シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜女学院中学校

2023年07月掲載

横浜女学院中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.生徒が日常にあるものをどのように見ているのかを聞いた問題

インタビュー1/3

この設問の出題意図からお聞かせください。

塚本先生 この問題は、理科教員3人で問題を作成しそれぞれ持ち寄ったうえでお互いの問題を見ながらいいと思ったものを採用する形で選びました。この問題は同席している次六が作成した問題となります。

次六先生 本校の生徒の特徴として、「何で?」「どうしてこうなるの?」といった質問をしてくる生徒が多く、それが子どもたちの良いところだと普段見ていて感じています。大人になると日常ありふれたものを流し見してしまいがちですが、設問にある「バイオミメティクス」は、「何で?」「どうして?」というところから生まれたものなのではないかと思い、普段子どもたちは日常にあるものをどのように見ているんだろう?というのを知りたかったのが問題作成のきっかけです。

「クモについて思い浮かべなさい」と問われると、誰しもが一定のイメージを思い浮かべることができると思いますが、その中でも、クモの巣に水滴が付いているような映像を思い浮かべる子がいれば、カニグモのように空を飛ぶクモを思い浮かべる子もいるでしょうし、這っているクモをイメージする子がいるかもしれません。そんな各々異なるイメージを表現するというのは面白いのではないかと思い、問題作成に至りました。

教務主任・情報科主任/塚本 貴博先生

教務主任・情報科主任/塚本 貴博先生

子どもにとって身近な素材をテーマに

子どもたちからどのような解答があることを期待して問題を作成されたのでしょうか?

次六先生 この問題を作成する際には、子どもたちの解答プロセスを思い浮かべてみました。段階的に子どもたちが考えていることを問題にしたいと思っていたので、まずは「どのような特徴に注目したのか」を聞く形として、次に「考えた製品はどんなものか」を聞く流れで作問を行いました。

たとえば、クモの持つ特徴から製品を自分で考える子もいれば、日頃自分が身につけたり触れたりしている商品をベースに、「こうしたらもっといいのに」というところからクモの特徴に活かせないかと考える子もいて、それをセールスポイントとしたうえで、最後に「なぜ自分がこれを考えたのか」、「この製品のどこがいいのか」を明確に伝える、といった三段階の解答プロセスで構成されている問題です。

ですから、どんな視点でもよいので適切に表現して相手に伝えることができていることと、大人が気付かないような子どもらしい発想が生まれてくればいいな、と思っていました。

横浜女学院中学校 校舎

横浜女学院中学校 校舎

出題意図を汲んで自分の考えを表現する力を確認できた

実際の解答の中で、これは面白いと感じられたものにはどのようなものがありましたか?

塚本先生 巣を使って他の虫を捉えるという性質から、漁師が使う網に転用できないだろうかと考える子がいたり、ハンモックのようなものに使えないだろうかと考えた子もいて、糸を使った柔軟な発想がかなりありました。空欄はほとんどありませんでしたが、商品とセールスポイントの部分をどう書き分けるかがピンと来ていない子の場合に、片方が空欄ということは多少ありました。

表現力のある子は「こういうことを考えたんだ」ということをしっかり書いていました。ですから、出題意図を汲んで自分の考えたことを、相手に伝わる形で表現する問題になっていたと思います。

未知なものを知ってほしいという想い

解答については、これくらいは書けるだろうと想定していたと思いますが、実際にはどうでしたか?

塚本先生 想定よりは結構できていた印象です。このタイプの論述は各入試で1問ずつ出すようにしていました(A・B・C・D・Eの5回で生物・化学・地学・物理を一題ずつとプラスでどれか一題という形で出題)。今回は生物分野で論述問題を出題しましたが、ここ何年か続けているうちに、このような考えるタイプの問題も当初より空欄が減ってきた印象はあります。かなり挑んできてくれているな、という気がします。

題材自体は学校でも塾でもやらないことではありますが、知っている身近なものを取り上げてみたり、時には題材自体あまり見慣れないものを取り上げてみたりすることもあります。また、未知なことでも恐れおののくのではなく、「知っていこう」と挑んでほしいといった想いから、毎年重めの記述問題も出題しています。

物事を考えて成長していける人材を輩出するために

ここ最近の出題から、身近な理科題材を取り上げているのを感じますが、何かきっかけなどあったのでしょうか?

