出題校にインタビュー!
横浜女学院中学校
2023年07月掲載
横浜女学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.自分の知識と学んだことを繋ぎ合わせられる人材を求めたい
インタビュー2/3
では、理科の入試問題全体の構成および大切にしていることを教えてください。
塚本先生 今回の問題に限らず、考えたことがない問題、見たことがない題材をあえて出すことがあります。たとえば、知らないことを知らないで終わらせないこと、知っていることから繋げて考えてみるような問題です。全く知らない題材なのに知らないと解けない問題は出しません。知識について全く聞かないわけではありませんが、細かいところを聞いてもしょうがないとは思っていますので、すでに知っていることをいくつか確認したのち知らないことに繋げていったりするなど、いくつかのパターンを考えるようにしています。
自然科学的な手法や思考法は6年かけて一緒に学んでいければよいと思っていますので、今の時点で科学的なことが厳密にできるかはあまり重視していません。きちんと挑んで欲しいなということのほうがより強いです。
次六先生 解いていて楽しい問題を作りたいという想いと、自分が面白いと思った題材を持ってこようという意識で問題作成しています。ただ、一問一答のような問題ができる子ではなく、たとえばレポートのような出題をしたら、書いた人の意図を逆算して考えられるなど、自分が持っている知識と日頃学んだことをつなぎ合わせられる子がほしいですし、解いていて面白いというのは知識と知識がつながった時が面白いわけで、そのつながりを意識した問題を作成しました。
理科/次六 知里先生
作問者の個性が問題に反映
4題構成というのはずっと変わらずに、物化生地バランスよく出題しているのですか?
塚本先生 その部分だけは固定としていまして、1番が生物、2番が地学、3番が化学、4番が物理ということと設問数については固定です。あとはである調で統一するなど形式なところも固定化していますが、題材に何を使うかについては作問者に任せています。全体の想いは共通しているものの、個々の我を出しているところもたくさんあります。
大型記述も、どこで出題するというのは決めておらず、各々が持ち寄った中から採用したりしなかったりですが、各回1題になるように形式的な調整は行っています。
先ほど三人で持ち寄って問題を作成するというお話がありましたが、物化生地を三人で作成されているのですか?
塚本先生 そうですね、多くの年で生物、化学、物理それぞれ担当がいて、三人が地学を持ち寄って問題作成するといった感じです。しかしそれだと専門性が偏るということもあって、自分の専門に関わらず物化生地全部作ってくるという年もありました。個別的な題材については専門外の問題を作成するのが難しいこともありますが、その題材を通じてこういう発想をしてほしいんだ、といった問いかけは題材問わずできると思っています。
横浜女学院中学校 校舎内
知識のほか思考法や科学的手法などを身に付けさせたい
作問において先生方の想いが尊重されているのを非常に感じます。一方、授業に関して先生各自の想いはどうなのでしょうか?
塚本先生 授業については週に1回教科教員で集まって教科会を開いています。全体での方向性は共有していて、実験やものづくりを重視したりすることについては、個々というより全体で重視している部分となります。本校の中学には「国際教養クラス」と「アカデミークラス」がありまして、国際教養クラスでは実験や探究を重視しています。細かい知識がないと物事を考えられないので、教科書にあるような知識のインプットは行いますが、それよりも、どう考えたら問題解決につながるか、未知なるものの解明につながるかを、実験や探究活動、ものづくりなどを通じて行っていくことに力を入れています。一方のアカデミークラスは知識をインプットする時間を少し多めに取ったりしています。
次六先生 本校は中学1年生に対し1年生用の教科書を取り扱っているのですが、同じ教科書を使っていても教員によって知識をどこまで掘り進めるかはそれぞれ自由ですので、そこが面白いところかなと思っています。
6領域12コンピテンシーに沿った教育方針
学校としてのシラバスのようなものは公開されていますか?
