シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

大妻多摩中学校

2023年05月掲載

大妻多摩中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.おもしろそう!という好奇心で行動できる生徒が頼もしい

インタビュー3/3

生徒の意見を取り入れながらICTを活用した授業の充実を図る

では、授業についてお話しいただけますか。

小笠原先生 今年度は中2の授業を担当していますが、生徒はこちらが蒔く興味のタネをよく受け取ってくれます。例えば「国語にはこういう楽しさがあるんだよ」と言うと、それを受け取って、自分の中に蒔いていることがわかるので、我々教員も一丸となって、いかに興味のタネを蒔くか、ということを意識して授業を行っています。お互いに気持ちを理解しているせいか、生徒たちのタネを受け取ろうという意識は、ここ数年でさらに加速していると思います。

授業でいえば、最近、現代短歌が熱いブームになっているので、今人気の歌人さんの形式をマネさせていただいて、クラス全員でお題を作り、それをみんなで交換して、返答する形で短歌を作る、という授業を行っています。そこでの興味関心を、授業内だけでなく、授業からさらに発展した場所につなげていくことができればいいなと思っています。

小玉先生 国語は文章が多いので、電子黒板に映した時に文字が小さくなってしまうんですよね。そういうところにも工夫しながら行っています。

小笠原先生 いろいろ試してみて、生徒と対話を重ねて、「これはわかりやすいです」とか、「こういうふうに送ってもらえると助かります」とか。そういう意見を国語科だけで取り入れるのではなく学年でも情報共有して、ICTとの共存を図っています。

大妻多摩中学校 自習室

大妻多摩中学校 自習室

長期休み期間中にゼミ形式で講座を実施

小笠原先生 授業の枠を超えて「小説を書く講座」や「ジブリ作品を読解する講座」などを、長期休み期間中にゼミのような形で行っています。

任意参加ですか?

小笠原先生 そうです。たくさんの生徒が参加してくれます。おもしろそう。みんなで参加してみようよ、というようなことができる生徒たちなので、ありがたいです。少しずつそういう雰囲気づくりをしてきたので、それがうまく生徒にも伝わっているのかなと思います。

講座で作った作品をコンテストに応募することもあります。その場合、「みんなでコンテストに応募しようよ」と謳って募集をすることもあります。作品をホームページで公開させていただいたこともあります。

最近、小説でもショートショートというジャンルが出てきまして、それも究極の短いバージョン「54字の物語」という企画があるんですね。54字の原稿用紙の中でストーリーを考えます。それをみんなで作って、お互いに読み合って、お互いに感想を書き合います。ほめ限定なのですが、「おっ、いいね」という作品が出てきます。結構たくさん作品を出してくれるので、ホームページにアップして、他の生徒にも見てもらっています。

渡辺先生 珍しいところでは「怪談」もあります。実話怪談会を去年、初めてやりました。怪談師という職業があるそうで、夏休みにその方に来て語っていただきました。

国語科主任/渡辺 登紀子先生

国語科主任/渡辺 登紀子先生

他教科でも生徒が興味をもつ企画を実施

小笠原先生 理科など他教科でも、授業をさらに発展させています。例えば、本校には梅の木がたくさんあります。実がなる時期に収穫をして、いろいろな種類の砂糖で漬けてみる、ということをしています。漬ける前に梅の実を冷凍したかどうかも明記して職員室の前に置いておくと、変化に気づくことができます。生徒は立ち止まってジーッと見ています。

玄関の入口には本校のキャンパスに咲いている草花を、理科教員が週替わりくらいで、ここにこんな花が生息しているという掲示をしてくれます。そういうちょっとした興味関心をいかに投げかけてあげられるか。そういうことを教員が意識しているというか、楽しんで取り組んでいます。

生徒が主催するイベントも少なくない

小笠原先生 「ジェンダー」など、教員も生徒も興味のあるテーマについては、生徒が主体となって外部の講師をお呼びして、講演会をセッティングすることもあります。昨年度も「チベット講演会」など、生徒主催の企画がたくさんありました。

渡辺先生 学校説明会も生徒がやってくれます。

小笠原先生 駐日大使も結構いらしていますよね。そういう外部の方ともアクションを取れる行動力のある教員がいますので、駐日大使に来ていただいての講演会は少なくありません。

ベテランの先生や管理職の先生が、柔軟なのでしょうね。

小笠原先生 私も赴任した年から、やりたいことをやらせていただきました。そういう環境なので本当にありがたいです。

まさに教育理念の実践ですね。

小笠原先生 やりたいことをやらせていただける環境というのは、我々にとっても生徒にとっても、良い環境であると思います。中には生徒が関心を示さない企画もあるのですが、まずやってみるということができる環境。それくらいいろいろな企画を提案させてもらっています。

大妻多摩中学校 図書室

大妻多摩中学校 図書室

女子校には卒業後にも生かされる経験が多々ある

先生方が感じている貴校の特徴や雰囲気を教えてください。

渡辺先生 入学したばかりの頃は、どの子も大切に育てられてきたんだな、という、まだまだ他人を頼ったり、踏み出せなかったりする生徒が多いのですが、高校生になるとリーダーシップを発揮して、どんどん自分のやりたいことを企画して実行していくようになります。

先日、これから社会人になる卒業生が来ていたのですが、「大妻多摩で育ったから、私は特にリーダーになることはなかったけれど、こういうふうにすればみんなが一つになれるという姿を学んでいたから、(大学で)合唱部のリーダーになってしまっても問題なくできた」というようなことを言っていました。女子校なので、長、副ともに女子がやることになります。そこが女子校の良いところだと思います。卒業後にも生かされる経験が多々あるのだろうなと思います。