塚本先生 センター試験が共通テストに替わる際に、知識をアウトプットするだけの試験ではなく、読解力や思考力などが重視されるようになってきたことを感じました。

たとえば、高校生にとってそんなことは知らない、といったものがリード文に記載されていて、読んでいく中で応用していく問題が出題されたりします。もちろん試験の対策だけではないですが、ただ答えをアウトプットする人材だけでなくて、AIの時代が到来するなど変化が激しくなっていく時代に、物事を考えて成長していける人材を世に送り出していくためには、6年間で子どもたちといろんなことを一緒に考えていきたいと思ったんです。

「知らないことに対し、知っていることで何とか対処できないか」、また「知らないことを知りたい」といった考えを持ち、知識と知識を繋げられる子と共に学びたいということから、考える問題を少し多めに出題するようになりました。

先ほど、教員がそれぞれ問題を持ち寄るという話をしましたが、初稿の時に持ち寄った問題を否定することはほとんどなく、ジャンルがかぶってしまったり、そもそも不成立であるということでない限り、ほとんど撥ねないようにはしています。みんな一緒に理科を学んでいきたいんだという全体の意思のもと、それぞれの教員が個性を出して問題作成しているという感じです。

次六先生 私自身はゼロからイチを作るというのはあり得ないかなと思っており、ゼロからイチと言われているものの多くは、私たちの中で気づかないものに気づいた人がそれを組み合わせたり表現したりすることから始まっていくと思うんです。ですから、どんなものからも目をそらさずにしっかり見られる生徒や、未知のものでも分析できる生徒を育成したいと思っています。

横浜女学院中学校 教室

横浜女学院中学校 教室

インタビュー1/3

横浜女学院中学校
横浜女学院中学校日本プロテスタント発祥の地、横浜山手の丘でキリスト教の教えを柱に校訓「愛と誠」の女子教育による人間教育を実践している。変化の激しい社会に対応ができる力を身につけるために「神様と人に愛されている存在として、自己受容力を高め、多角的かつグローバルな視野をもち、社会貢献を果たすことができる生徒の育成を目指し、「自らを知る」「隣人を知る」「世の中を知る」「自ら行動する」「隣人を愛する」「世の中に働きかける」の6領域とこれらを具体的に実践するための12コンピテンシーを設定し、すべての教育活動を実践している。
コンピテンシーとコンテンツを効果的に結び付けて学力を高めるために2022年度より1時間の授業を65分授業としている。月曜日から金曜日までは5時間、土曜日は3時間(国際教養クラスは4時間)の週6日制を実施。国際教養クラスでは、実際のグローバルトピックにアプローチするCLIL(内容言語統合型学習)を中学3年生より実践し、さまざまなテーマについて教科を横断して学び、「英語で」考える力を身につけている。また、第二学国語(中国・ドイツ・スペイン)も必修とし、言語を通じて文化に触れ、世界への視野を広げるチャンスとなっている。
学校行事や部活動においては、生徒が自ら進んでチャレンジしていく時間となっている。部活動は希望制だが多くの生徒が入部をしている。全国大会で上位入賞するチアリーディング部を始め、ダンス部やバドミントン部、吹奏楽部や書道部などが人気を集めている。学校行事では、体育祭、コーラスコンクール、なでしこ祭(文化祭)は、生徒運営委員を中心に自分の役割に取り組む経験、その責任を果たしていこうとする経験、仲間との大切な時間を過ごす経験など多くの学びを体験できる機会となっている。