シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

広尾学園中学校

2023年08月掲載

広尾学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.論述問題は民主主義がテーマ

インタビュー1/3

似ているけれど違う「寄付」と「応援消費」

町田先生 本校は論述問題を毎年出題しています。よく取り上げるテーマが「民主主義」です。
過去には、多数決ではなく「ボルダルール」という順位に点数を付ける得点式の投票の仕組み、全国民の中からくじ引きで選ばれた人が政治を担う「くじ引き民主主義」、ポピュリズムの温床になっている「フィルターバブル」という自分の考え方や価値観のバブル(泡)に閉じ込められる現象などについて出題しました。

今回、クラウドファンディングというテーマで作問できないか思案していたとき、水越康介著『応援消費 社会を動かす力』(岩波新書)を読み、交換する「応援消費」と贈与する「寄付」という人を助けるという意味では共通する2つの仕組みの違いについて受験生に考えてもらおうと、この問題を作りました。
作問で意識したのは、「自分ごと」として物事を考えられるかどうかです。リード文に応援消費の具体例を出しましたが、「それなら、これも応援消費かな」と自分の身の回りに置き換えて考えてもらえるといいですね。
さらに、応援消費と寄付がそれぞれどんなものか具体的にとらえて、その違いを抽象化できる思考力を試そうと、応援消費が寄付より優れている点を2つ挙げてそれぞれ理由を答えてもらいました。

本科コース統括長・教務部統括部長/町田 貴弘先生

本科コース統括長・教務部統括部長/町田 貴弘先生

合格者と受験者の正答率は約10%差

出来具合はいかがでしたか。

町田先生 正答率は受験生全体で41.8%でした。詳細は、2つとも正解(4点満点)が18.4%、1つだけ(2点)が46.9%、無得点が34.7%でした。無得点のうち10%程度(全体の3~4%)が白紙解答でしたが、この問題が最終問題ということもあり、時間が足らなかった可能性もあるでしょう。ちなみに、合格者の正答率が52.6%、全受験者との差が10%程度でした。難易度として適切な問題だったのではないかと思います。

解答のポイントは何でしょうか。

町田先生 設問に「それぞれ理由を含めて」とあります。単に「お金が回る」「楽しい」ではなく、その根拠として「~だから」「~のため」という説明部分が書けていることが重要です。

「善行は密かに」という消費者目線の解答も

具体的にはどんな解答がありましたか。

町田先生 しっかりした論述が多数ありました。例えば、「寄付は自分がお金を渡すだけで相手側の利益にしかならないが、応援消費は自分が物やサービスを得られ、相手はお金が得られるので、お互いの利益につながる」「応援消費は応援する人やその人がいる地域が明確で不審なものではない」というように、結構詳しく書いてくれました。

目を引いた解答はありましたか。

町田先生 「経済活動が活発になる」という解答が多くありました。中でも経済活動を支える物流に着目した解答はおもしろい視点だと思いました。本校を受験するお子さんの学力が上がり、社会全体に目を向けた解答できるようになってきていると感じます。
また、「物やサービスにお金を払って利用する間接的な応援消費の方が、抵抗感が低い」という消費者の心理に寄り添った解答は、深い思考で考えることができていると感心しました。

広尾学園中学校 教室

広尾学園中学校 教室

具体例から抽象化するのが難しかった

町田先生 一方で、具体例から抽象化するのが難しかったようです。寄付と応援消費の違いがわからない、対比できていない解答が目立ちました。例えば、応援消費は「楽にできる」「ネットでできる」「いろいろなところを応援できる」とありましたが、それは寄付でもできます。
具体例がもう一つ不鮮明だと、抽象化したときに差がつかなくなります。応援消費はネットで物を購入すること、寄付は学校の募金活動というように、自分の経験だけで考えてしまったかもしれませんね。リード文の具体例から「応援消費とはこういうもの」という共通点をつかめると、正解にたどり着けたと思います。

