シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

白百合学園中学校

2023年05月掲載

白百合学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.昆虫に対する先入観を払拭したい

インタビュー1/3

生物種の半数以上が昆虫。せっかくなら仲良くしたい

鈴木先生 昆虫は地球上で最も多種多様で、進化した昆虫の能力から学んだ技術は、私たちの生活に活かされています。私は生徒に、「昆虫と仲良くした方が賢明だよ」と言っています。
けれど昆虫を忌み嫌う生徒が多いです。それはなぜか。少なからず、大人の「昆虫嫌い」が影響しているのではないかと私は思っています。幼い頃は多くの子が虫取りが好きです。ダンゴムシが大好きで、ポケットに入れて持ち帰ったりもしたでしょう。そこで「気持ち悪いから捨ててきて」と言われると「昆虫は気持ち悪いもの」としてインプットされるのではないか、そのイメージが固定されるのではないかと推測します。
先入観で昆虫を避けてほしくないという思いから、昆虫の問題を作りました。

理科/鈴木 悦子先生

理科/鈴木 悦子先生

昆虫食が注目されるのには根拠がある

この問題を含む大問のリードの「2013年に~」という一文に、出題の意図が感じられます。

鈴木先生 食用昆虫については、国連の食糧農業機関が「未来の食糧」とする報告書を2013年に発表しています。10年前の、この報告書が発端となり昆虫食の開発が進められていることを、受験生に知ってほしいとの思いがありました。
昨今、昆虫食を批判するコメントがネット上で多数見られます。この報告書のことをもっと知ってほしいと気になっていただけに、本校の入試問題を取り上げていただくにあたり、この一文も載せていただき、作問者としてうれしく思っています。

昆虫食には賛否あるかと思いますが、注目された根拠を知った上で、周りの声に流されず、賛成か反対か自分で考えることが大事ではないでしょうか。
なお、昆虫食は日本では珍しくはありません。イナゴを食べる文化は昔からありますし、ザザムシは漁獲量の統計があります。コオロギは雑食なのでエサによって味が変わる点も食材としておもしろいところです。

理科の問題を社会科の知識を使って答えても可

この問題は一見、社会科の問題のようにも見えます。

鈴木先生 理科の問題だから理科の知識で答えなければならないわけではありません。いろいろな教科で学んだことをフル活用して解答する力も大切だと思います。
コオロギについての文章に、「二酸化炭素の排出量が減る」という説明があります。気候変動(SDGs目標13)とつなげて地球温暖化対策を理由に挙げれば、理科的な答えになります。一方で、社会科的な答えも許容します。

受験生はどんな目標を選んでいましたか。

鈴木先生 ほとんどが目標13を選ぶのではと予想していましたが、思ったほど多くありませんでした。ただ、いろいろな答えがあったのはうれしい誤算でした。
目標1(貧困)や目標2(飢餓)は社会科的な答えになりますが、持っている知識と結びつけて考えてくれたらいいなと思っていたので、期待通りでした。目標6(安全な水)は一見「?」と思いましたが、提示の文章に「多くの水が必要な牛の飼育に比べ少ない水で多くのタンパク質を得られる」とあるので、広く水の問題として考えたのでしょう。

理科の問題だから、13、14(海の豊かさ)、15(緑の豊かさ)と結びつけようとするのは大人の発想かもしれません。今の子どもたちはSDGsが身近になっていますから、柔軟にいろいろな目標とつなげられるのでしょうね。

白百合学園中学校 校舎

白百合学園中学校 校舎

理由は提示の文章から読み取れるものであること

鈴木先生 この問題は、「あなたの考え」を聞いています。とはいえ、何でも自由に書けばいいというわけではありません。大切なことは、提示した文章から得られる情報に基づいて答えていること。採点基準は、提示した文章から想像できるか、日本語としておかしくないか、選んだSDGsの目標とつながるか、です。
提示した文章以外の、知っていることを書いた解答もありました。知っていることだけで答えれば設問の要求に応えていないことになります。独りよがりな解答とみなされ正解にできません。きちんと文章を読み、設問で求められていることに答える力をつけてほしいと思います。

この問題は7割程度が正解し、無答はほとんどなく、思った以上に書いてくれました。
気になったのは、正解できなかった3割のうちの約半数が、日本語としておかしな解答だったことです。伝えようとしているのはわかるのですが、短い文でも文章として成り立っていませんでした。
よくある問題は定型文で覚えているのでしょう、主語と述語の関係がねじれることはありません。この問題のように初見の問題で、あまり書き慣れていないとねじれやすくなるのかなと思います。

白百合学園中学校 シャルトル大聖堂の模型

白百合学園中学校 シャルトル大聖堂の模型

インタビュー1/3

白百合学園中学校
白百合学園中学校1881(明治14)年にカトリックのシャルトル聖パウロ修道女会を設立母体として創立。校名に冠している白百合の花は聖母マリアのシンボル。「キリスト教の精神に根ざした価値観を養い、神と人の前に誠実に歩み、愛の心をもって社会に奉仕できる女性の教育」が教育目的。勉強だけではなく部活動も委員会活動も行事にも力一杯取り組みながら、この目的達成を目指すのが白百合学園の教育方針である。校訓である「従順・勤勉・愛徳」の精神をあらゆる場で実践する。
多くの文教施設に囲まれ、緑豊かな靖国の森と隣接し、九段の閑静な住宅街に厳粛で落ち着いた風情が漂う。聖堂、講堂、図書室、体育館など施設・設備は充実しており、校内は整然とした美しさを保つ。併設の大学はあるが、純然たる進学校としてのカリキュラム編成。当然学ぶべき基礎教養を身につけることが、結果として進学実績を高めている。高2から大幅な選択制に。難関大学への現役合格率は高い。理系志向も強い。
一日は朝礼での祈りに始まる。社会奉仕も行う小百合会、ボランティア委員会などの活動は盛ん。クリスマスの時期に1日かけて、全校生徒が校内・校外にわかれ、奉仕活動を行う。週5日制だが、土曜日は行事などにあてられることもある。学園記念日ミサ・合唱祭、高原学校、球技スポーツ大会、学園祭、クリスマスミサなど行事も多種多彩。「修養会」では、心静かな祈りや講話、友人との話し合いなどを通じて、人生の根本問題を深く考え、自分で自分の心を育てる喜びの体験をしている。