出題校にインタビュー!
広尾学園中学校
2023年08月掲載
広尾学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.3コースそれぞれの個性を伸ばす
インタビュー3/3
中1から授業その他でプレゼンの場数を踏む
町田先生 本校では特にプレゼンテーションに力を入れており、授業では頻繁にグループで調べたことをプレゼンしています。文化祭では自分の興味関心のあるテーマについてプレゼンします。生徒はかなり苦労していますが、高2のプレゼンは大人顔負けの仕上がりです。
中1から相当な場数を踏んでおり、教員や仲間のアドバイスを受けてブラッシュアップしていく過程で、構成力、スライドの見せ方、話し方などのプレゼンスキルがどんどん上達していきます。高校2年生は沖縄修学旅行(平和学習)の事前学習として沖縄について調べて、情報を共有しています。こちらが指示しなくても各グループが素晴らしいプレゼンをしていて、頼もしく感じました。
こうして6年間で鍛えたプレゼン能力は大学でかなりのアドバンテージになっていると、卒業生から言われています。
広尾学園中学校 サイエンスラボ
自己満足ではない、企業の課題解決策を提案
町田先生 中3の公民(経済)の授業では「クエストエデュケーション」という教育プログラムを導入しています。企業が直面している課題の解決策を生徒が考え、企業にプレゼンします。漠然とプレゼンするのではなく、企業からのミッションに取り組むところが面白く、生徒たちはグループで力を合わせてオリジナルの答えを見つけ出そうと、主体的に取り組んでくれています。
このプログラムは社会科教員のボトムアップで実現しました。こうした新しい取り組みにもどんどんチャレンジしていきたいと思っています。
自分と違う立場にも一定の利がある
授業で心がけていることを教えてください。
町田先生 社会の諸問題について深く考えられる思考型の授業づくりに努めています。例えば、私の公民の授業ではディベートを行うことがあります。今学習している単元に沿ったテーマ、例えば平和主義なら憲法第9条改正の是非を、肯定側・否定側に分かれて議論します。
ある物事の一面しか見られないのは危険なことです。肯定側にも否定側にも一定の利があるものです。自分の意見と異なる立場に立ち、議論を構築することで一定の利があることに気づいてもらいます。
4対4程度で議論し、他の生徒はオーディエンスとして議論の優劣を判定します。メリット・デメリットの大小を比較する過程で、物事を多面的にとらえる力を身につけることができます。本校には3つのコース(本科、医進サイエンス、インターナショナル)がありますが、それぞれのコースごとに議論に特徴があります。インターナショナルコースでは多くの国籍の生徒がおり、積極性が高くさまざまな意見が出て議論が止まりません。
広尾学園中学校 掲示物
意見を共有して多様な意見を理解する
町田先生 また、議論のテーマについての意見をGoogleフォームに書き込んでもらい、賛否の結果などをその場で発表し、意見を共有し議論を深めることもしています。大学受験を控える高校2年以降はディベートする時間が取れないので、代わりにディベート的なテーマについてGoogleフォームを活用してクラスで意見を共有しています。
周りの意見の「これくらい」がわかると、率直に意見を出すようになります。本科や医進サイエンスコースでは、まずGoogleフォームで自分の意見を書かせてみんなで共有するステップを踏むと議論が弾みます。
医進サイエンスコースの生徒は物事を合理的に考える傾向があり、ときに結論が行き過ぎてしまうこともあります。本コースは医学・医療の道を目指す人材や科学分野の研究者を育成するコースです。将来、患者さんやご家族の気持ちに寄り添える医療人になってもらいたく、合理性や効率性に偏らず多様な視点を持てるような指導を心がけています。
哲学の知識を自分ごとに落とし込む
町田先生 3つのコースで教えていますが、それぞれに教え甲斐があります。哲学の場合、インターナショナルコースの生徒は必ずしも大学受験とは直結しないこともあってか、自分ごとに落とし込んで考えることが多くなります。
ハイデッカーの実存哲学について、時間の概念、死への意識と現実の時間の意義を生徒に話すと、本科や医進サイエンスコースの生徒は哲学的な用語を押さえようとしますが、インターナショナルコースの生徒は自分ごとに置き換えています。
ある生徒は、身近な人が亡くなり自分も決して死と無縁ではないとおののいたが、「だからこそ、有限を意識して生きていかなければいけない」とハイデカーを学んで改めて感じたそうです。物事を深く考える力がついていると心強く思いました。
世の中の真偽を判断できる力を身につけさせたい
中高6年間でどんな社会科の力をつけてほしいと思っていますか。
町田先生 思考するには知識が必要です。この社会のさまざまな出来事やその要因についての知識を、広く深く身につけてほしいと思っています。その上で、多面的・多角的に物事をとらえる力を育てていきたいですね。
世の中にフェイクニュースがあふれ、ChatGPTが注目されています。今や知識そのものはネットで検索すれば簡単に入手できますが、その真偽を判断したり、判断するための材料を得たりするのは人間自身ですから、そのための力を授業で育てていきたいと思っています。
情報の真偽を、ICT端末で調べる際に検索順位の一番上の情報を信じる、みんながリツイートしているから正しい、といった安直な判断ではなく、複数の情報源に当たって自分の判断の根拠を見いだすように指導しています。
近年、生徒たちがICTルームの運営を主体的に行うなどといった場面をたくさん見ることができうれしく思っています。生徒の「これをやりたい!」という熱意に負けないように、生徒に向き合っていきたいですね。
広尾学園中学校 体育館
インタビュー3/3