シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

逗子開成中学校

2023年08月掲載

逗子開成中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.海に面している学校ならではの行事「遠泳」が題材に。

インタビュー1/3

流水算を2次元的な動きでとらえる問題

この設問の出題意図からお話いただけますか。

風間先生 この問題は流水算の問題です。(流水算は)横から見る数直線の左右の動きがほとんどですが、スタンダードな流水算を、2次元的な動きでとらえてもらおうという思いから、5年くらい前から構想していました。

作問をする上でインスピレーションを受けたのは遠泳の空撮です。真上から彼らの様子を見た時に、平面でも速さに関する問題を作れそうだなと思いました。横から見るのではなく、上から見る問題にしました。最初はヨットが題材でしたが、ヨットは直線的に進めないので、泳がせたらどうだろう。そうだ!本校で行っている遠泳を入試問題にしてしまおう、ということから始まりました。情報をきちんと整理できるか。線分図や、○、△などを用いて自分の条件を整理できるか。そういう力を試したいという意図もありました。

実際の遠泳もこういう感じですか。

風間先生 本来であれば、AからスタートしてAに戻ります。そうするととても難しくなってしまうので、平行に戻ることにしました。そのため若干、スタートとゴール地点がずれています。

折り返すのですね。

風間先生 はい。実際は三角形状にCからAに向かって泳ぎます。そこはデフォルメしました。時間によって潮の満ち引きも速さも変わるので、当然ながら一定というのは現実的にはありえないのですが。答えは実際に泳ぐスピードとほぼ同じです。塩の流れも体感でこれくらいかなというもので作って、なるべくきれいな比になるように、泳ぐ速さと潮の流れを少し調節しました。まさにこのように彼らは泳いでいるという、学校行事の紹介も兼ねた問題です。

数学科/風間 啓一先生

数学科/風間 啓一先生

(1)と(2)(3)の正答率に大差

この問題のできはいかがでしたか。

風間先生 正答率は(1)が70%、(2)は7.2%、(3)は1.7%でした。最後の問題だったこともあり、(1)と(2)の落差が大きい厳しい結果になりました。

先生の予想と比べていかがでしたか。

風間先生 (1)は最初「書きなさい」としていましたが、それでは誰も解けないかもしれないと考えて選択肢制にしました。(2)は20%くらい、(3)は10%くらいかなと思って作ったのですが、やはり分数、少数があるとイヤなのかなぁと思いました。(2)は、100人くらいが空欄でした。受験生の25%くらいでしょうか。404人受けたうちの375人が間違えていて、そのうち105件が空欄でした。

逗子開成中学校 校舎からの風景

逗子開成中学校 校舎からの風景

知識を総動員して解いてほしい

答えが間違っていても、途中の考えが合っていれば部分点はもらえますか。

風間先生 もらえます。そこは高校とは少し考え方が異なるところです。

逆もありますよね。答えだけが合っている場合です。

風間先生 その場合、考え方に点はあげません。答えのみ、点をあげます。高校入試は随分前から行っていませんが、上級生を教えている先生が、小学生の答案を見て、「何を言っているのか、全然わからない」と言うことがあります。今回も「この子はちゃんと流れとズトシくんの動きを分けて考えているので、数字は違いますが、考え方は合っています。だから点数をあげてください」と言うことがありました。「答案からのメッセージを、こちらから積極的に読み取ってください」と念押しして採点作業に入っています。

逗子開成中学校 校舎

逗子開成中学校 校舎

インタビュー1/3

逗子開成中学校
逗子開成中学校1903(明治36)年創立の神奈川県下最古参の男子私立中学校。東京の開成中の分校「第二開成中」として設立されたが、ほどなく独立。中学募集は一時中断したが、86(昭和61)年再開。近年の目覚ましい学校改革の試みは、バランスのとれた学校像の確立を目指すものとして注目されている。2003年(平成15)年に創立100周年を迎えた。
建学の精神『開物成務』にのっとり、「真理を探究し、目標を定め、責務を果たす」ことのできる人材の育成が教育の目標。レベルの高い学問を修めさせると同時に、独自の海洋教育や映像教育、コンピュータ教育等を駆使し、国際社会で活躍すべく、単なる進学校にとどまらない21世紀の新しい教育の創造を目指している。
逗子海岸に臨む校地には、ヨット工作室や宿泊施設もある海洋教育センター、本格的映写機と音響システムを備えた徳間記念ホール、コンピュータ棟やセミナーハウス、研修センターなどの充実した各施設が並ぶ。自習室も完備している。教育環境を見事に整備し、高い塀を廃した開放的な発想から、世界にはばたく人材が育っていく。
逗子開成の授業には演習が多く取り入れられている。問題を解く力や表現する力を、すべての教科・科目で身につけ、バランスのとれた基礎学力を育成している。学年によって教科、レベルは異なるが、習熟度別授業を実施。補習だけでなく、通常授業の効果をさらに上げる「特習」もある。中3から選抜クラスが新設され、学年ごとに入れ替えがある。高2からは文系・理系にコース分けをする。土曜日には各種講座や行事を実施するが、教師、保護者、生徒の好奇心がぶつかり合う土曜講座は進学・世界・体験・達成・地域の5分野100講座以上とバラエティ豊か。
中1の時にヨットを製作するのは有名で、中3までの全員が逗子湾で帆走実習を行う。海洋教育と並び映像教育をも柱とする同校では、年5回映画鑑賞会が行われており、学校にいながらにして名作を鑑賞できる。中3では全員がニュージーランドに。高2の研究旅行はマレーシア・ベトナム・韓国・沖縄・オーストラリアのコース選択制で実施。中2~高2の希望者にはフィリピンセブ島の英語集中研修、1週間のエンパワーメントプログラムのアメリカ研修、3ヶ月間の短期交換留学、1年間の海外長期留学がある。また、中1・中2では、校内における異文化英語プログラムなどがあり、語学以外に様々な体験ができる。奉仕活動にも熱心。