出題校にインタビュー!
茗溪学園中学校
2023年07月掲載
茗溪学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.全体を俯瞰できる読み方をしよう
インタビュー2/3
理由を聞くのは文章同士の関係性をつかむため
貴校の国語の入試問題は「理由」を聞く問題が多いように思います。どんなことを意図されて出題していますか。
鈴野先生 文章同士の関係性を考えながら読んでほしいという思いで作問しています。理由を聞く問題が多いというのは、そのためかもしれません。
理由を聞くということは、場面同士の関係性をつかめるか、すなわち、文章全体をきちんと読む力があるかを問うています。国語では全体を俯瞰できる力を大切にしたいと思っています。傍線部から離れたところに正解がある問題を出すのも同じ意図からです。
説明的な文章も同様です。特に説明的文章は細部に気を取られていると、今読んでいるところは何を言いたいのか“迷子”になってしまいます。まず全体像を押さえることで、その文章と全体との関係から「今、このことについて読んでいる」と現在地を確認することができますし、何のために書かれているかも見えやすくなります。
場面分けをして読み取ることをやり過ぎると、作品がぶつ切れになり、前後の関係がつかみにくくなります。受験生には、文章を「全体」として読む習慣をつけてもらいたいと思います。
国語科/鈴野 高志先生
文章記述問題で気になった解答
受験生の答案を見て気になったことはありますか。
鈴野先生 文章記述問題で理由を聞いていないのに、文末を「~から。」と書いてしまうのは、文章記述問題イコール理由という思い込みが強いのかもしれません。
濱島先生 この問題も、空欄の後ろ「~ので」につながるように書かなければならないのに、「~から。」と句点で結んでいた解答がありました。
空欄補充の文章記述は句点を書いてはいけないと指導していますが、自動的に句点を付けてしまいます。また、気持ちを聞いているのに「~こと」で答えるべきところを「~から」で答えてしまうケースも多いですね。
鈴野先生 何が問われているのか意識して読めば、余計な減点を避けることができると思います。
「伝える力」の向上は国語が貢献できるところ
国語の力が他の教科に与える影響は大きいのではないかと思いますが、いかがですか。
濱島先生 どの教科の教員も、「自分が教えている教科が他教科に好影響を与える」という自負を持って教えています。
入試問題で設問の要求に応えていない受験生がいますが、大人でも聞かれたことにきちんと答えられないことがあります。そうしたことは「きちんと読む」国語力が向上すれば、少なくすることが可能でしょう。
語彙の豊かさも国語学習で身につく力の一つです。表現の幅が狭いと相手に正確に伝えることができません。考える力は他教科でも鍛えています。国語が貢献できるところとしては「伝える力」が挙げられます。たくさんのボキャブラリーの中から的確な単語を選択して表現できるように、生徒を日々鍛えています。
茗溪学園中学校 図書室
おかしな言い回しには理由がある
生徒さんの言葉選びや言葉遣いとして気になること、気をつけていることはありますか。
濱島先生 生徒が品のない言葉遣いをしたら、上品な言葉に直させます。日常会話で「直す」意識が働けば、語彙のレベルを上げようとする意識も高まるでしょう。日本語としておかしければ、「通じる日本語に」直します。そうして誰に話しても恥ずかしくない日本語とはどういうものか、イメージできるといいなと思います。
鈴野先生 一方で、おかしな言い回しはそれなりに理由があることも意識させたいですね。例えば「違う」は動詞ですが、「違かった」「違くて」のように形容詞のように活用して使われるようになっています。なぜそのような言い回しがされるようになったのか。動詞だけれど意味が形容詞のようだから、形容詞のような活用をするようになった、というところまで本当は生徒に考えてもらいたいですね。
言葉は“生きもの”なので時代によって使い方は変わります。文法的に正しい使い方と、今の言葉として広がっている使い方をわかって使い分けられるといいですね。
他教科の教員との意見交換が活発
鈴野先生 本校は全体を俯瞰できるように、3回読む「三読法」という独自の読解法を取り入れています。小説は「構造よみ」「形象よみ」「吟味よみ」を、説明的文章は「構造よみ」「論理よみ」「吟味よみ」という読み方をします。
どのような読み方をするかは、同じ学年を教えている教員で打ち合わせをして、教員によって違いがないように公平性に努めています。週1回のペースで話し合っているのではないでしょうか。
他教科の先生同士が話し合われることはありますか。
濱島先生 ACの教員は定期的にやり取りしています。少なくとも月1回は話し合う場を設けています。
また、同じ学年の担任は異なる教科の教員が配置されているので、自ずと話し合うようになります。普段から、国語の試験問題を英語科の教員に解いてもらい、助言をもらうことがよくあります。
他教科の教員は、専門ではないけれど過去に習ったことがあり、専門の教員と生徒の中間の位置づけです。だからこそ、しばしば鋭い指摘を受けます。生徒がつまずきそうなところに事前に気づけるので、配布するプリントの表現をわかりやすく直したり、注釈を付けたりして、よりよいものを生徒に提供できているのではと思います。
鈴野先生 高校でも、「国際バカロレア(IBDP)コース」の担当教員は、生徒の資格取得に向けて打ち合わせが必然的に多くなります。
濱島先生 中3では英語で数学の授業を行おうと、数学と英語の教員が協力してチャレンジしています。生徒が教科横断的な学びができるよう、教員も教科の垣根を越えて取り組んでいるところです。
茗溪学園中学校 生徒作品
インタビュー2/3
1872(明治5)年創設の師範学校をはじめ、東京文理科大学、東京高等師範学校、東京教育大学、筑波大学などの同窓会である社団法人茗溪会が、1979(昭和54)年に中学校・高等学校を開校。以来中等教育批判に応える取り組みをする研究実験校として注目される。