シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

淑徳与野中学校

2023年09月掲載

淑徳与野中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.小学生が日常生活で体験できる素材を含んだ文章を選定

インタビュー2/3

次に国語全体の入試のコンセプトについても教えてください。素材文を選定する際に意識していることはありますか?

黒田先生 受験生の年齢層からするとちょっと難しい、やや硬質な文章を選んでいる印象はあります。

小澤先生 論説文はわりと新しいものを、小説は人と人との関係や登場人物の気持ちのやり取りが読み取れるようなものを選びます。小学生が普段の生活において体験できるものが描かれていないと難しくなってしまうので、そこは注意しています。なるべく小中学生が登場人物になっている小説を探しますが、いいものが見つからず、子どもも出てくるけれど大人が絡むようなものになってしまうこともありますね。

漢字や語句の意味を問う問題はずっと出され続けていると思いますが、何かこだわりはあるのでしょうか?

小澤先生 これは最初からのコンセプトで、語彙力を身に付けて欲しい、そういう生徒がその能力に基づいて文章をきちんと読み取ってほしい、と思って出しています。漢字の書き取りの問題は読み方もチェックしたうえで、小学校で習う範囲からのみ出題しています。

中等部教頭・国語科/小澤 幸子先生

中等部教頭・国語科/小澤 幸子先生

日常生活や普段の会話では使わない言葉こそきちんと調べる癖を

昔はできていたけれど最近はできていないな、と変化を感じることはありますか?

小澤先生 言葉の意味の正答率は意外と低いです。また、合格者と不合格者の差が年々開いています。不合格の子が選択しているものをみると、一見その意味でもつながりそうだけど、言葉の意味としては違う選択肢を選ぶ率が高いように感じています。

池上先生 ある一単語がわからなくても全体はなんとなく読めてしまうんですね。入試だけでなく定期考査でも、言葉の意味を問う問題を出す際に、辞書的な意味ではなくこの文脈にありそうな意味を不正解の選択肢としてしのばせると結構間違ってしまいます。調べる癖が身に付いていないからです。

小さい時から日常生活やしゃべり言葉では使わないけれど文章ではよく出てくる語彙にセンサーをはたらかせ、調べて書き留めていくことをしないと、学年が上がるにつれてわからない語彙が増えていき、主観的な読みをする癖が付いてしまいます。それは学年が上がって文章の抽象度が上がっていくとより顕著になりますので、普段日常会話で使わないようなものはあえて狙って「調べなきゃいけないんだぞ」といった意識づけをしたいですね。

黒田先生 「結局そういうことがこれからも大事なんだよ」ということを本校としては入試問題から押さえていることを、ある種のメッセージとして受験生に送っていると考えていただければと思います。

淑徳与野中学校 図書室

淑徳与野中学校 図書室

現代文は社会(近代史)の背景知識があると読みやすくなるケースも

改めて御校の国語の授業の特徴について、どのようにお考えかを教えてください。

小澤先生 言葉の意味や漢字などについては、漢字テストはほぼ毎週やりますし、文章を読むときに予習として辞書を引いてノートに記載したものを教師がチェックするといった基本的なことは行います。1年生・2年生では「表現の時間」と「読解の時間」で担当者を分けているのですが、表現の時間では因果関係、根拠と具体例、対比といった、すじみちを立てて書く方法を学びます。その過程で生徒たちの解答を具体例として検証しあうこともあります。みんなの答えと比べてみてみると、自分でも「これはまずいな」ということがわかってきますので、そういった授業を一方では展開し、もう一方では文章を読んで感覚を深めることを行っています。

池上先生 本校では、中学から入学した生徒(内進生)と高校から入った生徒(高入生)は、講座などでは選択になるので混ざりますが、クラスでは混ざっていません。現代文に関し「構造を読め」とうるさく言っているのですが、そういうものについてきやすいのは内進生のほうが多いですね。

本校は中学時代に近代史をしっかりやっているため、その近代史の背景知識が現代文を読むときに役立っていると感じます。ベースとなる複数教科を横断した知識は内進生のほうがしっかりしていると思います。

小澤先生 みんな、中学受験でいろんなことを勉強しているなと感じますね。受験勉強では小学校の範囲と言いながら半分中学校の範囲までやっていたりするので、評論などを読んだ際に「こういう人知っている?」と聞くとだいたい知っているのにはびっくりします。

黒田先生 とはいえ、知ってはいるがそれが何なのかははっきりわかっていない生徒が、最初は多いです。それが、中3や高1あたりできちんと授業を聞いてわかってくると繋がってきます。

淑徳与野中学校 理科室

淑徳与野中学校 理科室

インタビュー2/3

淑徳与野中学校
淑徳与野中学校1892(明治25)年に輪島聞声により淑徳女学校が開設。1946(昭和21)年に淑徳女学校第8代校長・長谷川良信により与野町に淑徳女子農芸専門学校と淑徳高等女学校与野分校が設立。48年に現校名となり、2005(平成17)年に中学校を開校。2015年高校校舎を中学隣接地に移転。
中学校舎は、「自然との共生」をテーマにしており、風力発電やエコガーデンを組み込むなど環境にも配慮。吹き抜けがある玄関、南向きの窓から太陽光がたくさん入る普通教室、和室や特別教室、体育館、運動場など最新鋭の設備が整う。
「仏教主義に基づく心の教育」「21世紀を生きていくための国際教育」「生徒の個性を伸ばし、難関大学進学の希望をかなえる進学指導」など、埼玉県トップレベルの女子進学校・淑徳与野高校で培われた指導方針を継承する。校訓は「清純・礼節・敬虔」。「淑徳の時間」の中での宗教の授業、宗教行事などを通じ「常に感謝の気持ちを忘れないで生きていく」という心の教育を実践する。
内進生は原則として外進生とは別クラスで国公立・難関大学現役合格を目指す。高2・高3では文系・理系に分かれ目標大学に応じた指導を展開。中1から夏季・冬季特別指導、進学講座など、塾に通わなくても大学受験に対応できる体制が整っている。また、学習サポートと呼ばれる指名制の面談は各教科で実施。論文作成など「書く」機会を多く設定し、思考力を育てている。英語のテキストは『ニュートレジャー』を使用。授業は週5日制、隔週土曜日は中国語入門などの土曜講座を開講する。
学期制でなく、1年間を5つに分けた「5ステージ通年制」で学校生活を進めるのが特色。「適応・挑戦・確立・変革・未来」と各ステージで目標を定め、学習も行事も集中して取り組む。行事はオリエンテーション合宿、文化祭、芸術鑑賞会、花まつり、み魂まつりなど各ステージに合わせて行われている。韓国、タイ、台湾、イギリス、アメリカ、オーストラリアに姉妹校・提携校をもち、中2全員参加の台湾海外研修、高2アメリカ・オレゴン修学旅行のほか、長期・短期の留学なども用意。中3の修学旅行は京都・奈良で、日本文化への理解も深める。クラブ活動は剣道、バトン、サッカー、吹奏楽などが活躍。