、と思ってほしいなということは常々思っています。この話に限らず、今、不可能と思われていることでも、一歩進めばできるかもということを考えられるような子が入ってきてくれればいいな、という思いが1つあります。

ただ、そういう問題ばかり出すわけにはいきません。本校に入りたくて、頑張って準備している子には入ってほしいという思いがあるので、あまり大きく出題の形式や難易度などは変えないように注意を払っています。過去問などをしっかり解いて、準備をしてくれれば点数が取れるような問題も、ある程度は出題するということを考えて問題を作成しています。今年の入試は出願者数が少し少なめでしたが、あらかじめ頌栄を考えてくれている子の受験率が高かったように感じています。正直、理科の平均点がかなり高かったんですね。最初から頌栄を受けたいと思って、過去問なども入念に勉強してきた子ができるような出題を含めるようにしているので、それが(平均点の高さに)影響しているのかなと思っています。

頌栄女子学院中学校 図書館

頌栄女子学院中学校 図書館

理科の4分野からまんべんなく出題

問題の構成は変わっていませんか。

小島先生 はい。第1回、第2回ともに4題構成で、物理・化学・生物・地学から1題ずつ出題しています。配点はぴったり25点ずつではないのですが、2割から3割の間に収まるようにバランスを考えて出題しています。

複数の先生が関わっていらっしゃると思いますが、どのように作問していますか。

小島先生 入試問題を担当先生方の間で、どの分野を担当したいか、を聞いて、「私はこの分野とこの分野をやります」という形で割り振りされるのですが、地学が専門の先生は少ないので、私が担当することが結構あります。私は化学が専門で、化学の問題を担当したこともありますが、化学の教員はたくさんいるので、私が化学の問題を担当する率は低いです。
立場上、最後に余った分野を担当することが多いのですが、今回のように出したい題材がある時は「こういう問題を出したいから地学をやらせて」と言うこともあります。

頌栄女子学院中学校 教室

頌栄女子学院中学校 教室

組み合わせて考えることが苦手な傾向が見られた

受験生の傾向として、感じていることはありますか。

小島先生 以前と比べて激しい変化が見られるかというとそうでもないのですが…。気になったのは、今回の問題のような論理的な発想力が必要とされる問題の正答率は高いのですが、この問題の前の、月の角度が変わっていく問題では正解率が低かったことです。組み合わせて考えることが苦手なタイプの子が多いのかなと感じました。
その前の問1、表から答える問題なども、冷静に考えればどうということのない問題なのですが、単位が違うものを表の中から読み取って、それを組み合わせて考えなければ正解にたどり着けません。複数のものを組み合わせて考える問題を出すと、途端に正解率が低くなるなということはちょっと感じました。

記述問題では採点中に基準を検討することも

問題を見ると採点が大変そうだなと思うのですが、どのように採点しているのですか。

小島先生 記述問題を増やしすぎると採点に時間がかかってしまい、他の先生からにらまれることになります(笑)。受験生が書ける量にも限度があるので、あまり増やしすぎないように配慮していますが、今回の作図の問題はそれほど採点が大変ということはなかったです。大問4の方位磁針の絵も、向きがあっていれば正解になります。それよりも生物のグラフのほうが、どこまでを許容範囲にするか、基準について話し合うことがあり、時間がかかりました。

何人くらいで採点しているのですか。

小島先生 10人くらいです。基本は理科の教員で採点しています。

頌栄女子学院中学校 グローリアホール

頌栄女子学院中学校 グローリアホール

インタビュー2/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。