塚本先生 現在外部に対しては公開しておりませんが、生徒に対しては6年分のシラバスを全部作って掲示しています。また保護者の方にもこのような授業を行っていく、というものを明言していこうとしています。ゆくゆくは外部に公開していくかもしれませんが、現在は議論の途中です。
なお、ホームページ上でコンピテンシーについては公開しているのですが、この2023年の4月から7領域のコンピテンシーを発展させて6領域12コンピテンシーを掲げています。すでに保護者の方にも発信していますし、生徒も教室に貼っているものですが、6領域とは
- 自らを知る
- 隣人を知る
- 世の中を知る
- 自ら行動する
- 隣人を愛する
- 世の中に働きかける
となっており、この6領域に対してそれぞれ2つのコンピテンシーが細分化されています。
- 自らを知る…「自らを振り返ることができる」「自らを大切にすることができる」
- 隣人を知る…「多様性を尊重することができる」「対話することができる」
- 世の中を知る…「何事にも興味・関心を持とうとする」「情報を整理することができる」
- 自ら行動する…「何事にもチャレンジすることができる」「自らを律し、コントロールすることができる」
- 隣人を愛する…「他者と協働することができる」「他者に手を差し伸べることができる」
- 世の中に働きかける…「当たり前を疑うことができる」「改善策を考えることができる」
すべての教育活動をこのコンピテンシーに沿って行っています。
子どもたちが中高6年で身につけたい力がこの6領域12のコンピテンシーになるのだと思いますが、理科ではこの部分は押さえたい、というのはあるのでしょうか?
塚本先生 基本は全てとなりますが、知識を得るということでは「情報を整理することができる」ことが大事になります。また、興味を持ってくれないと始まらないので、「何事にも興味・関心を持とうとする」も大事ですね。そのほか、特に物理分野は日頃の経験でなんとなく思っていることや身に付いていることが結構間違っていたりするので、「当たり前を疑うことができる」というのも結構大事です。
それだけでなく、「対話することができる」「他者と協働することができる」というのも意識はしています。演習の時間での中で、「隣の人と相談してごらん」と対話の時間を設けたり、ものづくりする際には班で役割分担をしてみたり、ディベートの際には班の中でどれだけ協力したかを確認したりもします。
極力12コンピテンシー全てを意識するようにしているものの、どうしても難しい部分はあります。たとえば、「自らを大切にすることができる」といった項目は、生物分野ではできるかもしれませんが、物理分野において取り入れるのはかなり大変だと感じます。
次六先生 生物分野だと自分の体の仕組みを振り返ってみたり、生命倫理を学んでいく中で、間接的に「自分は大切にされている存在だ」「自分を大切にしなければならないんだ」と考えたりする生徒はいるかもしれません。しかし言葉として「自らを大切にしようね」ということは出てきづらいので、普段の授業ではふり返ることをしています。
塚本先生 学級日誌を記す際にも、「今日やった単元は何か」を書くほかに、12コンピテンシーも並んでいて、授業中に自分はこの力を使ってスキルを伸ばすことができた、ということを週番がマル付けするんです。あとで見ると「この授業では当たり前を疑うようなことがあったんだな」とか「対話の時間があって協力し合うことができたんだな」とかがわかります。たまに自分の授業であまりマルが付いてないとへこんでしまうこともあって、次の授業でマルがいっぱいつくように頑張ろう!と思うこともあります。
12コンピテンシーを定めた時に、単にお題目となってしまい意識されないのが嫌だなと思っていました。そうならないためには、放課後やホームルームでしか関係のないものだとすぐに廃れてしまうだろうと思ったので、授業でも取り入れられるものでないといけないと考えて作りました。
このコンピテンシーを作るのにプロジェクトが立ち上がったのですか?
塚本先生 そうです。私もそのメンバーの一人でした。ほかにもいろんな教科の教員が集まって議論して作り上げていったのですが、絶対にいなければということで真っ先に指名されたのが聖書科の主任です。本校の教育の土台を考えていくのであれば、聖書科の見解は必須となりました。
横浜女学院中学校 掲示物「6領域12コンピテンシー」
インタビュー2/3
日本プロテスタント発祥の地、横浜山手の丘でキリスト教の教えを柱に校訓「愛と誠」の女子教育による人間教育を実践している。変化の激しい社会に対応ができる力を身につけるために「神様と人に愛されている存在として、自己受容力を高め、多角的かつグローバルな視野をもち、社会貢献を果たすことができる生徒の育成を目指し、「自らを知る」「隣人を知る」「世の中を知る」「自ら行動する」「隣人を愛する」「世の中に働きかける」の6領域とこれらを具体的に実践するための12コンピテンシーを設定し、すべての教育活動を実践している。