論述問題はリード文を読んで考える力を問う

リード文から普段の授業が想像されます。リード文を作成するにあたり工夫していることを教えてください。

町田先生 論述問題はリード文を読んでその場で考えることを前提にしています。リード文にある発展的な知識を知っておいてほしいわけではなく、リード文を読んで内容を理解し、考える力を見極めようとしています。ですからリード文は、読み進むうちに知識を得て、自分ごととして考えられることを意識して作成しています。
この問題の場合、応援消費について知らなくてもリード文を読めばわかるように、具体例に「推しのアイドルのグッズを買うこと」を挙げて、応援消費とはかなり幅広いのだと気づけるようにしたつもりです。その上で、昔から行われている寄付との違いを考えてもらいました。

広尾学園中学校 グラウンド

広尾学園中学校 グラウンド

ニュースの「なぜ」を踏み込んで考えよう

論述問題は、世の中のニュースを知っていると取り組みやすいでしょうか。

町田先生 論述問題のテーマは、受験生が初めて考えるもの、または、見つけていない共通点や相違点を改めて考えるものを取り上げています。ですから必然的に最先端の話題が多くなるので時事問題がよく出る傾向があるのは確かでしょう。
ただ、時事問題を単なる知識として頭に入れるのではなく、原因やその結果の影響、メリット・デメリットなどについてご家庭で話題にしていただくと、一歩踏み込む思考ができるようになるでしょうし、論述問題の対策にもなるのではないかと思います。

インタビュー1/3

広尾学園中学校
広尾学園中学校1918年、板垣退助(伯爵内務大臣)、夫人絹子たちを中心に大日本婦人慈善会により、順心女学校が創設された。2006年度の特進コース(中学、高校)設置、学習支援センターの始動によって、本格的な進学校への道を歩みだす。2007年度の共学化、それにともなう校名変更、インターナショナルコースの設置と大きな話題を呼んだ。現在は、国公立・難関私大をめざす「本科コース」、国内外の医系・理系大をめざす「医進・サイエンスコース」、トップレベルの国際人をめざす「インターナショナルコース」の3コース制をとっている。
9階建ての校舎は、最新設備を完備し、豊かな教育環境を提供している。エントランスを入ると右手に見えるカフェレストラン。昼食時、休み時間、放課後、生徒たちの明るい笑い声で賑わう。また、晴れの日はけやきの下でオープンカフェも楽しめる。校舎6階に化学、生物、物理、それぞれ3つのサイエンスラボが並んでおり、研究室レベルの最新設備を備えた環境で、中学・高校の授業の枠にとらわれない実験を体験することが出来る。
基礎学力定着の要として、生徒一人ひとりの学習進度に対応して実施される小テストが「P.L.T.」。朝のP.L.T.が終わると答案は学習支援センターに運ばれ、翌日、テスト結果に基づいた不得意分野の解消と学力定着のための課題が作成される。苦手分野を克服し、確実な基礎学力を身につける。週の終わりには1週間の成績表を生徒各自に配布し、週ごとに学習理解度を確認する。
英語では、「聞く・話す(プレゼンテーションする)・対話する・読む・書く」の5技能をバランスよく身につけるため、「英語は実技教科」という意識を持ち、英語を実際使うことを重視している。年に5回行うスピーキング試験(中学1年~高校2年)、P.L.T.(Practical Listening Test)、授業中の英語発表などの機会を通し、生徒たちは使える英語を身につける。インターナショナルコースでは英語でプレゼンテーションも行う。また、生徒たちの英語力を測る客観的な判断材料として毎年3月にGTEC for STUDENTSを実施している。
勉強だけではなく、部活動も活発だ。広尾学園の教育理念である「自律と共生」の力を身につけるために、部活動に打ち込むことを奨励されている。ダンス部、吹奏楽部、チアリーディング部、ディベート部などは、全国大会・関東大会のレベルだ。