今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
頌栄女子学院中学校
2023年09月掲載
2023年 頌栄女子学院中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
昨年の11月には、皆既(かいき)月食と天王星食が同時に起こるというとても珍(めずら)しい天体ショーが見られました。以下は、小学生の頌子さんとお父さんの会話です。
お父さん「部分月食が始まったよ。観察しないのかい?」
頌子さん「ん〜、月食は珍しくないからね。皆既月食になった頃(ころ)に見るよ。」
お父さん「でも、天王星食も同時っていうのは、すごく珍しいんだよ。」
頌子さん「知ってる。でも、月が皆既食になってからだよね。それに、天王星は肉眼じゃ見えないし、道具使っても、双(そう)眼鏡くらいじゃ見えないよね。」
お父さん「それはそうなんだけど。でも、月食の様子をスケッチする宿題が出ていたんじゃないのかい?」
頌子さん「もう描いてあるから大丈(じょう)夫。」
そう言って、頌子さんは図1の絵をお父さんに見せました。
お父さん「これは月食の絵ではないし、月の満ち欠けの絵でもないよ。現実には存在しない月の絵だよ。」
頌子さん「えっ、そうなの?じゃあ、描き直さなきゃ。」
(問)現在の月と地球では頌子さんが描いた上のような月食は起こりません。現実には見ることはできませんが、架(か)空の話として地球や月がどのようになれば、上図のような月食を見ることができるようになりますか。考えられる答えは複数ありますが、そのうちの1つを答えなさい。ただし、答えだけでなく、理由も簡単に説明しなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この頌栄女子学院中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
例1)月に映る地球の影が月の大きさよりも小さければ図のように見えるようになる。したがって、地球が今の大きさよりも小さくなればよい。
例2)地球の影よりも月の大きさが大きければ図のように見えるので、月が今の大きさよりも大きくなればよい。
例3)月に映る地球の本影が月の大きさよりも小さければ図のように見えるので、月と地球のきょりが今よりも遠くなればよい。
解説
月食は宇宙空間に長く伸びる地球の影が月に映ることによって起きます。地球の直径は月の直径の約4倍なので、実際の月食では、大きな地球の影の中に小さな月が入っていきます。
頌子さんが描いた図を見ると、大きな月の一部が小さな地球の円形の影によって欠けています。もし、頌子さんが描いたような月食が見えるならば、地球の影の大きさが月よりも小さいはずです。そのような状況になるのは、次の➀~③のような場合だと考えられます。
- ➀地球の大きさが今よりも小さい場合
- ②月の大きさが今よりも大きい場合
- ③月と地球のきょりが今よりも長い場合(月が地球の本影に入るときに月食が起こります。この本影は地球から離れるほど小さくなります。)
また、➀と②を合わせた「今よりも、地球の大きさが小さくなり、月の大きさが大きくなる」という場合も考えられます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
2022年11月、全国各地で皆既月食が観測されました。特に、東京近辺から西にかけての地域では皆既月食中に天王星食も観測されました。皆既月食中に惑星食が見られるのは、安土桃山時代にあたる1580年以来、442年ぶりということで、大きな話題となりました。
この問題は、月食に関するお父さんと頌子さんの会話文をもとにして、どのような条件になったときに頌子さんが描いたような月食が見られるのかを推測していきます。子どもたちは、自分が持っている月食のしくみに関する知識と、問題中に示された文章や図を結びつけながら、頌子さんが描いたような、現実には見ることができない月食が起こる条件をさぐっていきます。
この問題に取り組むことによって、学んできたことがらと問題で示された情報を結びつけながら、未知の状況について筋道を立てて推測する過程を体験することができるでしょう。また、この問題に取り組む際の視点がきっかけとなって、現在ではあり得ないと思われている現象であっても、条件によっては起こりうるという可能性に目を向けることにもつながるでしょう。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにいたしました。