シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

攻玉社中学校

2023年06月掲載

攻玉社中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.身近な題材をテーマとして出題した問題

インタビュー1/3

では、この問題の出題意図についてお聞かせください。

立崎先生 身近なものを題材として入れたいというのがありました。小問10問の大問になるのですが、何問かは世の中に出回っている話題から出題したいと思って出題しました。今年の問題をどう作成しようかと思った時に、2次元コードの作問イメージはここ数年持っていて、具体的に形にしたのがこの問題です。

具体的な計算としては2×2×2×2×…となっていきますが、小学生でも数字あそびはすると思いますので、数字に興味がある子どもであれば応用的にたどり着ける問題なのではないかという意図で作成しました。

このくらいの正答率になるだろうと思って出題されていることと思いますが、実際の正答率はいかがでしたか?

藤田先生 この問題自体の正答率は44%でした。算数➀トータルの正答率は56%です。平均よりも若干低いものの、想定よりも正答率は高かったかなという印象です。

立崎先生 作成したときには、2~3割ぐらい出来ていればよいかと思っていました。

数学科/立崎 宏之先生

数学科/立崎 宏之先生

小学生でも2次元コードは目にする機会は多い

子どもたちも2次元コードはよく見ていると思います。この問題を解いてみてはじめて「こんなに識別できるんだ」と気づいて、さらに研究してみようかと思った子もいるのではないでしょうか?

立崎先生 2次元コード自体はいろいろな広告に載っているので、小学生にとっては「なんかよくわからないけれど大人がよく使っている記号のようなもの」という形で知っているとは思います。ですので、子どもたちも比較的2次元コードをカメラで読む機会は比較的あるのではないでしょうか。

この問題には「【約】何種類」という形で、約と付いているところがポイントですね。

立崎先生 この問題は、白か黒しか配置が無いので2の50乗となります。そこをどのように工夫して問題を解くかです。2を10回掛けると1024になることに気づけば、それをあと5回掛ければよい(1024の5乗)ということになります。そうすると約1000と捉え、0が3個並ぶのが5回あるとすると0は15個並ぶのではないか、といった発想で問題を解くことができます。これを大雑把に気付いてほしいな、という問題でした。

さすがに、2×2×2×と50回分手計算でするのは大変ですが、2の10乗の1024ぐらいまでであれば、算数が好きな子であればできると思うので、さらに一歩踏み込めるかどうかが成否を分けたかなと感じました。

何分ぐらいで解けると想定されましたか?

立崎先生 特別選抜の算数➀は50分で10問なので1問5分程度を想定していました。問題によって濃淡はありますが、この問題に10分かけると他の問題が解けなくなるので5~7分ぐらいかと考えていました。算数➀の問題は、全般的に易しめにしたつもりだったので、割と時間はあったのではないかと思います。

子どもたちに身近なところから興味を持ってほしいということは、先生方が普段から考えられていることなのでしょうか?

立崎先生 入試問題を作成する上では、普段目にするものと算数・数学を繋げるであるとか、今回の特別選抜の出題であれば中学や高校の数学との接続を意識します。中学や高校の教科書に載っていることにうっすらつながりを持たせるという感じでしょうか。小学生であっても発想は繋げてほしくて、しかしながらサイン・コサイン・タンジェントといった難しい言葉を出さなくても問題にできるようなものをと、常に考えて問題を作っています。

攻玉社中学校 校訓

攻玉社中学校 校訓

インタビュー1/3

攻玉社中学校
攻玉社中学校1863(文久3)年、蘭学者の近藤真琴が創立。89(明治22)年、海軍予備科を設置。海軍軍人の養成など頂点を極めたエリート教育はつとに有名。1947(昭和22)年、学制改革により新制攻玉社中が発足。66年より中高一貫校となり、英才開発教育体制が整う。90(平成2)年に高校募集廃止。
校地はそれほど広くないが、室内温水プール、コンピュータ使用のLL教室、目的別理科実験室、地下に柔・剣道場を備えた地上4階建ての2号館など施設は充実している。03年には、1500名収容の講堂兼体育館や図書室、生徒ホールなどを完備する新校舎が完成した。自然光を取り入れた吹き抜けた回廊式の構造で、屋上は庭園になっている。雨水の利用など環境にも配慮。明るい学校生活が送れる。
道徳教育を教育の基礎とし、詩経の「他山ノ石以テ玉ヲ攻(みが)クベシ」に由来する「攻玉」の2文字を理想に掲げる。自主性を尊重し、体力・気力の強化をはかり、6年一貫英才開発教育を推進。校名から受ける硬派でスパルタ的なイメージとは違い、生徒はいたってのびやかで、先生と生徒の距離が極めて近く、一体感のある面倒見のよさが感じられる。帰国生のための国際学級がある。
英・数・国の時間数が多く、中3で高校の内容に入る。中3と高1は選抜クラスを1クラス設け、成績により進級時に入れ替えを行う。成績不振者には指名制補習、希望者には特別講座、英語は2005年から『トレジャー』を使用し、中1から外国人教師による英会話が週1時間。中3では自由題材の卒業論文に1年間取り組む。高2から文系・理系に分かれ、それぞれに国公立大志望クラスを設置。希望制の特別講座・指名制の補習・補講などバックアップ体制も充実。
中学生の約95%がいずれかにクラブに所属している。バスケットボール、サッカー、野球、テニス、バレーボール部は人気が高く、50名以上の部員がいる。学校行事は多彩で、英語暗誦大会、芸術鑑賞、中学自由研究発表会などの文化的な行事のほか、中学生は16km、高校生は20kmを歩く耐久歩行大会、夏の臨海・林間学校、スキー教室など体育的行事も多い。中3では希望者制海外ホームステイも実施。中1~中3の国際学級に所属する帰国生とは行事やクラブ活動などで接し、海外への視野を広げる一助になっている。