図書館には本を開いてもらう仕掛けがたくさん

国語科と図書館はどのようにかかわっていますか。

渡辺先生 中2、中3は毎年POP作りに取り組みます。昨年度は中1もやりました。学年でビブリオバトルを行う時には、国語科がお手伝いしています。

渡辺先生は司書教諭でもありますが、生徒さんと図書館とのかかわりをどのように感じていますか。

渡辺先生 読書指導も難しくなっていまして、昔のように図書館の中をふらふら歩いて、1時間も2時間も歩ける生徒は少なくなっています。(手に取りたい本は)検索して、その本に向かって一直線。その場所になければ人に聞く、という傾向があります。

本校の図書館には約4万冊の本があります。こちらとしては、なんとかして本を手に取って開いてもらいたいという思いから、さまざまな仕掛けを行っています。例えば、本の説明文を書いてもらうとか、おもしろいページを教えるとか。しおりをはさんでおくとか。読みやすさから、総ルビの角川つばさ文庫なども積極的に入れています。

大妻多摩中学校 図書室

大妻多摩中学校 図書室

図書館をぶらぶらと歩いてみよう

最後に、受験生とその保護者に向けて、メッセージをお願いします。

渡辺先生 私は小さい時から絵本をたくさん読んできました。その積み重ねにより、本そのものが好きですし、いろいろな偶然が重なって今、この職に就くことができています。

図書館には建前として全分野の本が揃っています。この世のすべての学問に番号がついて分類されていますので、すべての知が入っている場所とも言えます。そこをふわふわと歩いて偶然手に取った本は、自分が潜在的に興味を持っている本かもしれません。誰もが言語化できないものを抱えていると思います。そういう曖昧なものを抱えながら歩くことも図書館の楽しみ方だと思います。

世の中にはいろいろな情報があふれています。中でも目から入る視覚情報が優位だと思いますが、言葉は目から入る情報だけではありません。小学校でもすでに音読はたくさんやっていらっしゃると思いますが、小学校時代だからこそ、日本語のリズムが体に染みつくような学習を大切に、たくさんしていただくと、その後の学習に生きると思います。

文章との出会いが国語の魅力。楽しもう!

小笠原先生 今回の問題のテーマである「学びは役に立つだけではないよ」というメッセージとも関連すると思いますが、「好き」と「興味」を大切にしてほしいです。若者の間の流れとして、好きなこと自体が自分のアイデンティティであるような、最も代表的な言葉でいうと「推し」に象徴される、「好き」が強さになる時代なのかなと思いますので、いろいろなことに興味関心をもって、それをさらに深めていけるような子にぜひ入ってきてもらい、一緒に学びたいと思っています。

私は小さい時から国語に魅せられてきました。今の子どもたちと時代は違いますが、いろいろな文章との出会いが国語のおもしろさです。普段、自分では手に取らないような文章とも半強制的に出会います。その時はあまりおもしろさを感じなくても、振り返ると自分の中に残っている文章や言葉がいくつもあって、いろいろな文章との出会いが自分にとってかけがえのないものになっている実感があります。ですから、受験生のために文章を選ぶ作業はとても楽しいですし、力が入ります。

私はセンター試験の国語の問題を解くことが好きでした。入試ですから、解けた、解けなかった、ということは当然ありますが、良い文章と出会ったという実感は格別です。受験勉強を通して、入試問題の文章を読むことは楽しい、と思ってもらえると嬉しいです。本校を受験してくださるみなさんにも、そういう実感を得てほしいと思っています。

大妻多摩中学校 図書室

大妻多摩中学校 図書室

インタビュー3/3

大妻多摩中学校
大妻多摩中学校国際化と女性の社会進出が求められる時代を背景に、大妻多摩は「わたしの力を、未来のために」をスローガンとして、「社会と世界に貢献できる女性の育成」を目指している。「世界」を視野に入れた活躍を目指すべく、多彩なプログラムで構成された「英語・国際教育」を実施。
5ラウンドシステムを導入した習熟度別の英語教育から始まり、中学2年生必修でのオーストラリア研修やグローバルインタラクションチャレンジ、約50名が参加可能なターム留学制度、そして海外大学進学説明会など、6年間を系統立てて準備された国際プログラムを実施している。
また、「科学は世界の共通語」という考えのもと、理数教育にも力を入れ、大妻多摩独自の授業である「数学探究」や、立地環境を存分に活かした「理科教育」は生徒に人気の授業だ。
中学生を対象に実施している「理系を知るガイダンス」は東京農工大学と協力して実施しており、理系への好奇心をかき立てている。
2021年度には東京薬科大学と高大連携協定を締結し、理数教育のさらなる発展が期待できる。2023年度には成蹊大学とも高大連携協定を締結。さまざまな交流や連携事業を推進していく予定だ。
大妻多摩のキャンパスは駅徒歩7分に立地している。東京都にありながら自然豊かで広大なキャンパス、5つの理科実験室と3つのCALL教室、森の図書館をイメージした約200席の自習室をもつ図書館、人工芝の大きなグラウンドなど、世界基準で見ても素晴らしい教育環境である。四季を感じることができる広々としたキャンパスは、生徒の心を豊かに育んでいる。
キャンパスには体育館が3つ・グラウンドが3つ・照明付きのテニスコートが6面あり、運動をするにも恵まれた環境で、バトン部・ラクロス部・バレーボール部・バスケットボール部・テニス部などが活発に活動している。
併設大学への推薦制度はあるが、多数の生徒が他大学へ進学している。3割強が理系に進学し、ここ数年は医学部への進学者が増加している。早稲田・慶應・上智など難関大学への進学者も多い。