今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
白百合学園中学校
2023年05月掲載
2023年 白百合学園中学校入試問題より
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2013年に国際連合食糧(りょう)農業機関が「食用昆(こん)虫類:未来の食糧と飼料への展望」という報告書を発表したことで、昆虫は新たな食糧資源として注目を集めています。
(問)下線部について、昆虫食は【図】のSDGsの17のゴールのうちいくつかの目標達成に貢献(こうけん)することが期待されています。右は昆虫食で期待されるコオロギについて説明した文章です。これを参考にすると、昆虫食はSDGsの17のゴールのどれにつながると言えると思いますか。1〜17の番号から1つ選び、あなたがそう考えた理由を説明しなさい。
コオロギは、少ない資金で養殖(しょく)事業を始められるため、発展途(と)上国での養殖が増えている。また、多くの牧草と水が必要な牛の飼育に比べ少ない飼料と水で多くのタンパク質を得られるため、二酸化炭素の排(はい)出量が約1000分の1になるとの試算もある。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この白百合学園中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
例1 番号 2
理由 牛を飼育するときよりも少ない飼料と水で多くのタンパク質を得られるため、たくさんの人に食料として提供できるから。
例2 番号 13
理由 牛を飼育するときよりも二酸化炭素の排出量が減るから。
例3 番号 15
理由 牛の飼育に比べ、コオロギは少ない飼料と水で育てることができるので、飼料や水を確保するために自然を破壊しないで済むから。
解説
昆虫食で期待されるコオロギについて説明した文章を参考に、昆虫食とSDGsのゴールのつながりに着目していきます。
例えば、「コオロギは少ない資金で養殖を始められるため、発展途上国での養殖が増えている」ということは、資金をたくさん用意しなくてもコオロギの養殖を始めて収入が得られるようになるので、SDGsのゴールのうちの【1貧困をなくそう】につながっていると考えることができます。また、「牛の飼育に比べ少ない飼料と水で多くのタンパク質を得られる」ということは、たくさんの人に食料として提供できることになるので、【2飢餓をゼロに】につながっていると考えることができます。飼料や水を確保するために、森林を切り開いて農地を作ったり、水を引くために工事をしたりして、周辺の自然を破壊する可能性も低いため、【15陸の豊かさも守ろう】にもつながっていると考えることもできます。さらに、「二酸化炭素の排出量が約1000分の1になるとの試算もある」ことから、【13気候変動に具体的な対策を】にもつながることが期待されます。
このように、問題に示された文章をもとに、SDGsのゴールとのつながりを様々な視点で考えていきます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
昆虫食で期待されるコオロギについての文章を参考に、昆虫食とSDGsの17のゴールとのつながりを考える問題です。
子どもたちは、コオロギについての説明を読んで、理科で学んだ視点とともに、社会科で学んだ視点なども使いながら、さまざまなゴールとのつながりを考えることでしょう。また、考えを進めていく中で、例えば、コオロギは牛に比べて少ない飼料と水で育てることができるということは、SDGsの17のゴールのうちの【2飢餓をゼロに】することにつながり、【2飢餓をゼロに】することは、【3すべての人に健康と福祉を】につながるな……というように、ゴール同士のつながりにも目が向くかもしれません。さらに、私達のまわりで起こっている問題、地球規模で起こっている問題の多くは、1つの科目の考え方だけでは解決できない複雑なものであったり、問題同士が複雑に関係し合ったりしていることに気づくきっかけにもなるでしょう。
この問題に取り組むことによって、子どもたちは多角的な視点から物事をとらえていくことや、情報をもとに筋道を立てていくことで、物事どうしのつながりを考えていくことを体験できるのです。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。