シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

淑徳与野中学校

2023年09月掲載

淑徳与野中学校【国語】

2023年 淑徳与野中学校入試問題より

次の文章を読み、あとの問に答えなさい。

「柔(じゅう)よく剛(ごう)を制す」という言葉がある。
見るからに強そうなものが強いとは限らない。柔(やわ)らかく見えるものが強いことがあるかも知れないのである。
昆虫(こんちゅう)学者として有名なファーブルは、じつは『ファーブル植物記』もしたためている。その植物記のなかで、ヨシとカシの木の物語が出てくる。
ヨシは水辺に生える細い草である。ヨシは突風に倒れそうになったカシの木にこう語りかける。カシはいかにも立派な大木だ。しかし、ヨシはカシに向かってこう語りかける。
「私はあなたほど風が怖くない。折れないように身をかがめるからね」
日本には「柳(やなぎ)に風」ということわざがある。カシのような大木は頑強(がんきょう)だが、強風が来たときには持ちこたえられずに折れてしまう。ところが、細くて弱そうに見える柳の枝は風になびいて折れることはない。弱そうに見えるヨシが、強い風で折れてしまったという話は聞かない。柔らかく外からの力をかわすことは、強情に力くらべをするよりもずっと強いのである。
柔らかいことが強いということは、若い読者の方にはわかりにくいかも知れない。正面から風を受け止めて、それでも負けないことこそが、本当の強さである。ヨシのように強い力になびくことは、ずるい生き方だと若い皆さんは思うことだろう。
しかし、風が吹(ふ)くこともまた自然の節理である。風は風で吹き抜ぬけなければならない。自然の力に逆らうよりも、自然に従って自分を活(い)かすことが大切である。
この自然を受け入れられる「柔らかさこそ」が、本当の強さなのである。

(稲垣栄洋(いながきひでひろ)
『植物はなぜ動かないのか 弱くて強い植物のはなし』より)

(問)世の中には、――部のように「柔らかく見えるものが強い」ことがよくある。これにあてはまる具体例を自分で考え、「見るからに強そうなもの」と「柔らかく見えるもの」の両方をあげながら説明しなさい。

  • 本文中に出ている「ヨシ」、「柳」以外の具体例を考えること。
  • 具体例は、生物、人間、物、社会、どんな例でもかまいません。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この淑徳与野中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

ゆるがない意見をもったリーダーよりも、明確な意見は持っていないが、広く他の人の意見を聞き入れるリーダーの方が、多様な意見をとり入れてよりよい方向を模索し、集団を率いることができる。

解説

この問題では、文章の中で提示されている「柔らかく見えるものが強い」という内容をふまえ、これにあてはまる具体例を自分で考えて記述していきます。

文章の中では、『ファーブル植物記』の中に書かれている水辺に生える細い草であるヨシと、立派な大木であるカシのやりとりや、「柳に風」ということわざが、「柔らかく見えるものが強い」ことの例として挙げられています。

これらの例も参考にしながら、「見るからに強そうなもの」と「柔らかく見えるもの」を自分で考えて、どのような点で「柔らかく見えるものが強い」のかを説明していきます。具体例を挙げる際は、「見るからに強そうなもの」と「柔らかく見えるもの」を対照的にとらえる必要があるでしょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

この文章では、『ファーブル植物記』の中に書かれている水辺に生える細い草であるヨシと立派な大木であるカシとのやりとりや、「柳に風」ということわざを例に、「自然の力に逆らうよりも、自然に従って自分を活かすことが大切である。この自然を受け入れられる『柔らかさこそ』が、本当の強さなのである。」ということが述べられています。そして、問いでは「柔らかく見えるものが強い」という具体例を受験生自身が考えて記述することが求められています。提示されている情報と、自分自身の知識や経験を結びつけて考えることは、新しい視点でことがらをとらえるきっかけにもなることでしょう。

この問いでは、「見るからに強そうなもの」と「柔らかく見えるもの」の両方を具体例として挙げる必要があります。どちらも単独で見るとたくさんありそうですが、比較して取りあげるのは一筋縄ではいきません。受験生たちも限られた試験時間の中で、試行錯誤しながらこの問いと向き合ったのではないでしょうか。また、設問中に「具体例は、生物、人間、物、社会、どんな例でもかまいません。」とあることも、考えごたえや、答えの多様性を生んでいるのではないかと日能研ではとらえました。

この文章を読んだり、問いに取り組んだりする中で、受験生の中にはさまざまな学びや気づきがあったのではないかと考えられます。この問題が、受験生の今後の学びや生き方にもつながっている点に魅力を感じました。このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにいたしました。