シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

茗溪学園中学校

2023年07月掲載

茗溪学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.AC開設で全体の士気が上がる

インタビュー3/3

ACの授業はインプットよりアウトプット重視

濱島先生 中学にACを開設して今年で3年目です(高校ACは2024年開設予定)。三読をベースに、基本的なところはメインクラスのMG(茗溪ジェネラル)と変わりはありません。大きな違いは、ACは「書く」機会が多いことです。ACは2クラスで人数が少なく、こまめに採点や添削ができます。「表現したい!」という生徒はACに多い印象です。

ACではどんな課題を出しているのですか。

濱島先生 中1で習う宮沢賢治の『オツベルと象』は、最後の一文「おや、〔一字不明〕、川へはいっちゃいけないったら。」の不明の一字(空欄)に何を入れるか、理由も考えてもらいました。生徒は自分なりに考えてくれていました。
中には「神」というかなり攻めた意見もありました。「すべてを知っているのは神だけだから、俯瞰的な視点に一気に戻すため」と考えたようです。一ひねりしたい、表現したいという思いが強いのでしょう。一番多かったのは「象」でした。「君」も妥当な考えです。「最後の一文は、物語の場面ではなく、語り手の牛飼いが物語るシーンに転換されているから、聞き手の子どもたちに声をかけたのではないか」と考えていました。

茗溪学園中学校 図書室

茗溪学園中学校 図書室

入学後2カ月で理由を書くことに慣れていく

濱島先生 中1のACの試験でこんなことがありました。説明的文章として『ガイアの知性』について、B4表裏1枚の解答用紙に自分の考えを書いてもらいました。B4表裏1枚はかなりの字数になります。ところが生徒から「解答欄が足りない」と“苦情”を言われました。「もっと書くことがある」と言うのです。それだけ書くことへの情熱を持っています。自分勝手なことを書いているわけではなく、しっかり論理立てて、主張とその根拠をいくつか挙げて結論をまとめてくれました。

入学後の2カ月間で、国語に限らず全教科「書く」ことに取り組むので、書くことに「慣れる」のだと思います。数学の「数と式」は機械的に数式処理するだけでなく“証明”がベースです。「-(-3)はなぜ+3になるのか」ということを説明します。「そういう決まりだから」ではなく、そのようになる数学的な理由があります。感覚的にわかるようなことを、そうなる理由を説明することを、全教科で徹底しています。
そうして「書く」ことが当たり前になっているので、書かない方がむしろ不自然に思う、違和感を覚えるようになるのです。

茗溪学園中学校 美術室

茗溪学園中学校 美術室

AC生徒がMG生徒によい刺激を与えている

濱島先生 アウトプットは「話す」機会も多く、ACは他教科でもプレゼンテーションを行っています。特に理科は定期的に実施していて、グループで、スライドの作成や発表原稿の検討を重ねた上でプレゼンに臨みます。
発表は授業以外でもあります。中2はACの魅力について、生徒の投票で評価が高かった2つのグループが文化祭で発表しました。学年集会はACから発表してもらいます。ACの生徒は発表に慣れており、どうすればわかりやすい発表ができるか、MGの生徒の手本になっています。
クラスは分かれていても部活動などACとMGが交流する機会は多く、ACの生徒の取り組む姿勢を見て、MGの生徒は「自分も頑張ろう」「勉強もしっかりやらないと」と思うようです。ACが開設してから生徒のやる気が全体的に上がった印象です。

「復習ノート」に国語的活動を書き込む

濱島先生 アウトプットするにはインプットが必要ですから、ACの生徒はインプットを自発的に行っています。
国語は、初めて読んだ文章の、わからない単語や知らない漢字を調べるなど、予習しやすい教科でしょう。ただし、国語は復習が難しい。そこで、「復習ノート」を作って必ず何かしら記録するようにしています。
復習の方法は、参考文献リストなどのヒントを提示したり、よくできた生徒の取り組みを紹介したりしますが、自分なりの復習方法を編み出して、自分が新たに気づいたり考えたりしたことを書いてもらっています。
さらに、教科書に関係なく、自分が「これは国語だ」と思った活動を何でもいいから書いてもらっています。読書記録もその一つです。「正義」とは何か、深く考えるようになった生徒は聖書を読むようになりました。教科書以外のことにも目が向くようになり、図書館の利用も増えました。

図書館の司書の先生と連携して取り組んでいることはありますか。

濱島先生 授業に関連して、中学生向けに国文法のコーナーを設置してもらいました。私が指定した書籍や辞書など文法の学習に役立つ本を一カ所にまとめて常設しています。貸し出し中が多くコーナーには本がほとんどない状態で、生徒の意欲をうれしく思います。

茗溪学園中学校 図書室

茗溪学園中学校 図書室

文学にも論理がある

中高6年間でどんな国語の力をつけてほしいと思っていますか。

濱島先生 当たり前のことですが、「文学にも理論がある」ことをわかってほしいと思います。
高校の現代文は「論理国語」と「文学国語」に再編されましたが、評論文だけでなく文学作品にも論理があります。あらゆる文章に論理があり、論理を理解して読んでもらいたいし、自分が書く場合も論理的に表現しきれる力を身につけてもらいたいなと思います。

鈴野先生 「論理国語」と「文学国語」に分けられると「文学には論理がない」ように誤解されがちですが、文学の論理をきちんと読み取ることができると、作品の世界をより楽しめるようになると思います。

インタビュー3/3

茗溪学園中学校
茗溪学園中学校1872(明治5)年創設の師範学校をはじめ、東京文理科大学、東京高等師範学校、東京教育大学、筑波大学などの同窓会である社団法人茗溪会が、1979(昭和54)年に中学校・高等学校を開校。以来中等教育批判に応える取り組みをする研究実験校として注目される。
知・徳・体の調和した人格の形成をはかり、創造的思考力に富む人材をつくることが教育理念。人類や国家に貢献できる「世界的日本人」の育成を目指す。自ら学び成長していく能力、Study Skillsを身につけさせる。通学生も短期の寮生活を体験するなど、共同生活を通じての人間形成を重視している。
筑波研究学園都市の最南端に位置し、広い校地にはグラウンド、屋外プール、テニスコート、バスケットコートなど体育施設も充実。全教室にプロジェクターが設置されているだけでなく、大教室や、天体ドーム、2つのコンピュータ室など、設備も機能的。近くに寮があり、約230名が生活。中学生は主に3人部屋、高校生は2人部屋。
生徒の将来を考えた教育構想から生まれた独自のカリキュラム。英語では外国人教師による少人数制の英会話などで語学力を強化。また、希望者は放課後に第2外国語として、フランス語・スペイン語・ドイツ語・中国語等を無料で受講できる。ほとんど全教科でコンピュータ利用の授業を実現するなど、情報教育にも力を入れている。中2~高3の英語・数学は習熟度別授業。高2から進路に合わせた選択履修となり、受験に向けた放課後の受験対策補習や夏期補習が本格的にスタートする。医学部など理系にも強く、海外の大学に進学する生徒も少なくない。
女子は剣道、男子はラグビーを校技として定め、冬には精神訓練のためそれぞれで寒稽古を行う。本物にふれる芸術鑑賞会、茗溪学園美術展、合唱コンクール、文化祭などは質が高い。学園内のいたる所に展示された生徒の作品を見ても、芸術への力の入れようがわかる。フィールドワークとして中1・中2はキャンプで観察や実習を行い、中3は沖縄での国内研修旅行で本格的な調査活動をする。高2ではシンガポールで海外研修を行う。クラブ活動はラグビー、剣道、テニス、水泳、バトミントン、美術、書道、無線工学部などが活躍。昼食は中学生が食堂で全員給食、高校生は寮生は給食、通学生は給食またはお弁当で、お弁当は教室でとる。世界各地からの帰国生が全校生徒の約22%以上在籍している。
平成23年度よりSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)に認定され、近隣の筑波大学や世界の最先端の研究所群とさらに協力関係を深め、生徒の学習・研究活動のレベルのより一層の高度化を実現中である。