出題校にインタビュー!
逗子開成中学校
2023年08月掲載
逗子開成中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.受験生の「読解力」を問える入試問題を作りたい。
インタビュー2/3
奇をてらった問題は出題しない
入試問題を作る上で、共有している事柄を教えてください。
風間先生 まずは、あまり奇をてらった問題は出題しない、ということです。「一部の塾のやり方でしか解けない問題ではなく、教科書などで学んできた子が報われるようなテストにしてください」と言われています。また、難易度も、大問2では(1)から(6)に向けて難易度が高くなるように設定しています。大問も、3→4→5と、段々難易度があがるように設定しています。
題材に関しては、本校が好きな単元があります。ある年はそれが大問題になっていたり、ある年はそれが小問集合になっていたり…と、なるべく偏らないように作ることをいつも心がけています。
大問1はだいたい計算問題ですか。
風間先生 そうですね。5~6分で解けることを想定して組み合わせています。また、整数、小数・分数の計算、逆算というような構成で出題することが多いです。概ねできていますが、全問正解している受験生はそれほど多くありません。一問一問の正答率は高く、正答率でいうと90%くらいですが、3題合わせて正解している受験生は、こちらが思っているほど多くなくて、だいたい70~80%くらいです。
逗子開成中学校 校内
大問1と大問2の取りこぼしに注意。大問3以降は(1)を制覇せよ
合否で言えば、大問1、大問2、あたりをしっかり取ることが大事ですよね。
風間先生 本校の算数をうまく突破する作戦としては、(1)大問1、2を全問正解する。(2)大問3、4、5の(1)を正解する。その上で、(3)大問3、4、5の取っつきやすい問題を最後まで解く。そして(4)記述問題を書いて途中点をもらう。これができるといい具合になります。
たしかにどの大問も(1)はできそうですね。
風間先生 (1)は問題を理解できますか?というレベルの問題なので、おそらく大問2の(5)(6)よりも解きやすいレベルになっています。もう1つ、意図しているのは問題の文章量が多い問題をわざと入れることです。国語とは違う読解力を見るためです。
問題文から漏れなく、正しく情報を収集する力をつけよう
どういういきさつで読解力を大事にしているのでしょうか。
風間先生 本校の入試は答えだけを書く問題がほとんどです。そこからいろいろな学力を見ようとした時に、読解力・思考力・表現力の中の「読解力」を見ようということで始めました。「最後の1文字まできちんと読んでいますか?」というメッセージを伝えるために、長文の問題を用意したり、ちょっと言い回しを意地悪にしたりしています。
先ほど、国語とは違う読み方とおっしゃっていましたが、具体的にはどういう読み方を求めていますか。
風間先生 本校の国語では、およそ50分では読み切れない文章量を出します。その意図は、必要な箇所と必要ではない箇所を取捨選択する、情報処理能力を問うことにあるのかなと思いますが、算数ではそこまで長い文章を出せないので、一つひとつの文章をしっかり読んで、漏れなく情報を収集することはできますか、と問いかけるつもりで作問しています。
無駄な言葉は一つもないぞ、と思って問題文を読むということですよね。
風間先生 たしかにそうですね。そこで検討の際に「これはさすがに意地悪過ぎるよ」と、ストレートな問題文に修正することもあれば、他の先生が見て「これは簡単すぎない?」と意見されることもよくあります(笑)。
逗子開成中学校 海洋教育センター宿泊室
身近な算数から未知なる数学へ。変わる瞬間が危ない
近年、数学の先生方から「読解力」という言葉をよく聞きます。授業をしながら、力が落ちていることを感じているのでしょうか。
風間先生 そうですね。久しぶりに中学3年生の担任をして感じたのは、人の話を聞く力が、以前に担任をした時と比べて、落ちているのではないか、ということです。情報を聞き逃してしまう子が多いのです。
問題文からしっかり情報を読み取ることができないと、中高の学習のどのあたりでつまずくのでしょうか。
風間先生 小学校の算数は具体的な事例が題材になっていることが多いですし、計算によって答えを導き出します。つまり答えは数値ですが、中学校で数学に変わった途端に、汎用性というか、一般的な法則性を見つけて、その法則性を答えにしましょう、という学問に切り替わるので面喰ってしまうようです。
いきなり文字式が出てきて「これが答えでいいんですか?」と、戸惑う子もいれば、「今まで円周率は3.14だと思っていたのに、なんですかπって」と言う子もいます。「3.14とπは一緒だよ」と言っても、「よくわかりません」「なぜ、永久に続く数値をこの一文字で表しているんですか?」と言われます。そういうところが、つまずく第一ポイントです。
抽象度はどんどん上がり、概念を扱うようになったり、この世に存在しない数値を扱ったりと、(中高の数学は)未知の世界に入り込んでいくような感じなので、わからなくなってしまう子がいる一方、そこにハマる子もいて、そういう子たちは勝手に触手を伸ばして、あれもやりたい、これもやりたいと、自ら主体的に進んでいきます。
几帳面さが数学でつまずく原因になることも
そのつまづきは、問題文を読み解く力があれば、ある程度克服できるのでしょうか。
風間先生 数学にはいろいろな概念があり、単元ごとに独自のルールがあります。「なんで?」と思わずに、「そういうものなんだ」「そういうルールなんだね」と納得して、そこにすんなり飛び込める子、適応できる子は、数学を楽しいと思えるのではないかと思います。
例えば、じゃんけんは「パーはグーより強い」というルールで行います。そのルールを伝えられた時に「なんで?」「石のほうが堅いから紙を破るでしょう」などと考えてしまうと、楽しく参加できません。「ここはそういう世界なんだね。じゃあ入ってみよう」というような柔軟さが、数学を好きにさせる要因かもしれません。
全体をとらえて、あ、これはこういうグループなんだな、というのが、ぼんやりとでもとらえられたら調べます。10個ほど調べて規則性がわかったら、11個めも、12個めも、きっとそうだろうと考えて法則をパンと出せる子は「数学は楽しい!」「便利!」となるのですが、「なぜそう言い切れるの?1個1個、調べないとすっきりしない!」という子に、「この式だけですべて大丈夫だよ」と言っても納得しません。いろいろな概念やルールを単純な式で表しましょう、というのが数学の世界なので、先々にあるものも全部調べなければ…と思ってしまう、几帳面さがつまずきの原因になることもあります。
逗子開成中学校 校舎内
インタビュー2/3
1903(明治36)年創立の神奈川県下最古参の男子私立中学校。東京の開成中の分校「第二開成中」として設立されたが、ほどなく独立。中学募集は一時中断したが、86(昭和61)年再開。近年の目覚ましい学校改革の試みは、バランスのとれた学校像の確立を目指すものとして注目されている。2003年(平成15)年に創立100周年を迎えた。