シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2023年09月掲載

頌栄女子学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.普段から疑問をもつことを大事にしていますか?

インタビュー1/3

「こんな月はないよね」で立ち止まってほしくない

この問題の出題意図からお話いただけますか。

小島先生 お父さんのセリフの中にもあるように、「月の満ち欠けにもありえない絵だよ」ということに気づいてほしい。それが出題意図でした。こうした絵は、もともと子どもがよく描きます。月食ではなく、三日月のつもりで描いているのだろうと思います。古くは『月光仮面』の頃から、最近の絵で言うとディズニー映画『アラジン』などでもこういう月が描かれていて、月の上にキャラクターが座るというシーンもよくあります。ですから、子どもだけでなく大人でも、月の絵を描く時にこういう絵を描くことが普通にあります。

ところが、実際にこんな月があるか、と言うとないのです。ついついこうした絵を書いているけれど、学校で学ぶとこんな月はない、ということに気づいてほしいと思いました。こちらの望む子どもの姿です。ただ、「こんな月はないよね」では問題として成立しません。なによりそこで止まって欲しくないという気持ちもあって、条件を変えたらもしかしてできるのではないか、と思い立ってくれる子どもがいてくれたらいいな、という気持ちで出題させていただきました。

教頭/小島 和夫先生

教頭/小島 和夫先生

正答率は非常に高かった

可能性を考えることが、これからは大切になるのではないかと思います。そのあたりをどのように考えますか。

小島先生 「ありえない」で終わってしまったら、理科でも科学でもありません。そこに一歩踏み込んで、進めて考えるところに発展があると思います。そういうところに視点を置いて問題を選んでくださっているのであれば、こちらとしてはとても嬉しいです。
頌子さんの描いた三日月が、形としてはポピュラーですよね。本物の三日月を描こうとすると結構難しいのですが、この形だと描くことがそんなに難しくなく、誰が見ても月だと思ってくれます。そういうことから、みんながこの形を描くのだろうなと思います。
子どもはともかく、大人が映画や何かで出してしまうのも、科学的に正しいかどうかよりもパッと見て月だと分かってもらえるかどうかのほうが重要ということで、採用しているのだろうなということはわかります。

受験生はどんな答案を書いていましたか。

小島先生 正答率はものすごく高かったです。全く的外れなことを書く、あるいは全く書けないという子は少数でした。同じ大問の問2、「月食の見える角度」のほうが圧倒的に正答率は低かったです。自分で出題しておきながら、後々解いてみると結構考え込まないと答えがわからない問題で、きつすぎたかな、という反省がないわけではないのですが、それと比べると問3(掲載の問題)はかなりできていました。

頌栄女子学院中学校 校舎

頌栄女子学院中学校 校舎

月と地球以外のものを出して筋が通っている解答はなかった

正答率は予想通りでしたか。

小島先生 どういう解答を求められているのかを、そもそも予想できない受験生がもっといるのではないかと思ったのですが、思ったほどいませんでした。

解答の傾向を教えてください。

小島先生 筋が通っているものは全部正解にしようと思って採点を始めました。すると、すごくよくできているので、途中で採点基準を変えるべきか、という考えがよぎったのですが、できすぎているからと言って減点するのもちょっと違うので、そのまま◯にしました。完全に的外れな答えがなかったわけではありません。また、筋が通っていて違う切り口で説明している解答はなかったです。所々減点が入る答案は多かったですが、あまり的外れではない、ここには点をあげられるね、という部分が含まれている答案が多かったです。

案外大人のほうができないかもしれませんね。

小島先生 頭が固くなってしまっているとできないかもしれません。まさに「シカクいアタマ」になっていると…。(子どもたちは)あまり固定概念でもたないで、少し柔らかく考えてくれているのかなと思います。

頌栄女子学院中学校 礼拝室

頌栄女子学院中学校 礼拝室

問題が解けて満足してほしくない

会話文がリアルですよね。

小島先生 日常の生徒とのやりとりでもありがちです。質問しに来て、ある程度説明して、それに関しては生徒の中で解けてしまって、答えが出たから「大丈夫」と言って、そこで打ち切ってしまう子も結構いるのですが、そこで止まってしまうとちょっと足りないなと思うところもあります。同じ問題ならもちろん解けますが、(類似の問題が出た時にも対応する力をつけるためには)ここがこうだったらどうなるかな、と広げて勉強することが大切です。もう少し突っ込んでほしいな、という気持ちはあります。

答えを自分で出せないのに、「わかったから」と逃げて行くケースは置いておいて、答えを自分で出せた場合、そこで満足してしまうことは当然あるのですが、ただそれで満足して終わってほしくないなという気持ちがこちらにはあります。

インタビュー1/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。